食べ物が飲み込みにくい原因とは?食道の病気と胃カメラ検査で分かること
「食事中に食べ物がのどの奥で引っかかる感じがする」——健診後の再診察でそう話される方が、当院にも月に何人かいらっしゃいます。ご家族に勧められて来院されるケースも少なくありません。飲み込みにくさは一時的な体調変化のこともあれば、食道の病気が隠れている場合もあります。この記事では、飲み込みにくい症状の原因と、考えられる食道の病気、そして胃カメラ検査で何が分かるのかを整理しました。
この記事で分かること
- 食べ物が飲み込みにくくなる原因と、食道で何が起きているのか
- 逆流性食道炎・食道がん・食道アカラシア・好酸球性食道炎の特徴
- 胃カメラ検査で食道のどこまで分かるのか
- 受診のタイミングと、当院の検査体制
動画で見る|内視鏡医が胃カメラ検査に臨む現場
当院の内視鏡医が実際の胃カメラ検査に臨む様子を記録した動画です。検査の流れや院内の雰囲気を知りたい方はぜひご覧ください。
飲み込みにくさはなぜ起こるのか——原因を3つに分けて考える
食道の通り道が物理的に狭くなっている場合
食道は約25〜30cmの管状の臓器で、口から入った食べ物を胃へ送り届ける役割を担っています。この通り道が腫瘍や炎症で狭くなると、食べ物が引っかかるような感覚が生じます。食道がんは代表的な原因のひとつですが、逆流性食道炎による慢性的な炎症が瘢痕化して食道を狭める「食道狭窄」もあります。好酸球性食道炎というアレルギーが関わる炎症でも、食道壁が硬くなって飲み込みにくさが出ることがあります。
食道の筋肉の動きに問題がある場合
食道は蠕動運動(ぜんどううんどう)という筋肉の波打つ動きで食べ物を胃へ送ります。この動きがうまく働かないと、食べ物が食道内にとどまりやすくなります。食道アカラシアでは、食道と胃のつなぎ目にある筋肉(下部食道括約筋)が適切にゆるまず、食べ物が胃に入りにくくなります。糖尿病や膠原病など全身の病気が食道の運動機能に影響するケースもあります。
のど周辺の問題や加齢による変化
飲み込みにくさは食道だけが原因とは限りません。のどの筋力が加齢で落ちると、飲み込む力そのものが弱まります。甲状腺の腫大やのどの腫瘍がのどを圧迫する場合もあり、耳鼻咽喉科領域の病気が隠れていることも考えられます。「食べ物がのどで止まる感じ」と「食べ物が胸のあたりで止まる感じ」では、原因が異なる可能性があるため、どの位置でつかえるかを医師に伝えると診断の手がかりになります。
飲み込みにくさを引き起こす食道の病気
逆流性食道炎と食道狭窄
胃酸が食道に繰り返し逆流すると、食道粘膜に炎症やびらんが生じます。これが逆流性食道炎です。炎症が長引くと粘膜が瘢痕化して食道が狭くなり、「食べ物が通りにくい」という症状につながるケースがあります。初期には胸焼けや呑酸(酸っぱい液がこみ上げる)が主な症状ですが、慢性化すると飲み込みにくさが加わることもあるため、胸焼けの段階で治療を始めることが再発予防に大切です。
食道がん
食道がんは、食道の粘膜に発生する悪性腫瘍です。初期にはほとんど自覚症状がなく、進行すると食べ物が飲み込みにくい・胸や背中の痛み・声のかすれといった症状が現れます。日本では喫煙と飲酒が主なリスク因子とされ、お酒を飲むと顔が赤くなりやすい方(アセトアルデヒド分解酵素の活性が低い方)はリスクがより高いとされています。早期であれば内視鏡で治療できる場合もあるため、定期的な胃カメラ検査が早期発見のカギになります。食道がんについて詳しくは当院の食道がん解説ページをご確認ください。
食道アカラシア
食道アカラシアは、食道と胃の境目にある括約筋がうまくゆるまなくなる病気です。食べ物が胃に落ちにくくなるため、食事中に胸のあたりで「詰まる」感じがします。嘔吐(食道に残った食べ物が逆流する)や体重減少を伴うこともあります。比較的まれな疾患ですが、30〜50歳代の方に発症しやすく、「ここ数か月、食事に時間がかかるようになった」という訴えがきっかけで見つかることが少なくありません。
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎は、食物や空気中のアレルゲンに対する免疫反応で食道粘膜に好酸球(白血球の一種)が集まり、慢性的な炎症を引き起こす病気です。食べ物のつかえ感や飲み込みにくさが特徴的な症状で、胃カメラで食道粘膜に白い斑点や縦方向のすじ、リング状の所見が確認されることがあります。国際的な診断合意では、食道生検で15個/高倍率視野(HPF)以上の好酸球浸潤が認められることが診断基準のひとつとされています。近年は認知度の向上に伴い、指摘される方が増えています。
胃カメラ検査で食道のどこまで分かるか
粘膜の状態を直接観察できる
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、口または鼻から細いカメラを入れ、食道・胃・十二指腸の粘膜をリアルタイムで映し出す検査です。食道粘膜のびらん・発赤・腫瘍・狭窄・色調の変化などを直接確認でき、食道裂孔ヘルニアの有無もあわせてチェックします。疑わしい部位があればその場で組織を採取(生検)し、病理検査で確定診断につなげられるのが胃カメラの大きな強みです。
当院の検査体制と鎮静剤の使用
当院(野々市中央院)では、鎮静剤を使ってうとうとしている間に検査を進める方法を標準で採用しています。検査時間は10〜15分程度です。鎮静剤を使用した場合は院内のリカバリールームで30分〜1時間ほどお休みいただいてからの帰宅となります。鎮静剤の影響が残るため、検査当日は車の運転を控えてください。ご家族の送迎が難しい場合はタクシーの利用もご案内しています。女性医師による検査にも対応していますので、遠慮なくお申し付けください。(ちなみに、検査結果は当日その場でお伝えし、組織検査を行った場合は2週間ほどで結果が出ます。)
飲み込みにくさは「警戒すべき症状」——早めの受診が大切です
嚥下障害は消化器領域の警戒症状のひとつです
食べ物が飲み込みにくい状態(嚥下障害)は、国際的な診療ガイドラインで「alarm symptom(警戒症状)」に位置づけられており、食道がんなどの重大な病気を否定するために速やかに内視鏡検査が推奨されています。「たまにつかえる程度だから」と放置した結果、病気の発見が遅れるケースも報告されています。飲み込みにくさが繰り返し起こる場合や、日を追うごとに悪化する場合は、早めに消化器内科を受診してください。
特に急いで受診すべき5つの組み合わせ
飲み込みにくさに加えて、体重が短期間で減少した・食事量が明らかに減った・声がかすれるようになった・胸や背中に痛みがある・食べ物を吐き戻すことがある——これらのうち一つでも当てはまる場合は、できるだけ早く消化器内科を受診してください。とくに体重減少と飲み込みにくさの組み合わせは、食道がんなど悪性疾患の可能性を念頭に置く必要があります。
家族に飲み込みにくさを訴える方がいるときに知っておきたいこと
ご家族、とくにご高齢の方が「最近、食事に時間がかかるようになった」と話していたら、加齢による嚥下機能の低下だけでなく、食道の病気が隠れている場合もあります。食事中にむせる回数が増えた、食べる量が減って体重が落ちた、好きだった固いものを避けるようになった——こうした変化が見られたら、一度消化器内科での相談をご検討ください。胃カメラ検査は鎮静剤を使えばご本人の負担も小さく済みます。野々市市・白山市・能美市など近隣の方は、当院の駐車場(120台分)をご利用いただけますので、ご家族の付き添いでの来院もしやすい環境です。
食道の病気をさらに詳しく知りたい方へ
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▶ 食道がん — 金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院
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金沢消化器内科・内視鏡クリニック 金沢駅前院でも受診いただけます
金沢駅から徒歩5分の金沢駅前院でも、同等の内視鏡機器を用いた胃カメラ検査を受けていただけます。お仕事帰りや出張の合間に受診したい方はこちらもご利用ください。
よくある質問
Q. 飲み込みにくさがあるときは何科を受診すればよいですか?
A. まず消化器内科の受診をお勧めします。胃カメラ検査で食道の粘膜を直接観察し、炎症・腫瘍・狭窄の有無を確認できます。のど周辺に原因がある可能性がある場合は、耳鼻咽喉科との連携も検討します。
Q. 胃カメラ検査は苦しくないですか?
A. 当院では鎮静剤を使って、うとうとしている間に検査を進めます。「気づいたら終わっていた」とおっしゃる方がほとんどです。鎮静剤なしの場合も経鼻内視鏡を選べば嘔吐反射を軽減できます。
Q. 食道アカラシアは胃カメラで分かりますか?
A. 胃カメラで食道内に食べ物や液体が残留している所見が確認できる場合があり、食道アカラシアを疑う手がかりになります。確定診断には食道造影検査や食道内圧検査が必要になることがあるため、疑いがある場合は精密検査が可能な施設へご紹介します。
Q. 好酸球性食道炎はどうやって診断されますか?
A. 胃カメラで食道粘膜の特徴的な所見(白い斑点・縦走溝・リング状変化)を確認し、組織を採取して病理検査で好酸球の浸潤を確認します。国際的な診断合意では、15個/高倍率視野以上の好酸球浸潤が診断基準のひとつとされています。
Q. 検査前日の食事制限はありますか?
A. 前日21時までに夕食を済ませ、当日の朝は絶食をお願いしています。水やお茶は検査2時間前まで飲んで構いません。脂っこいものや食物繊維の多いものは前日の夕食では控えるのがスムーズです。
Q. 家族の付き添いは必要ですか?
A. 鎮静剤を使用する場合は検査当日の車の運転ができないため、ご家族の送迎をお願いしています。当院には120台分の駐車場がありますので、付き添いの方もゆとりを持ってお越しいただけます。送迎が難しい場合はタクシーの利用もご案内しています。
Q. 飲み込みにくさは加齢のせいだと思って放置しても大丈夫ですか?
A. 加齢による嚥下機能の低下は確かにありますが、飲み込みにくさは消化器領域では警戒症状に位置づけられています。食道がんや食道アカラシアなど治療が必要な病気が隠れている場合もあるため、繰り返す飲み込みにくさや体重減少を伴う場合は、速やかに検査を受けてください。
まとめ
食べ物が飲み込みにくい原因は、食道の物理的な狭窄、筋肉の運動障害、のど周辺の問題の3つに大きく分かれます。逆流性食道炎が慢性化して食道が狭くなるケース、食道がん、食道アカラシア、好酸球性食道炎など、原因となる病気はさまざまですが、いずれも胃カメラ検査で食道粘膜を直接観察することが診断の第一歩です。
飲み込みにくさは消化器領域の警戒症状のひとつです。繰り返す場合や、体重減少・声のかすれなどの症状が加わった場合は、「もう少し様子を見よう」と先送りせず、消化器内科にご相談ください。
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参考文献
- 金沢消化器内科・内視鏡クリニック「食道の働きと病気を理解 健康管理に役立てる」https://naishikyo.or.jp/esophagus/esophagus/
- 日本消化器病学会 編.「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版)」南江堂, 2021.
- 厚生労働省「098 好酸球性消化管疾患(指定難病98)」https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/000857634.pdf
- Gyawali CP, Yadlapati R, Fass R, et al. "Updates to the modern diagnosis of GERD: Lyon consensus 2.0." Gut, 73(2), 361-371, 2024. DOI: 10.1136/gutjnl-2023-330616
- Levine MS, Rubesin SE. "Diseases of the esophagus: diagnosis with esophagography." Radiology, 237(2), 414-427, 2005. DOI: 10.1148/radiol.2372050199
当院で相談する目安
食べ物が飲み込みにくいと感じる状態が繰り返し起こる方、健診で食道の異常を指摘された方、胸焼けやのどの違和感が繰り返される方は、一度消化器内科での検査をご検討ください。当院は野々市市にあり、白山市・能美市・金沢市からもアクセスしやすい立地です。鎮静剤を使った苦痛の少ない胃カメラ検査に対応しており、女性医師による検査も承っています。土曜日の内視鏡検査や早朝(8〜9時)枠もありますので、平日のお仕事が忙しい方もご利用いただけます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。






