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便潜血検査が陰性でも安心できない理由|毎年続ける意味を専門医が解説

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便潜血検査が陰性でも安心できない理由|毎年続ける意味を消化器専門医が解説

健康診断の便潜血検査で「陰性」だったとき、「今年も大丈夫だった」とほっとする方がほとんどでしょう。ところが、陰性の結果だけで大腸がんやポリープがないと断定することはできません。便潜血検査にはそもそも見逃しが起こる仕組みがあり、1回の陰性結果を過信するのはリスクを伴います。

この記事のポイント

  • 便潜血検査は1回の陰性で病変を見逃す可能性があり、陰性=異常なしではありません
  • 毎年継続して受けることで、見逃しを年々補い、累積の検出率を高められます
  • 約281万人規模の研究でも、継続受診者に一定の検出が続いたと報告されています
  • 年齢やリスクに応じて、大腸カメラ検査の相談も選択肢になります
中村文保医師が大腸カメラ検査を行っている様子

便潜血検査が「陰性」でも見逃しが起こる仕組み

出血していなければ検出できない

便潜血検査(FIT:免疫法便潜血検査)は、便に混じった微量のヒトヘモグロビンを検出する検査です。大腸にポリープやがんがあっても、採便したタイミングで出血していなければ陰性になります。がんやポリープは常に出血しているとは限らず、出血が持続しない病変もあるため、たまたま出血していない日に便を採れば検査をすり抜けてしまいます。

1回の検査には感度の限界がある

便潜血検査の感度は、検査法やカットオフ値、病変の進み具合によって幅があります。大腸がんに対しては一定の感度がありますが、早期の病変や前がん病変(腺腫性ポリープ)では感度が下がることが知られています。つまり、1回の陰性だけで大腸の異常を否定することはできません。陰性は「今回の便に血液が検出されなかった」という意味であり、「大腸に異常がない」という証明ではないのです。

平坦な病変や小さなポリープはとくに拾いにくい

大腸がんの一部には、隆起せず粘膜に沿って広がる平坦型のタイプがあります。こうした病変は出血が少なく、便潜血検査の感度が低いことが報告されています。小さなポリープも同様で、サイズが小さいほど出血の頻度が低く、検査をすり抜けやすくなります。

当院の内視鏡検査機器

毎年続けることで検出率が上がる──281万人規模の研究から

初回スクリーニングの検出率が最も高い

2026年にGut誌に発表された大規模研究(Ladabaum U et al.)では、スペインの住民ベースの便潜血検査プログラムに参加した約281万人のデータが解析されました。この研究によると、初回のスクリーニングラウンドでは陽性率が5.8%、大腸がん検出率が参加者1,000人あたり2.65と最も高い値を示しました。初めて検査を受ける集団には、それまで一度も検査を受けていない未発見の病変が蓄積しているためです。

継続受診でも一定の検出が続く

同じ研究では、継続的に検査を受けている集団でも、大腸がんの検出率はゼロにはなりませんでした。3回目以降のラウンドでは数値が安定し、初回より低くなるものの、臨床的に意味のある水準で検出が続いたと報告されています。これは、前回の検査で見逃された病変の発見や、前回以降に新たに発生した病変の検出が含まれるためです。研究の結論として「正常な結果が続いても早期に検査を中止する根拠はない」と明記されています。

「去年陰性だったからスキップ」が危険な理由

便潜血検査を1年おき、あるいは数年に1回しか受けていない場合、見逃しのリスクがそのまま蓄積します。毎年受けることで、ある年に見逃された病変を翌年に拾い上げる機会が生まれます。1回ごとの感度が完璧でなくても、繰り返すことで累積の検出率は上がっていきます。国のガイドラインでは便潜血検査の推奨間隔は1〜2年とされており、自治体の検診実務では年1回の案内が出される地域が多くなっています。野々市市・白山市・能美市にお住まいの方は、大腸がん検診の案内が届いたら後回しにせず受診してください。

年齢やリスクで変わる「次にやるべきこと」

40代以降は大腸ポリープの発生率が上がる

大腸ポリープの発生頻度は40代から徐々に増加し、50代以降に大腸がんの罹患率が上昇します。日本消化器病学会の大腸ポリープ診療ガイドラインでも、大腸がんの多くは良性の腺腫性ポリープが数年〜十数年かけてがん化する「腺腫‐がん連関」の過程をたどるとされています。一般的な対策型検診では、40歳以上を対象に便潜血検査が推奨されています。一方で、40代以降でまだ一度も大腸カメラを受けたことがない方のうち、家族歴がある方、症状がある方、生活習慣上のリスクが高い方では、大腸カメラ検査を一度相談する選択肢があります。

家族に大腸がん・ポリープの方がいる場合

血縁者に大腸がんや腺腫性ポリープの既往がある方は、そうでない方と比べて大腸がんのリスクが高いことが知られています。とくに第一度近親者(親・きょうだい・子)に50歳未満で大腸がんが見つかった場合はリスクが上がります。こうした方は便潜血検査の陰性結果だけに頼らず、医師に相談のうえ大腸カメラ検査のスケジュールを立てることをおすすめします。

生活習慣とリスクの関係

大腸がんのリスク因子としては、習慣的な飲酒・喫煙、肥満、赤肉や加工肉の多い食生活、運動不足などが報告されています。これらに該当する方は、便潜血検査を毎年継続するだけでなく、検査結果に関わらず一度は大腸カメラで大腸の状態を直接確認しておくことについて医師と相談してみてください。当院では野々市市周辺にお住まいの方が受診しやすい体制で便潜血陽性後の精密検査や大腸カメラ検査を実施しています。

便潜血検査の結果に関わらず、家族歴やリスク因子がある方は大腸カメラ検査について一度ご相談ください。

ご予約はLINEでも受け付けています。

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便潜血検査と大腸カメラ──どう使い分けるか

便潜血検査の役割はスクリーニング

便潜血検査はあくまで「ふるい分け」の検査です。陽性になった方に精密検査(大腸カメラ)を受けてもらうことで、大腸がんの死亡率を下げる効果が確認されています。自治体の検診として40歳以上を対象に広く実施されているのはこのためです。手軽さとコストの低さが最大の利点で、多くの方が受けやすい検査として定着しています。

大腸カメラは直接確認できる唯一の検査

大腸カメラ検査は、大腸の粘膜を内視鏡で直接観察し、ポリープやがんを見つけるだけでなく、その場で組織を採取したり、ポリープを切除したりできる検査です。便潜血検査では見つけられない小さなポリープや平坦型の病変も発見できるため、大腸がんの予防においては最も確実な手段といえます。陰性の方でもリスク因子がある場合は大腸カメラを検討する価値があります。

年齢やリスクに応じた検査計画の考え方

一般的には、特別なリスクのない方は40歳以降、便潜血検査を毎年継続し、陽性が出た場合はすみやかに大腸カメラを受けるのが基本です。日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは、便潜血検査を経ず最初から大腸内視鏡を行う場合、異常がなければ次の検査は5年後が目安として提案されています。ポリープが見つかって切除した方は、病理結果や個数・サイズによって再検査の間隔が変わります。小さな低異型度の腺腫を1〜2個切除した場合は5年後、それ以上のリスク所見がある場合は3年後、高リスク所見がある場合は1年後というのが一般的な目安です。再検査の時期は担当医と相談して決めてください。

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大腸カメラ検査が初めての方には、事前の診察で検査の流れ・下剤の飲み方・費用について詳しくご説明しています。

便潜血検査の正しい受け方──精度を下げないために

2日分の便を正しく採取する

現在の便潜血検査は2回法(2日分の便を別々に採取する方法)が標準です。1日分しか提出しなかった場合は感度が下がります。2日目の採便を忘れたり面倒に感じたりすることもあるかもしれませんが、2回分きちんと提出することが検出率を保つ基本です。

採便から提出までの保管に注意する

便中のヘモグロビンは高温や時間の経過で分解されやすく、保管条件が悪いと、本来陽性になるはずの検体が陰性になってしまう可能性があります。採便後は冷所で保管し、できるだけ早めに提出してください。厚生労働省の通知でも、採便後の冷蔵保存と速やかな回収が原則とされています。

「去年陰性だったから今年はいいか」をやめる

先述のとおり、便潜血検査は1回ごとの感度に限界があり、毎年繰り返すことで累積の検出力が上がります。1年スキップするだけで、その年に出血を起こした病変を見逃す可能性が生じます。石川県の自治体検診では40歳以上の方に毎年の受診案内が届きますので、届いたら後回しにせず受診してください。

中村文保医師が診察している様子

よくある質問

Q. 便潜血検査が陰性なら大腸がんの心配はないのでしょうか?
A. 陰性であっても大腸がんやポリープがないとは限りません。便潜血検査の感度は病変の種類や進行度で異なり、とくに早期病変や前がん病変では感度が下がります。陰性は「今回の便に血液が検出されなかった」という意味です。
Q. 毎年陰性が続いていれば、もう受けなくてもよいですか?
A. 毎年陰性が続いていても検査をやめる根拠にはなりません。約281万人規模の研究でも、継続受診者に一定頻度で大腸がんが見つかり続けたことが報告されています。毎年続けることが大切です。
Q. 便潜血検査と大腸カメラ、どちらを受ければよいですか?
A. 両方に役割があります。便潜血検査は手軽なスクリーニングとして毎年受けるのが基本です。家族歴がある方、症状がある方、生活習慣リスクが高い方は、便潜血検査に加えて大腸カメラ検査の相談をおすすめします。
Q. 2回法の便潜血検査で1回だけ提出した場合はどうなりますか?
A. 1回分の提出でも検査自体は可能ですが、感度が低下します。2日分の便を正しく採取・提出することで検出率が高まります。
Q. 野々市市の大腸がん検診は何歳から対象ですか?
A. 野々市市の大腸がん検診は40歳以上が対象で、年1回の便潜血検査が実施されています。検診の案内が届いたら毎年欠かさず受診してください。詳細はお住まいの市町の案内をご確認ください。

まとめ

便潜血検査が陰性でも、大腸にポリープやがんが存在している可能性はゼロではありません。1回の検査には見逃しが起こりうる仕組み上の限界があり、だからこそ毎年継続して受けることに意味があります。約281万人の大規模研究でも、検査を続けている人に一定の検出が続くことが示されており、「正常結果が続いたから検査をやめてよい」という判断は推奨されていません。

40歳を超えたら便潜血検査を毎年続けることが基本です。家族歴や症状、生活習慣上のリスクがある方は、医師と相談のうえ大腸カメラ検査を検討してみてください。野々市中央院では鎮静剤を使った大腸カメラ検査、院内下剤、女性医師対応に対応しています。

参考文献

当院で相談する目安

以下のような方は、消化器内科への相談をおすすめします。当院では野々市市・白山市・能美市など近隣にお住まいの方が受診しやすい体制で、大腸カメラ検査(鎮静剤対応・院内下剤対応・女性医師対応)を実施しています。

  • 40歳以上で一度も大腸カメラ検査を受けたことがなく、家族歴や症状がある
  • 便潜血検査は毎年陰性だが、大腸がん検診を正しく続けられているか不安がある
  • 便潜血が陽性と指摘されたが、まだ精密検査を受けていない
  • 大腸がん検診を数年スキップしてしまっている

文責

中村 文保

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会 理事長)

日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医

公式サイト:胃と腸のことなら金沢消化器内科・内視鏡クリニック

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鎮静剤を使用する場合、検査当日はお車の運転ができません。送迎や公共交通機関をご利用ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。

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