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MASLD(脂肪肝)の食事療法|地中海食と果糖制限の重要性

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脂肪肝を改善する食事——糖質制限・地中海食・果糖制限、どれが効くかを肝臓専門医が解説

「脂肪肝には糖質制限がいい」「地中海食が推奨されている」「低FODMAP食も脂肪肝に効く」——ネット上にはさまざまな食事法の情報があふれています。どれを試せばいいのか迷ったまま、結局なにも始められていない方は多いのではないでしょうか。

結論から言えば、脂肪肝の食事改善でまず取り組むべきは「果糖と精製糖質の摂取を減らし、食事全体のバランスを地中海食の考え方に近づけること」です。極端な糖質カットや特定の食事法への過度な期待より、続けられるかたちで脂肪肝の原因に直結する栄養素を調整することが、ガイドラインでも重視されています。この記事では、主な食事法の根拠と限界、日本の食卓で取り入れやすい方法を整理します。

この記事のポイント

  • 脂肪肝に対してエビデンスが比較的蓄積されている食事法は地中海食であり、欧州のガイドラインでも推奨されている
  • 糖質制限は短期的な減量には有効だが、長期の肝臓への効果は地中海食ほど明確ではない
  • 果糖(フルクトース)、とくに清涼飲料水や加工食品由来の果糖ブドウ糖液糖は、肝臓に脂肪を蓄積させる直接的な原因になる
  • 低FODMAP食は過敏性腸症候群向けであり、脂肪肝の食事療法とは目的が異なる
  • 食事改善の効果はフィブロスキャンや血液検査で客観的に確認できる
野々市中央院の中村文保医師による診察風景

脂肪肝はなぜ食事で改善できるのか——脂肪蓄積のメカニズム

肝臓に脂肪がたまる仕組み

肝臓は体内で最大の代謝工場です。食事から摂取した糖質は肝臓でグリコーゲンとして貯蔵されますが、貯蔵しきれない分は中性脂肪に変換されます。脂質も同様に、肝臓で脂肪酸に分解・再合成されます。摂取エネルギーが消費を上回る状態が続くと、中性脂肪が肝細胞に蓄積し、これが脂肪肝です。

NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では、体重を7%以上減らすと肝臓の脂肪化と炎症が改善し、10%以上の減量で線維化の改善も期待できると示されています。食事の内容を変えることで摂取エネルギーを適正化し、肝臓への脂肪の流入を減らすことが食事療法の基本的な考え方です。

果糖が肝臓に与える特別な負担

糖質のなかでも、肝臓に直接影響しやすいのが果糖(フルクトース)です。ブドウ糖は全身の筋肉や脳で利用されますが、果糖は主に肝臓で代謝されます。肝臓に届いた果糖はインスリンの制御を受けにくく、過剰摂取は肝臓での脂肪合成(de novo lipogenesis)を促しやすいとされています。

とくに注意したいのが、清涼飲料水やドレッシング、加工食品に含まれる「果糖ブドウ糖液糖」です。液体の糖は吸収が速く、丸ごとの果物とは肝臓への負担が異なります。脂肪肝の食事改善では、果物そのものを過度に恐れるよりも、こうした「見えにくい果糖」を減らすことが優先になります。

糖質制限・地中海食・果糖制限——根拠と限界を比べる

地中海食:脂肪肝に対するエビデンスが比較的蓄積されている

2024年に改訂されたEASL-EASD-EASO(欧州肝臓学会・欧州糖尿病学会・欧州肥満学会)の共同ガイドラインでは、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の食事療法として地中海食が推奨されています。複数のランダム化比較試験のメタアナリシスで、地中海食が肝脂肪の減少、肝機能の改善に有効であることが確認されています。

地中海食の特徴は、オリーブオイルや魚介類に多い不飽和脂肪酸を中心とし、野菜・果物・豆類・全粒穀物を豊富に摂る一方で、赤身肉や加工食品、砂糖を控える点にあります。カロリーの約4割が脂質ですが、その中身が飽和脂肪酸ではなく不飽和脂肪酸であることが、肝臓への好影響につながっています。日本の食卓でも、魚中心の食事、オリーブオイルの活用、野菜を増やすことで地中海食の考え方に近づけることは十分に可能です。

糖質制限:減量効果はあるが、肝臓への長期効果は限定的

糖質制限食は短期的な体重減少に効果があるという研究が複数あります。有名なDIRECT試験(イスラエル、2008年)では、低脂肪食・地中海食・糖質制限食を比較し、糖質制限食が2年間で最も体重が減ったという結果が出ました。一方、長期追跡では地中海食のほうが継続しやすく、体重減少を維持しやすい可能性が示されています。

NAFLD/NASH診療ガイドライン2020の追補では、「低炭水化物食と低脂肪食を比較したRCTでは、どちらの治療食も体重、内臓脂肪、肝臓内脂質含有量を同程度に減少させた」と記載されています。つまり、糖質を減らすこと自体に肝臓への特別な効果があるというよりも、総カロリーが減って体重が落ちることが本質的な改善要因です。厳格な糖質制限は続けにくさから中断するリスクがあり、たんぱく質や脂質の過剰摂取にもつながりかねません。

果糖制限:脂肪肝の原因に直接アプローチできる

果糖の過剰摂取が脂肪肝の発症・悪化と関連することは複数の研究で示されています。EASL-EASD-EASOガイドライン2024でも、砂糖および果糖の摂取制限が推奨項目に含まれています。具体的には、ジュースや甘い缶コーヒー、加工食品のラベルを確認して「果糖ブドウ糖液糖」を含む製品を減らすことが第一歩です。

一方、丸ごとの果物は食物繊維を含み、吸収が緩やかなため、適量であれば脂肪肝を悪化させるとは限りません。果物を完全に禁止する必要はなく、まずは砂糖入り飲料や果糖ブドウ糖液糖を含む加工食品を減らすことを優先してください。

野々市中央院のフィブロスキャン検査装置

食事改善の効果を客観的に把握するには、フィブロスキャン検査で肝臓の脂肪量と硬さを数値化する方法が有用です。当院(野々市中央院)では腹部エコーと合わせてこの検査を実施しています。

食事法 脂肪肝への根拠 メリット 注意点
地中海食 EASL-EASD-EASOガイドライン2024で推奨。複数RCTで肝脂肪改善を確認 栄養バランスが保ちやすく長期継続しやすい 日本の食材で応用する工夫が必要
糖質制限 減量を介した間接的な改善効果。肝臓への直接効果は低脂肪食と同程度 短期の体重減少に有効 長期継続が難しくリバウンドしやすい。脂質・たんぱく質過多のリスク
果糖制限 果糖の肝臓での直接的な中性脂肪合成促進が複数研究で確認 清涼飲料水・加工食品を減らすだけで始めやすい 果物まで過度に制限すると栄養バランスが崩れる
低FODMAP食 過敏性腸症候群向けであり、脂肪肝改善を目的としたエビデンスは乏しい IBS合併時は腹部症状の軽減に有効 脂肪肝単独の食事療法としては不適切

低FODMAP食と脂肪肝——混同しやすい理由と違い

低FODMAP食は腸の食事療法であり、肝臓の食事療法ではない

低FODMAP食は、小腸で吸収されにくい特定の糖質を一時的に制限し、過敏性腸症候群(IBS)の腹痛やガス、下痢といった症状を和らげるために開発された食事法です。米国国立糖尿病・消化器病・腎疾患研究所(NIDDK)もIBSの食事療法として案内しており、脂肪肝の改善を目的とした食事法ではありません。

「糖質を制限する」という点で脂肪肝の食事療法と似ているように見えますが、制限する対象が異なります。低FODMAP食で避けるのはフルクタンやガラクトオリゴ糖、乳糖、ポリオールなどの発酵性糖質であり、脂肪肝で問題になる果糖ブドウ糖液糖や精製糖質とは重なる部分もあればまったく別の部分もあります。

脂肪肝とIBSを合併しているときの考え方

脂肪肝と過敏性腸症候群は別の疾患ですが、同じ方に併存することはあります。お腹の張りや下痢に悩んでいる脂肪肝の方が、低FODMAP食に関心を持つのは自然なことです。ただし、低FODMAP食だけで脂肪肝そのものが改善する根拠は現時点では十分ではありません。腸の症状に対しては低FODMAP食、脂肪肝に対しては地中海食や果糖制限というように、目的ごとに食事法を整理して考えるのが合理的です。

過敏性腸症候群の食事療法について詳しく知りたい方は、お腹の張りが続く原因とガス・病気の見分け方の記事も参考にしてください。

野々市中央院のWEB予約はこちら

脂肪肝の程度を調べたうえで食事改善の方向性を相談したい方は、まず外来で肝臓の状態を確認してみてください。

日本の食卓で実践する脂肪肝改善の食事

「完璧な地中海食」でなくても効果は出る

地中海食というと、オリーブオイルやワインといった欧州のイメージが先行しますが、日本の和食にも共通点があります。魚を主菜にする頻度を増やす、サラダや煮物に少量のオリーブオイルを使う、白米を雑穀米に一部置き換える——こうした小さな変更でも、食事全体の脂質・糖質バランスは改善します。

NAFLD/NASH診療ガイドライン追補では、日本食スタイルでもMASLDの改善に有効であることが示唆されています。伝統的な一汁三菜をベースに、揚げ物より焼き物・蒸し物を選び、みそ汁の具を野菜中心にするだけで、特別な食材を買い足さなくても取り組めます。

果糖ブドウ糖液糖を減らす具体的なコツ

清涼飲料水を水やお茶に替えることが最もインパクトが大きい変更です。500mlのスポーツ飲料には30g前後の糖質が含まれ、その多くが果糖ブドウ糖液糖です。ドレッシング、焼肉のタレ、市販の麺つゆにも含まれていることがあるため、裏面の原材料表示を確認する習慣をつけると、意外な摂取源に気づけます。

果物はジュースではなく丸ごとを適量とるのが基本です。丸ごとの果物は食物繊維の働きで吸収が緩やかになるため、砂糖入り飲料や果糖ブドウ糖液糖を含む加工食品を減らすことのほうが優先順位は高くなります。

食事改善を続けるために大切なこと

脂肪肝の食事改善は、数日や数週間で結果を求めるものではありません。体重を現在の5〜7%減らすことを3〜6か月の目標として設定し、そこから先は維持に入るという見通しを持つと、急な制限で息切れしにくくなります。月に一度の体重記録と、3〜6か月ごとの採血やエコーで変化を確認することが継続の支えになります。

当院(野々市中央院)では、脂肪肝の経過を肝臓内科の外来で定期的に評価しています。食事の工夫だけで十分か、糖尿病や脂質異常症の治療が必要かも含めて、お一人ずつの状況に合わせた方針を組み立てます。

野々市中央院の中村佳世医師による診察風景

食事だけで足りないとき——運動と薬物療法の位置づけ

有酸素運動は食事改善と組み合わせると効果が高まる

WHOの身体活動ガイドラインでは、成人に週150〜300分の中等度有酸素運動と、週2日以上の筋力トレーニングが推奨されています。ウォーキングや軽いジョギングなどを習慣にすると、食事改善に加えて肝脂肪の燃焼が促進されます。通勤時にひと駅分歩く、エレベーターを階段に替えるといった日常の変化からでも十分に効果があります。筋力トレーニングを週2日以上加えると基礎代謝が上がり、減量後のリバウンド防止にもつながります。

MASLDの診断基準を満たすときは生活習慣病全体を見る

脂肪肝の背景に糖尿病、高血圧、脂質異常症がある場合、それぞれの治療が肝臓の脂肪蓄積を減らすことにもなります。MASLDの診断基準と検査の考え方を知っておくと、脂肪肝だけでなく代謝全体の管理がしやすくなります。

食事・運動だけでは体重が落ちにくい場合、近年はGLP-1受容体作動薬などの薬物療法も選択肢に入ってきています。当院では脂肪肝を合併する肥満に対するマンジャロ外来も行っていますので、食事改善を続けているのに数値が改善しない方はご相談ください。

よくある質問

Q. 糖質制限と地中海食、脂肪肝にはどちらが効果的ですか?
A. ガイドラインで推奨されているのは地中海食です。糖質制限は短期減量には有効ですが、長期の肝臓への直接的な改善効果は地中海食ほど明確ではありません。体重が減ること自体が肝脂肪を減らす主因であり、続けやすい食事法を選ぶことが大切です。
Q. 果物は食べてはいけないのですか?
A. 丸ごとの果物は食物繊維を含み、適量であれば脂肪肝を悪化させるとは限りません。ジュースではなく丸ごとを適量とることを基本にしてください。注意すべきはジュースや加工食品に含まれる果糖ブドウ糖液糖で、こちらは肝臓で中性脂肪に変換されやすいため控えることが勧められます。
Q. 低FODMAP食は脂肪肝に効きますか?
A. 低FODMAP食は過敏性腸症候群の腸の症状を和らげるための食事法であり、脂肪肝の改善を目的としたものではありません。脂肪肝とIBSを合併している場合は、腸の症状には低FODMAP食、脂肪肝には地中海食や果糖制限と目的別に整理して取り組むのが合理的です。
Q. 食事を変えるだけで脂肪肝は治りますか?
A. 軽度の脂肪肝であれば、食事改善と適度な運動で肝臓の脂肪を減らし数値が正常化するケースは多くあります。ただし、糖尿病や脂質異常症を合併している場合はそれらの治療も必要になることがあります。まず検査で現在の状態を確認したうえで方針を立てることをおすすめします。
Q. フィブロスキャンで食事改善の効果は分かりますか?
A. フィブロスキャンは肝臓の脂肪量(CAP値)と硬さ(VCTE値)を数値で示します。食事改善の前後で測定することで、肝脂肪の変化を客観的に確認できます。3〜6か月の間隔で経過を見ると改善傾向が把握しやすくなります。

まとめ

脂肪肝の食事改善で比較的エビデンスが蓄積されているのは地中海食の考え方に沿った食事であり、果糖ブドウ糖液糖の削減はそのなかでも即効性が高い対策です。厳格な糖質制限は短期減量には使えますが、長期の肝臓改善効果という点では地中海食に軍配が上がります。低FODMAP食は腸の疾患向けであり、脂肪肝の食事療法とは切り分けて考える必要があります。

「何を食べればいいか」を知ることは出発点ですが、実際に脂肪肝がどの程度進んでいるかを検査で把握したうえで食事計画を立てるほうが、的を絞った改善につながります。健診で脂肪肝を指摘されている方は、採血とエコー、必要に応じたフィブロスキャンで現在の状態を確かめることから始めてみてください。

参考文献

当院で相談する目安

健診で脂肪肝やALT・γ-GTPの高値を指摘された方、食事改善を始めたいが何から取り組めばよいか迷っている方、体重を減らしているのに肝臓の数値が改善しない方は、消化器内科・肝臓内科の外来でご相談ください。野々市中央院ではフィブロスキャン・腹部エコー・院内CTに対応しています。女性医師による診療・検査にも対応していますので、希望される方は予約時にお申し出ください。野々市市・白山市・能美市をはじめ近隣からお気軽にお越しください。

文責

中村 文保

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会 理事長)

日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医

公式サイト:胃と腸のことなら金沢消化器内科・内視鏡クリニック

脂肪肝の状態を検査で確認し、食事改善の方向性を一緒に考えませんか

健診結果票をお持ちの方は受診時にご持参ください。フィブロスキャン・採血・エコーを組み合わせて評価します。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。

当法人は金沢駅前に分院を開設いたしました。野々市院の予約が埋まっている場合は金沢院の予約もご確認してください。
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