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脂肪肝は代謝の乱れの表れ|MASLD・糖尿病・肥満がつながる理由

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脂肪肝は肝臓だけの問題ではない——MASLD・糖尿病・肥満がつながる仕組みと肝臓専門医の役割

健診で脂肪肝を指摘され、同時に血糖やコレステロール、腎機能の数値にも引っかかった——こうした方が野々市市・白山市周辺から当院に来られるケースは年々増えています。脂肪肝は「肝臓だけの病気」ではなく、糖尿病、肥満、腎臓病と同じ代謝の乱れを根っこに持っています。この記事では、なぜこれらの病気が連鎖するのか、そのメカニズムと最近の治療の考え方を肝臓専門医の立場から整理します。

この記事のポイント

  • 脂肪肝(MASLD)は糖尿病・肥満・慢性腎臓病(CKD)とインスリン抵抗性を介してつながっている
  • AHA(米国心臓協会)が提唱するCKM症候群は、心臓・腎臓・代謝を「ひとつの連続した病態」として捉える考え方で、MASLDはこの連鎖と強く関連する
  • SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、血糖だけでなく肝臓や腎臓にも効果が報告されている
  • 肝臓の状態を入口にして代謝全体を見直す、という視点が重要になっている
  • フィブロスキャンや血液検査で肝臓の脂肪量・線維化を数値で評価できる
野々市中央院での診察風景

脂肪肝・糖尿病・肥満・CKDはなぜ一緒に起きるのか

インスリン抵抗性という共通の土台

脂肪肝(MASLD)、2型糖尿病、肥満、慢性腎臓病(CKD)は、一見すると異なる臓器の病気に見えます。しかし、これらの病気に共通しているのが「インスリン抵抗性」という状態です。インスリンは血糖を下げるホルモンですが、内臓脂肪が増えるとこのホルモンの効きが悪くなります。すると、膵臓はインスリンを過剰に分泌して対応しようとしますが、この負荷が長く続くと血糖コントロールが破綻し、糖尿病に進みます。

同時に、インスリンが効きにくくなった肝臓では脂肪の代謝が滞り、中性脂肪が肝細胞にたまります。これがMASLDです。さらに、高血糖や高インスリン状態は腎臓の血管にも負担をかけ、CKDの進行を早めます。つまり、内臓脂肪の増加→インスリン抵抗性→肝臓・膵臓・腎臓への同時ダメージという流れが、これらの病気を結びつけているのです。

脂肪肝は「代謝の乱れの表れ」として捉え直されている

従来の脂肪肝は、肝臓だけを見て「脂肪がたまっている」と判断するのが主流でした。しかし2023年に国際的な名称がNAFLDからMASLDへ変更された背景には、脂肪肝を代謝異常の一部として位置づけ直す流れがあります。MASLDの診断基準と5つの心代謝リスク因子についてはこちらの記事で詳しく解説していますが、肥満、血糖異常、高血圧、脂質異常のうち1つ以上を伴う脂肪肝がMASLDです。肝臓の異常は、身体全体の代謝バランスが崩れていることを映し出す窓のような役割を持っています。

CKM症候群という考え方——心臓・腎臓・代謝を横断的に見る

AHAが2023年に提唱した枠組み

米国心臓協会(AHA)は2023年に、心血管疾患・腎臓病・代謝異常を「CKM(Cardiovascular-Kidney-Metabolic)症候群」として一体的に捉える概念を発表しました。CKM症候群は、肥満・代謝リスク因子・CKD・無症候性心血管障害・臨床的心血管疾患を連続体として捉える枠組みです。MASLDはこの連鎖と強く関連しており、脂肪肝の存在が代謝全体のリスクを映し出すマーカーとしても注目されています。

この枠組みで重要なのは、脂肪肝を「軽い肝臓の異常」ではなく、CKDや心血管疾患へ進行するリスクの手がかりとして位置づけている点です。健診で脂肪肝を指摘された段階は、代謝全体を見直す好機とも言えます。

日本でもガイドラインの統合が進んでいる

ADA(米国糖尿病学会)の「Standards of Care in Diabetes 2026」では、2型糖尿病でMASLDやMASHを合併する患者に対してGLP-1受容体作動薬の使用が推奨項目に加わりました。また、SGLT2阻害薬はCKD進行の抑制効果に加えて肝臓への好影響も報告されています。日本でも日本肝臓学会の「奈良宣言」(2023年)がALT 30超のかかりつけ医受診を呼びかけたように、肝臓・糖尿病・腎臓の各領域で横断的な管理を重視する方向に舵が切られています。

野々市中央院のフィブロスキャン検査装置

SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬は肝臓にも効くのか

SGLT2阻害薬の肝臓への効果

SGLT2阻害薬はもともと糖尿病の血糖管理に使われる薬ですが、尿から糖を排泄する過程でエネルギーバランスが負に傾き、体重減少と内臓脂肪の減少をもたらします。この間接的な効果を通じて、肝臓の脂肪蓄積やALT値の改善が複数の研究で報告されています。日本ではトホグリフロジンを用いたランダム化比較試験(Takeshita Yら、Diabetes Care 2022)で、48週間の投与によりMASLDの肝線維化指標が改善したとの結果も示されています。加えて、SGLT2阻害薬は腎臓の糸球体への圧力を下げる作用があり、CKDの進行抑制についてはすでにガイドラインでも推奨されています。

GLP-1受容体作動薬とMASH治療の進展

GLP-1受容体作動薬は食欲を抑えて体重を減らす作用が知られていますが、肝臓への直接的な効果についても研究が進んでいます。2024年3月にはレスメチロム(レズディフラ)がMASHに対する初の治療薬としてFDAの承認を受けました。続いて2025年8月にはセマグルチド(ウゴービ)がGLP-1受容体作動薬として初めてMASH(中等度~高度の線維化を伴うもの)に対してFDAの迅速承認を受けています。根拠となった第3相ESSENCE試験では、MASHの消失と線維化の改善が確認されています。

当院(野々市中央院)ではGIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(マンジャロ)による脂肪肝を対象とした肥満外来を行っていますが、処方にあたっては採血、腹部エコー、フィブロスキャンで肝臓と代謝の状態を事前に評価しています。体重だけでなく肝臓の変化を数値で追跡しながら進める点が、美容目的の処方とは異なるところです。

「肝臓の薬」ではなく「代謝全体に効く薬」として理解する

SGLT2阻害薬もGLP-1受容体作動薬も、特定の臓器だけに効く薬ではありません。血糖、体重、血圧、腎機能、肝脂肪——複数の代謝パラメーターに同時に作用するからこそ、臓器別ではなく全身の代謝を視野に入れた管理が合理的です。ただし、これらの薬剤には糖尿病内科や腎臓内科との連携が必要な場面もあります。当院では肝臓内科の外来を軸に、糖尿病や腎臓の管理が必要な方には適切な専門医への紹介・連携を行っています。

健診で脂肪肝に加えて血糖やコレステロール、腎機能の異常を指摘された方は、肝臓を入口に代謝全体を確認できます。

ご予約はLINEでも受け付けています。

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肝臓を「代謝の窓」として使う——フィブロスキャンと血液検査の役割

フィブロスキャンで脂肪量と線維化を数値化する

フィブロスキャンは、体表からプローブを当てるだけで肝臓の脂肪蓄積度(CAP値)と硬さ(kPa値)を数分で測定できる検査です。痛みはなく、腹部エコーと同日に実施できます。脂肪肝の程度を把握するだけでなく、治療介入の前後でCAP値やkPa値を比較すれば、食事・運動・薬物療法の効果を客観的に追跡できます。野々市中央院は石川県内でも限られたフィブロスキャン導入施設の一つで、定期的な経過評価に活用しています。フィブロスキャン検査の詳細はこちらをご覧ください。

FIB-4と血液検査を組み合わせて全体像を描く

血液検査では肝機能(AST・ALT・γ-GTP)に加えて、血糖・HbA1c・脂質プロファイル・腎機能(eGFR・尿アルブミン)まで幅広く確認します。これらの結果を並べると、肝臓・膵臓・腎臓のどこにどの程度の負荷がかかっているかが見えてきます。FIB-4は採血結果から計算する肝線維化の簡易指標で、中間リスク以上の場合にフィブロスキャンなどの精密評価を検討する入口として用いられています。EASLやAASLDのガイドラインでもこの段階的な評価の流れが推奨されています。

「肝臓の検査」が代謝全体の健康チェックになる

脂肪肝の検査を受けにきた方の多くは、結果的に血糖や脂質、腎機能のスクリーニングも同時に行うことになります。つまり、「肝臓が気になるから受診する」という動機が、全身の代謝状態を確認するきっかけになるわけです。この点は、脂肪肝を「肝臓だけの病気」と考えていた時代と大きく異なる部分です。脂肪肝の食事療法(地中海食・果糖制限)についても合わせて確認しておくと、生活習慣の見直しに取り組みやすくなります。

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健診結果票をお持ちの方は受診時にご持参いただくと、検査の優先順位をスムーズに決められます。

専門科の壁を越えて管理するために大切なこと

肝臓専門医が代謝全体を見渡す意味

脂肪肝を診る肝臓専門医は、肝臓の状態を評価するだけではなく、その背景にある肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧の有無も必ず確認します。MASLD自体が代謝異常を背景に定義されている以上、肝臓だけを切り取って診療することは事実上不可能だからです。当院では採血、腹部エコー、フィブロスキャン、必要に応じたCTまでを院内で完結できるため、代謝全体の入口としての評価を一度の受診で行いやすい環境です。

糖尿病内科・腎臓内科との連携が必要な場面

一方で、インスリン導入が必要な糖尿病管理や、eGFRが低下したCKDの精査・透析管理は、それぞれの専門科の領域です。肝臓専門医が全てを自院で完結させるのではなく、「肝臓を入口に代謝全体を評価し、必要な専門科につなぐ」ことが、結果的に患者さんの通院負担を減らし、治療の漏れをなくすことにつながります。健診で複数の異常値が出た方が「どこにまず行けばいいか」と迷う場合、消化器内科・肝臓内科は全体を俯瞰しやすい入口のひとつです。

よくある質問

Q. 脂肪肝と糖尿病を両方抱えていますが、どちらの科に行けばよいですか?
A. 消化器内科・肝臓内科では脂肪肝の評価と併せて血糖や脂質の状態も確認します。インスリン治療が必要な段階であれば糖尿病内科との併診をお勧めしますが、入口としては肝臓を診られる消化器内科が全体を俯瞰しやすい場合があります。
Q. SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は肝臓のために処方してもらえますか?
A. 現時点で日本ではこれらの薬剤が「脂肪肝の治療薬」として保険適用になっているわけではありません。糖尿病や肥満を合併している場合にそれぞれの治療として処方され、結果として肝臓への効果が期待できるという位置づけです。当院のマンジャロ外来(自由診療)では、脂肪肝を合併する肥満に対してGIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチドを処方しています。
Q. CKM症候群のステージはどこで判定してもらえますか?
A. CKM症候群は2023年にAHAが提唱した比較的新しい概念で、日本の保険診療では正式な判定制度はまだ設けられていません。ただし、当院では脂肪肝の評価と合わせて体重、血糖、脂質、血圧、腎機能を一通り確認しますので、CKM症候群の考え方に近い全体像の把握は外来で十分に可能です。
Q. フィブロスキャンは脂肪肝の治療中にも受けられますか?
A. はい。痛みのない検査ですので、治療の効果を確認するために3〜6か月ごとに受けていただくことをお勧めしています。CAP値やkPa値の推移を見ることで、食事・運動・薬物療法の効果を客観的に評価できます。
Q. 健診で脂肪肝以外にも複数の異常が出ましたが、全部の検査を一度にできますか?
A. 当院では採血、腹部エコー、フィブロスキャン、必要に応じたCTまでを院内で実施できます。健診結果票をお持ちいただければ、初診時に優先すべき検査を整理し、一度の受診で多くの評価を進めやすくなります。

まとめ

脂肪肝(MASLD)は「肝臓だけの異常」ではなく、糖尿病、肥満、CKDとインスリン抵抗性という共通の土台でつながった代謝疾患のひとつです。AHAのCKM症候群やADA 2026のガイドラインにも見られるように、これらの病気を臓器別に切り離して対応する時代から、まとめて評価し管理する方向へ世界的に動いています。SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、その流れを薬物療法の面から後押ししています。

健診で脂肪肝と血糖やコレステロール、腎機能の異常を同時に指摘された方にとって、肝臓専門医のいる消化器内科は代謝全体を見渡すための入口になります。結果票を見て「どこから手をつけたらいいか分からない」と感じている方こそ、まずは肝臓の状態を確認するところから始めてみてください。

参考文献

当院で相談する目安

健診で脂肪肝とともに血糖異常・脂質異常・腎機能低下を指摘された方、複数の診療科を回ることに負担を感じている方、MASLDの程度と代謝全体のバランスを一度に確認したい方は、消化器内科・肝臓内科へご相談ください。野々市中央院ではフィブロスキャン・腹部エコー・採血・院内CTに対応しています。女性医師による診察にも対応していますので、希望される方は予約時にお申し出ください。野々市市・白山市・能美市をはじめ近隣からお気軽にお越しください。

文責

中村 文保

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会 理事長)

日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医

公式サイト:胃と腸のことなら金沢消化器内科・内視鏡クリニック

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健診結果票をお持ちの方は受診時にご持参ください。採血・エコー・フィブロスキャンを組み合わせて評価します。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。

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