虚血性腸炎はCTでわかる?突然の腹痛・血便の原因と検査の流れ
「夜中に急にお腹が痛くなって、トイレに行ったら便に血が混じっていた」──そんなご相談を、野々市市や白山市にお住まいの患者さんやご家族からいただくことがあります。突然の腹痛と血便が重なると、ご本人はもちろん、そばにいるご家族も不安になるものです。この記事では、こうした症状の代表的な原因である虚血性腸炎について、CT検査でどこまでわかるのか、確定診断に必要な検査は何かを順を追ってお伝えします。
この記事のポイント
- 虚血性腸炎は大腸の血流が一時的に低下して起こる腸炎で、突然の腹痛→下痢→血便が典型的な経過です
- CT検査では腸管壁の肥厚や周囲の脂肪織の変化をとらえることで、虚血性腸炎を強く疑う根拠が得られます
- 確定診断には大腸カメラ(大腸内視鏡検査)による粘膜の直接観察が有用です
- 高齢の方や便秘がちな方はリスクが高く、日頃の排便コントロールが再発予防につながります
- 激しい腹痛と血便が続く場合は、自己判断で様子を見ず早めに消化器内科を受診してください
虚血性腸炎とは──大腸の血流低下で起こる急性の炎症
なぜ腸の血流が悪くなるのか
虚血性腸炎(虚血性大腸炎)は、大腸に血液を送る動脈の血流が一時的に低下し、腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる病気です。血管そのものが詰まるというよりも、動脈硬化によって血管の内腔が狭くなっている状態に、便秘で強くいきんだときの腹圧上昇や脱水が重なって血流が落ちるケースが多いと考えられています。
好発部位は下行結腸からS状結腸にかけての左側結腸です。この領域は解剖学的に血流の分岐が少なく、虚血の影響を受けやすい特徴があります。
3つの典型症状──腹痛・下痢・血便
多くの場合、最初に突然の腹痛(左下腹部に集中しやすい)が起こり、続いて下痢、そして鮮血〜暗赤色の血便が現れます。痛みは意識が遠のくほど強くなることもあり、便器が真っ赤に染まる出血量に驚いて救急外来を受診される方も少なくありません。ただし、多くは一過性の血流障害であり、適切に対処すれば1〜2週間で回復に向かうケースが大半です。輸血が必要になるほどの貧血に至ることは比較的まれとされています。
リスクが高い方の特徴
高血圧、糖尿病、脂質異常症といった動脈硬化のリスク因子を持つ60代以上の方に多い病気ですが、30〜40代でも慢性的な便秘がある方に発症した報告があります。ご家族に「お母さん最近便秘がひどいな」と感じることがあれば、腸の血流トラブルも頭の隅に置いておくとよいかもしれません。
CT検査で虚血性腸炎はどこまでわかるのか
CTで確認できる所見──壁肥厚と周囲の変化
腹部CT検査は、急な腹痛で受診した際にまず行われることの多い画像検査です。虚血性腸炎の場合、CTでは主に以下の所見がとらえられます。
まず、病変部位の腸管壁が正常よりも厚くなる「壁肥厚」です。虚血性腸炎では高度な壁肥厚を示すことがあり、報告によっては15mm程度に及ぶ場合もあるとされています。加えて、腸管の周囲にある脂肪織の濃度が上がる(脂肪織濃度上昇)変化も見られます。この2つが下行結腸〜S状結腸に限局して出ている場合、CTの段階でかなり強く虚血性腸炎を疑うことができます。
CTだけでは確定診断にならない理由
CT所見は「虚血性腸炎らしい」と判断する有力な根拠にはなりますが、それだけで確定診断に至るわけではありません。壁肥厚は感染性腸炎や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)でも起こりうる非特異的な所見だからです。
とはいえ、「突然の激しい腹痛に続く血便」「左側結腸に限局した高度な壁肥厚」「高齢・便秘・動脈硬化リスクあり」という臨床情報とCT所見を合わせると、かなりの確度で絞り込める場合もあります。最終的な確定には、大腸カメラで粘膜の状態を直接観察し、区域性の発赤・浮腫・潰瘍といった特徴的な所見を確認します。
虚血性腸炎が疑われたときの検査の流れ
ステップ1:問診と身体診察
医師はまず、腹痛がいつ・どこから始まったか、便の色や量、既往歴や服用中の薬を確認します。「昨晩トイレで強くいきんだあと急に痛くなった」「左のお腹が特に痛い」といった具体的な情報が、虚血性腸炎を疑う手がかりになります。受診時に便の写真をスマートフォンで撮っておくと、出血の程度を正確に伝えられます。
ステップ2:血液検査で炎症と貧血をチェック
白血球数やCRP(C反応性タンパク)で炎症の程度を評価し、ヘモグロビン値で貧血の有無を確認します。前述のとおり、便器が真っ赤になるほどの出血があっても重度の貧血に至ることはまれですが、高齢の方や基礎疾患がある方では慎重な経過観察が必要です。
ステップ3:腹部CT検査
先ほどお伝えしたとおり、CT検査で腸管壁の肥厚部位と範囲を確認します。当院では院内にCT装置を設置しているため、来院当日に撮影し、速やかに診断に活かすことが可能です。撮影自体は数分〜10分程度で終わりますが、造影剤の使用や装置の設定によって多少前後します。虫垂炎や大腸憩室炎、腸閉塞など、緊急性の高い他の疾患を同時に除外できる点もCTの大きな利点です。
ステップ4:大腸カメラによる確定診断
症状と画像所見から虚血性腸炎が強く疑われる場合、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)で粘膜を直接観察します。虚血性腸炎では、病変が大腸内の一定区域に限られ、その前後は正常粘膜であるという「区域性病変」が特徴です。発赤、浮腫、びらん、縦走潰瘍、粘膜下出血などの所見が確認できれば、ほぼ確定診断に至ります。急性期で出血が続いている段階では、下剤の前処置なしで観察できることもあります。
虚血性腸炎の検査で使われる方法の比較
| 検査方法 | わかること | 特徴 |
|---|---|---|
| 血液検査 | 炎症の程度、貧血の有無、脱水の評価 | すぐに実施可能。全身状態の把握に有用 |
| 腹部CT | 壁肥厚の部位と範囲、周囲脂肪織の変化、他疾患の除外 | 短時間で広範囲を評価。当院では院内で即日撮影に対応 |
| 大腸カメラ | 粘膜の色調変化、潰瘍の形態、区域性病変の確認、生検 | 確定診断に有用。治療方針の決定にも直結 |
| 腹部超音波 | 腸管壁の層構造、壁肥厚の簡易評価 | 被ばくなし。スクリーニングに適する |
虚血性腸炎の治療と再発を防ぐために
軽症なら腸を休める保存的治療が基本
虚血性腸炎の多くは「一過性型」と呼ばれるタイプで、絶食または消化のよい食事で腸管を安静に保ち、点滴で水分・電解質を補給する保存的治療で回復します。症状は24〜48時間程度で落ち着き始め、粘膜の所見も1〜2週間で改善するケースが一般的です。入院が必要になった場合でも、多くは1〜2週間程度で退院に至ります。
ただし、腸管の壊死が疑われる「壊疽型」や、治癒過程で腸が狭くなる「狭窄型」にまれに進行する場合があり、その場合は外科的手術を検討します。腹痛が持続的に悪化する、38度以上の発熱が続く、血便の量が減らないといった場合は、速やかに医療機関を受診してください。
便秘の改善が再発予防のカギ
虚血性腸炎の再発率は5〜10%程度と報告されています。再発を防ぐうえで最も大切なのは、日常的に便秘をコントロールすることです。水分をこまめに摂る、食物繊維をバランスよく取り入れる、適度な運動習慣を持つといった生活習慣の見直しが基本になります。便秘が改善しない場合は、医師と相談しながら内服薬でのコントロールも選択肢に入ります。
高血圧や糖尿病、脂質異常症のある方は、動脈硬化の進行を抑えるために基礎疾患の治療を継続することも大切です。「便秘ぐらい」と軽く考えず、ご家族で気にかけていただけるとよいかもしれません。
参考文献
※本記事テーマに関連する主な参考資料
- 丸山茂雄ほか. 虚血性大腸炎の臨床的検討. 日本消化器病学会雑誌. 2018;115(7):643-650.(J-STAGE)
- 虚血性大腸炎[私の治療](日本医事新報社)
- 出血性腸炎の症状と緊急性について(金沢消化器内科・内視鏡クリニック)
- 急性の腹痛と下痢が起きたときの原因と対処方法とは(金沢消化器内科・内視鏡クリニック)
よくある質問
- Q. 虚血性腸炎のCT検査にはどのくらい時間がかかりますか?
- A. 撮影自体は数分〜10分程度で終わることが一般的です(造影剤の使用有無や装置によって多少前後します)。当院では院内にCT装置があるため、診察当日に撮影し、そのまま結果をご説明できます。
- Q. CT検査だけで虚血性腸炎と確定できますか?
- A. CTは虚血性腸炎を「強く疑う」段階までの検査です。壁肥厚や周囲の炎症所見に加え、症状の経過を合わせるとかなりの確度で絞り込めますが、最終的な確定診断には大腸カメラでの粘膜観察が推奨されます。
- Q. 虚血性腸炎になったら必ず入院が必要ですか?
- A. 軽症であれば外来での経過観察と腸管安静で改善に向かうこともあります。ただし、出血量が多い場合、脱水が強い場合、高齢で基礎疾患がある場合などは入院での治療が望ましいとされています。判断は医師にお任せください。
- Q. 便秘がひどいと虚血性腸炎になりやすいのは本当ですか?
- A. 便秘で強くいきむと腹圧が上がり、大腸の血流が一時的に低下するため、虚血性腸炎のリスク因子のひとつと考えられています。慢性的な便秘がある方は、排便コントロールについて消化器内科にご相談ください。
- Q. 虚血性腸炎は再発しますか?
- A. 再発率は5〜10%程度と報告されています。便秘の改善と基礎疾患(高血圧・糖尿病など)の管理が再発予防の柱です。一度発症した方は、生活習慣の見直しを意識していただくことが大切です。
- Q. 若い人でも虚血性腸炎になることはありますか?
- A. 60代以上に多い病気ですが、便秘が慢性的にある30〜40代の方でも発症した報告があります。年齢にかかわらず、突然の腹痛と血便があった場合は受診を検討してください。
- Q. 大腸カメラ検査は痛みが心配です。鎮静剤は使えますか?
- A. 当院では鎮静剤を使用し、ウトウトした状態で検査を受けていただけます。女性医師による検査にも対応しておりますので、ご不安があればお気軽にご相談ください。鎮静剤使用後は当日の車の運転ができませんので、ご家族の送迎か公共交通機関をご利用ください。
急な腹痛・血便が気になったら、まずは専門医にご相談ください
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