逆流性食道炎の原因と治し方|胃カメラで食道の状態を確認する
健診で「逆流性食道炎の疑い」と指摘されて来院される方が増えています。胸焼けが続くと食事のたびに気が重くなるものです。この記事では、逆流性食道炎の原因と治療法、そして胃カメラ検査でわかることを整理しました。
『油断するな!』胃酸の逆流で食道が変色!?胃カメラで女性内視鏡医が見た真実とは!?
この記事のポイント
- 逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流して粘膜に炎症を起こす病気で、加齢・肥満・食生活が主な原因です
- 胃カメラ検査で炎症の程度を直接確認でき、治療方針の決定に役立ちます
- PPI・P-CABなどの胃酸分泌抑制薬が治療の中心となります
- 食事の時間や姿勢など生活習慣の見直しが再発予防に欠かせません
- 症状が治まっても自己判断で薬を中断せず、医師の指示に従うことが大切です
逆流性食道炎の原因|なぜ胃酸が食道に逆流するのか
下部食道括約筋のゆるみと食道裂孔ヘルニア
胃と食道のつなぎ目には「下部食道括約筋(LES)」と呼ばれる筋肉があります。普段はきつく閉じて胃の内容物が食道へ上がるのを防いでいますが、加齢によって筋力が落ちると閉まりが弱くなり、胃酸が逆流しやすくなります。
横隔膜にある食道裂孔も逆流防止に関わっています。この部分が加齢でゆるむと胃の上部が胸側にせり出す「食道裂孔ヘルニア」を起こし、逆流のリスクがさらに高まります。ただし、食道裂孔ヘルニアがあっても症状が出ない方もおり、程度には個人差があります。
腹圧の上昇と生活習慣
肥満や妊娠、猫背、ベルトやガードルによる腹部の締め付けは、いずれも腹圧を上げる要因です。腹圧が高い状態が続くと、胃が押し上げられて逆流が起こりやすくなります。
食生活も大きく関係します。脂肪分の多い食事は胃酸の分泌を増やし、消化に時間がかかるため、胃に内容物がとどまる時間が長くなります。アルコールは症状を悪化させることがあるため、量や頻度を控えるのが無難です。喫煙も逆流のリスク因子とされます(日本消化器病学会 GERD診療ガイドライン2021)。
内服薬の副作用
心臓病や高血圧、喘息などの治療薬のなかには、食道括約筋をゆるめる作用をもつものがあります。よく使われる処方薬にもこうした性質のものは珍しくありません。薬を飲み始めてから胸焼けや呑酸が出てきた場合は、副作用の可能性を考える必要があります。処方内容の調整や逆流を防ぐ薬の追加で対処できるケースが多いため、お薬手帳を持参のうえ医師にご相談ください。
逆流性食道炎の主な症状
胸焼け・呑酸が代表的なサイン
最も多い訴えは、みぞおちから胸のあたりが焼けるように感じる「胸焼け」です。酸っぱい液体が口のほうまで上がってくる「呑酸(どんさん)」も特徴的な症状で、食後や横になったときに出やすい傾向があります。
このほか、げっぷ、胃もたれ、飲み込みにくさ、のどの違和感、咳、声枯れなど、食道以外の部分に症状が現れることもあります。「慢性的な咳の原因を調べたら逆流性食道炎だった」という方も珍しくありません。
症状がないまま進むケースもある
内視鏡検査で食道に炎症が見つかっても、自覚症状がほとんどない方がいます。逆に、びらんが確認できないのに症状が強い「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」というタイプもあります。症状の有無だけでは炎症の程度を正確に判断できないため、胃カメラで粘膜を直接観察する意味は大きいといえます。
胃カメラ検査でわかること
食道粘膜の炎症を直接確認する
胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査では、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接映し出して観察します。逆流性食道炎の場合、食道粘膜にびらん(ただれ)や発赤がないかを確認し、炎症の広がりを「ロサンゼルス分類」というグレードで評価します。Grade Aが最も軽く、Dが最も重い分類です。
食道裂孔ヘルニアの有無もあわせてチェックできます。疑わしい部位があれば、そのまま組織を少量採取して病理検査に回せるのも胃カメラの利点です。長期の炎症で食道粘膜が胃の粘膜のように変化する「バレット食道」の有無も確認でき、がんのリスク評価につながります。
検査の流れと所要時間
当院では、前日21時までに夕食を済ませ、当日の朝は絶食をお願いしています。水やお茶は検査2時間前まで飲んでかまいません。一般的には「固形物は検査6時間前まで、透明な飲料は2時間前まで」が目安ですので、他院で受ける方はそちらの案内に従ってください。検査当日は喉の麻酔を行い、鎮静剤を使うとうとうとしている間に検査が進みます。
検査自体は10〜15分ほどで終わります。鎮静剤を使用した場合は、検査後にリカバリールームで30分〜1時間ほど休んでから帰宅となります。鎮静剤の影響が残るため、検査当日から翌朝までは車の運転を控えてください。公共交通機関かご家族の送迎をお願いしています。
逆流性食道炎の治療法
薬物療法が治療の中心
治療の基本は、胃酸の分泌を抑える薬です。現在はPPI(プロトンポンプ阻害薬)とP-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)の2種類が主に使われています。P-CABはPPIに比べて効果の発現が速く、食事の影響を受けにくいという特徴があります(Zhou X et al., Scand J Gastroenterol, 2024)。
症状が落ち着いても食道の炎症が完全に治っていないケースは少なくありません。自己判断で服薬をやめると再発しやすいため、医師から指示された期間は飲み続けることが大切です。
症状や状態に応じた薬の組み合わせ
胃酸分泌抑制薬に加え、消化管の動きを改善する薬や粘膜保護薬を併用する場合があります。蠕動運動を活発にする薬は、胃の内容物をスムーズに先へ送ることで逆流そのものを起こりにくくします。逆流が生じたとしても、蠕動運動がしっかり働いていれば胃酸が早く胃に戻るため、炎症の悪化を防げます。
再発を防ぐ生活習慣の見直し
食事のタイミングと内容を変える
まずは夕食の時間を見直してみてください。就寝の3時間前までに食事を終えると、横になったときの逆流が起こりにくくなるとされます(ACG Clinical Guideline 2022; GERD診療ガイドライン2021)。脂っこいもの、甘いもの、香辛料、炭酸飲料は胃酸の分泌を増やしたり括約筋をゆるめたりするため、頻度を減らすのが望ましいです。
食べすぎや早食いも胃に負担をかけます。腹八分目を心がけ、よく噛んでゆっくり食べるだけでも胃の負担は軽くなります。
姿勢と睡眠の工夫
猫背や前かがみの姿勢は腹圧を上げるため、意識して背筋を伸ばす習慣をつけてください。ベルトやガードルで腹部を強く締め付けないことも大切です。
夜間に胸焼けや咳が出る方は、上半身を少し高くして眠ると症状が和らぎます。枕だけ高くすると首に負担がかかるので、バスタオルを背中の下に敷いてゆるやかな傾斜をつけるのがコツです。ちなみに、当院では検査後にそのまま生活習慣の改善についてもご案内しています。後日あらためて来院いただく必要はありません。
逆流性食道炎の主な治療薬の比較
| 薬の種類 | 特徴 | 代表的な薬剤 |
|---|---|---|
| PPI(プロトンポンプ阻害薬) | 長年の実績があり、最も広く使用されている胃酸分泌抑制薬 | オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール |
| P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー) | 効果の発現が速く、食事の影響を受けにくい | ボノプラザン |
| H2ブロッカー | ヒスタミンH2受容体を抑制して胃酸を減らす。市販薬にも同成分あり | ファモチジン |
| 消化管運動機能改善薬 | 蠕動運動を活発にし、逆流を起こりにくくする | モサプリドなど |
| 粘膜保護薬 | 食道粘膜を物理的に保護し、胃酸による刺激を和らげる | アルギン酸ナトリウムなど |
参考文献
※本記事テーマに関連する主な参考資料
- 金沢消化器内科・内視鏡クリニック 金沢駅前院「逆流性食道炎」 https://naishikyo.or.jp/kanazawaekimae-naisikyou/reflux-esophagitis/
- 日本消化器病学会 編.「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版)」南江堂, 2021.
- Gyawali CP, Yadlapati R, Fass R, et al. "Updates to the modern diagnosis of GERD: Lyon consensus 2.0." Gut, 73(2), 361-371, 2024. DOI: 10.1136/gutjnl-2023-330616
- Kinoshita Y, Adachi K, Hongo M, Haruma K. "Systematic review of the epidemiology of gastroesophageal reflux disease in Japan." J Gastroenterol, 46, 1092-1103, 2011. DOI: 10.1007/s00535-011-0429-3
- Zhou X, Duan H, Li Q, Wang Q, Sun X. "Efficacy and safety of potassium-competitive acid inhibitors in the treatment of gastroesophageal reflux: a systematic review and meta-analysis." Scand J Gastroenterol, 59(7), 788-797, 2024. DOI: 10.1080/00365521.2024.2349638
よくある質問
- Q. 逆流性食道炎は自然に治りますか?
- A. 軽度の炎症であれば食生活の改善だけで症状が和らぐことはあります。ただし、炎症が残ったまま放置すると再発しやすく、慢性化するリスクがあるため、一度は医師の診察を受けることをお勧めします。
- Q. 胃カメラ検査は痛いですか?
- A. 鎮静剤を使うと、うとうとしている間に検査が終わります。目が覚めたあとに「もう終わったんですか」と驚かれる方が多いです。鎮静剤なしの場合も、経鼻内視鏡を選べば嘔吐反射を軽減できます。
- Q. 市販の胃薬でも治せますか?
- A. H2ブロッカー配合の市販薬で一時的に症状が和らぐこともあります。ただし、市販薬だけでは炎症が十分に治まらない場合があり、再発を繰り返す方は処方薬による治療が望ましいです。
- Q. 逆流性食道炎の検査費用の目安を教えてください。
- A. 保険適用(3割負担)の胃カメラ検査で、自己負担額はおおむね数千円程度が目安です。組織採取の有無や加算項目で変動しますので、正確な金額は当院の料金表またはお電話でご確認ください。
- Q. 食道がんに進行する可能性はありますか?
- A. 逆流性食道炎が直接がんになるわけではありません。ただし、慢性的な炎症が続くとバレット食道に変化し、そこから食道腺がんが発生するリスクが指摘されています。定期的な内視鏡検査で早期に変化を捉えることが大切です。
- Q. 薬はどのくらいの期間飲み続ける必要がありますか?
- A. 初期治療では通常4〜8週間の服薬が目安です。炎症の程度や再発リスクに応じて維持療法として長期間続ける場合もあります。自己判断で中断せず、医師と相談しながら服薬期間を決めてください。
- Q. 健診で「逆流性食道炎の疑い」と言われました。すぐに受診すべきですか?
- A. 緊急性は高くありませんが、早めに受診して胃カメラ検査を受けることをお勧めします。炎症が軽いうちに治療を始めたほうが短期間で改善しやすく、再発のリスクも下がります。
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