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肥満治療で筋肉が落ちる?サルコペニア肥満の原因・予防法を専門医が解説

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肥満治療で筋肉が落ちる?サルコペニア肥満のリスクと正しい予防法

「ダイエットしたのに疲れやすくなった」「体重は減ったはずなのに体型が締まらない」──こうした違和感の背景に、筋肉の減少が隠れていることがあります。体重の数字だけを追って食事を極端に減らすと、脂肪よりも先に筋肉が落ちてしまう場合があり、これが「サルコペニア肥満」につながるリスクです。

サルコペニア肥満とは、筋肉量の低下に加えて筋力や身体機能の低下が起こり、同時に体脂肪が過剰に蓄積している状態を指します。見た目の体重は標準でも、体の中身は脂肪の割合が高く筋肉が少ない──いわゆる「隠れ肥満」と重なる概念でもあります。この記事では、肥満治療や自己流のダイエットで筋肉を失わないために知っておきたい基本と、当院の肥満外来でできることを整理します。

この記事のポイント

  • 急激な減量や極端な食事制限は、脂肪だけでなく筋肉も減らしサルコペニア肥満を招く
  • 筋肉が減ると基礎代謝が下がり、リバウンドしやすい体になる
  • サルコペニア肥満を防ぐには、タンパク質の確保とレジスタンス運動(筋トレ)の併用が重要
  • 当院では血液検査・腹部エコー・フィブロスキャンで全身の代謝状態を評価し、筋肉を守りながらの減量を支援している
中村文保医師の診察風景(野々市中央院)

サルコペニア肥満とは何か──体重が減っても安心できない理由

筋肉量・筋力・身体機能の低下と脂肪の蓄積が同時に進む状態

サルコペニアは、ギリシャ語で「筋肉の喪失」を意味する言葉です。加齢や運動不足、栄養の偏りなどによって骨格筋が減り、筋力や身体機能が落ちた状態を指します。2022年にESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)とEASO(欧州肥満学会)が発表した合意声明では、サルコペニア肥満を「過剰な体脂肪と、低筋量または低筋機能の共存」として定義しています。つまり筋肉量だけの問題ではなく、握力や歩行速度といった筋力・身体機能の低下も評価に含まれる点が重要です。

やっかいなのは、体重計の数字だけでは気づきにくいことです。体重が標準範囲でも筋肉が少なく脂肪が多い状態は成り立ちます。見た目に太っていなくても内臓脂肪が多い「隠れ肥満」と本質的には同じ構造であり、糖尿病や脂質異常症、高血圧のリスクがサルコペニアと肥満の両方から高まるため、どちらか一方よりも健康への影響が大きくなります。

なぜ肥満治療やダイエットで筋肉が落ちるのか

体重を減らすとき、減るのは脂肪だけではありません。食事量が大幅に減ると、体はエネルギー不足を補うために筋肉のタンパク質を分解してエネルギー源に回します。特に極端なカロリー制限や、炭水化物だけでなくタンパク質まで大幅にカットするような食事法では、脂肪より筋肉の方が先に落ちることさえあります。

近年注目されているGLP-1受容体作動薬などの薬物療法でも、減量効果が大きい一方で除脂肪体重(lean mass)の減少が報告されています。除脂肪体重には筋肉のほか骨や水分なども含まれるため「減った分がすべて筋肉」とは限りませんが、対策なしでは筋量低下に注意が必要です。薬を使うかどうかにかかわらず、「体重を落とす=筋肉も一緒に減りうる」という前提でタンパク質摂取と運動を組み合わせることが重要です。

筋肉が落ちるとなぜ困るのか──基礎代謝・リバウンド・生活習慣病

基礎代謝の低下がリバウンドの引き金になる

筋肉は安静時にもエネルギーを消費する組織です。筋肉量が多いほど基礎代謝が高くなり、何もしていなくてもカロリーが消費されやすくなります。基礎代謝は1日の総エネルギー消費の約60%を占めるとされ、加齢や除脂肪量の低下によって下がることが知られています。

ダイエットに成功したあとに体重が戻るリバウンドの多くは、この仕組みが関わっています。減量中に筋肉が落ちた状態で食事量を元に戻すと、代謝が追いつかず脂肪だけが増える──結果として「前より体重は同じなのに体脂肪率が上がった」という状態になりかねません。

転倒・骨折リスクと生活習慣病の悪化

筋肉量の減少は運動機能にも直結します。特に下肢の筋力が落ちると、つまずきやすくなり転倒や骨折のリスクが高まります。これは高齢者だけの問題ではなく、40〜50代から徐々に始まる変化です。

さらに、筋肉はインスリンの作用によって血糖を取り込む主要な場所でもあります。筋肉量が少なくなるとインスリンの効きが悪くなり(インスリン抵抗性)、血糖値が上がりやすくなります。脂質異常症や高血圧とも合わさることで、動脈硬化や心血管疾患のリスクが重なっていきます。

野々市中央院の腹部エコー検査機器

サルコペニア肥満を防ぐために──食事と運動の実践ポイント

タンパク質を「減らさない」食事を意識する

減量中であっても、タンパク質の摂取量は確保する必要があります。日本肥満学会の肥満症診療ガイドライン2022でも、減量時にはレジスタンス運動とともに十分なタンパク質摂取が推奨されています。特に中高年や筋トレ併用時の目安として、PROT-AGEの提言では体重1kgあたり1.0〜1.2g、運動実施者や疾患のある方では1.2〜1.5gが示されています。体重60kgの方であれば、1日60〜90g程度のタンパク質を3食に分けて摂るイメージです。なお、腎機能が低下している方ではタンパク質の過剰摂取が負担になる場合があるため、持病のある方は医師に相談したうえで量を調整してください。

肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを毎食に取り入れることが基本になります。カロリーを減らしたいからといって主菜を極端に減らすと、タンパク質が不足し筋肉の分解が進みやすくなります。「食事の量を減らす」のではなく「脂質や糖質の比率を見直しながらタンパク質を守る」という発想が大切です。

レジスタンス運動(筋トレ)を組み合わせる

ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪燃焼に有効ですが、それだけでは筋肉量の維持が難しいことが知られています。肥満症診療ガイドライン2022では、有酸素運動に加えてレジスタンス運動(筋力トレーニング)を併用することがサルコペニア肥満の予防・改善に効果的とされています。2022年のメタアナリシスでも、レジスタンス運動単独は除脂肪体重の増加に有効であり、カロリー制限と組み合わせた場合でも除脂肪体重の維持に寄与することが示されています。

ジムに通わなくても、スクワット、かかと上げ、腕立て伏せなど自分の体重を利用した運動で十分です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して筋力トレーニングを週2〜3日取り入れることが推奨されています。高齢者にはバランス運動や柔軟運動を含む多要素な運動を週3日以上行い、そのうち筋力トレーニングを週2〜3日含めることが勧められています。1回15〜20分程度から始めるだけでも筋肉への刺激になります。

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脂肪肝や体重の管理と合わせて、筋肉を守る減量について診察で確認できます。健診結果をお持ちいただくと初回の判断がスムーズです。

当院の肥満外来でできること──筋肉を守りながらの減量をサポート

血液検査と画像検査で「体の中」を見える化する

自己流のダイエットでは、体重計の数字しか判断材料がありません。当院(金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院)の肥満外来では、初診時に肝機能(AST・ALT・γ-GTP)、血糖・HbA1c、脂質プロファイル、腎機能、甲状腺機能など幅広い血液検査を行い、体の代謝状態を網羅的に評価します。腹部エコーや院内CTも同日に実施可能です。

加えて、野々市中央院にはフィブロスキャンを常設しています。フィブロスキャンは肝臓の脂肪量(CAP値)と線維化度(kPa)を数分で測定できる検査で、痛みはありません。石川県内でフィブロスキャンの公開登録がある医療機関は3施設です。「体重は減ったけれど、肝臓の脂肪は本当に減っているか」を数値で追跡できることが、当院で治療を受ける大きな利点です。

消化器専門医が副作用と栄養の両面をサポート

肥満治療に薬物療法を用いる場合、最も多い副作用は嘔気・下痢・便秘などの消化器症状です。当院は消化器内科が専門のクリニックですので、副作用のコントロールに精通しています。吐き気止めの処方や投与量の調整はもちろん、副作用で食事が偏ったときの栄養バランスの補正についても対応できます。

管理栄養士による個別の栄養指導(希望制)も受けられます。「カロリーは減らしたいが筋肉は落としたくない」という要望に対して、タンパク質の摂り方や食事の組み立て方を具体的にアドバイスできる体制があります。

野々市中央院のフィブロスキャン検査装置

「隠れ肥満」に気づくために──セルフチェックと受診の目安

体重が標準でも注意が必要なサイン

以下のような変化がある場合、筋肉量の低下やサルコペニア肥満の可能性があります。BMIが標準範囲でも油断はできません。

ふくらはぎが細くなった、椅子から立ち上がるのに手を使うようになった、歩く速度が遅くなったと感じる、握力が落ちた、食事量を減らしているのに体脂肪率が下がらない──こうした変化は体組成のバランスが崩れているサインかもしれません。「指輪っかテスト」(両手の親指と人差し指でふくらはぎの最も太い部分を囲み、隙間ができるかどうか)は、主に高齢者向けの簡易的なスクリーニングとして知られていますが、確定診断ではないため気になる方は医療機関での評価をおすすめします。

健診で肝機能異常や脂質異常を指摘された方は早めに相談を

脂肪肝や脂質異常症、血糖異常は、体脂肪が過剰に蓄積していることを示す間接的なサインです。これらの異常があるにもかかわらず自己流で急激な減量を行うと、肝臓に負担がかかったり、筋肉減少を加速させたりする恐れがあります。健診で指摘を受けた方は、まず医師の評価を受けてから減量に取り組むのが安全です。

よくある質問

Q. サルコペニア肥満かどうかはどうやって評価するのですか?
A. サルコペニアの評価では、握力や立ち座り動作などの筋力・身体機能の確認に加え、必要に応じて体組成の評価を行います。当院の肥満外来で実施する血液検査や腹部エコー、フィブロスキャンは、脂肪肝や血糖・脂質異常など背景にある代謝異常を把握するために有用です。サルコペニアが疑われる場合は、専門的な筋量測定が可能な医療機関と連携して対応します。
Q. 食事制限だけで筋肉を落とさずに痩せることはできますか?
A. 極端なカロリー制限では筋肉が減るリスクが高くなります。タンパク質を十分に摂りつつ、レジスタンス運動(スクワットや腕立て伏せなど)を併用することで筋肉の減少を抑えることが可能です。運動が難しい方は、まず診察でご自身に合った方法を確認してください。
Q. GLP-1受容体作動薬を使うと筋肉は必ず落ちますか?
A. 必ずではありません。GLP-1系治療では減少した体重の一部に除脂肪体重(lean mass)が含まれることが報告されていますが、タンパク質摂取の確保とレジスタンス運動の併用によって、筋肉の減少を最小限に抑えながら脂肪を重点的に落とすことが可能です。当院では栄養指導と組み合わせて対応しています。
Q. 若い人でもサルコペニア肥満になりますか?
A. はい、可能性はあります。特に極端なダイエットを繰り返す方や、日常的にほとんど運動をしない方は年齢にかかわらずリスクがあります。20〜30代でも体脂肪率が高く筋肉量が少ない「隠れ肥満」の状態が見つかることがあります。
Q. フィブロスキャンは肥満治療にどう役立ちますか?
A. 体重の変化だけでは肝臓の脂肪がどれだけ減ったかは分かりません。フィブロスキャンは肝脂肪量と線維化度を数値で測定できるため、「痩せたけど肝臓は大丈夫か?」を客観的に確認できます。治療前後で数値を比較し、肝臓の改善度合いを見ながら計画を調整します。

まとめ

体重を減らすことは健康のために大切ですが、「何を減らしたか」も同じくらい重要です。脂肪が落ちたのか、筋肉が落ちたのかで、体の行き先はまったく変わります。サルコペニア肥満は、減量に成功したつもりでも基礎代謝の低下やリバウンドを引き起こし、結果的に以前より不健康な状態を招きかねません。

自己流で体重だけを追うのではなく、タンパク質を確保した食事と筋トレを組み合わせること、そして血液検査や画像検査で体の中の変化を確認しながら進めることが、健康的な減量の土台になります。脂肪肝や生活習慣病を指摘されて減量を考えている方は、まず診察でご自身の体の状態を確認するところから始めてみてください。

参考文献

当院で相談する目安

健診で脂肪肝・肝機能異常・脂質異常症・血糖異常を指摘され、減量を考えている方。ダイエットを繰り返してもリバウンドする、体重は落ちたのに体型が変わらない、疲れやすくなったと感じている方。家族から生活習慣病を心配されている方。野々市中央院ではフィブロスキャンを常設しており、初診日に肝臓の脂肪量と代謝の状態をまとめて確認できます。野々市市・白山市・能美市など近隣にお住まいの方はもちろん、ご家族と一緒の受診も歓迎しています。

文責

中村 文保

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会 理事長)

日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医

公式サイト:胃と腸のことなら金沢消化器内科・内視鏡クリニック

脂肪肝や体重が気になる方──まず肝臓と代謝の状態を確認してみませんか

健診結果をお持ちいただくと、初診時の判断がスムーズです。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。

当法人は金沢駅前に分院を開設いたしました。野々市院の予約が埋まっている場合は金沢院の予約もご確認してください。
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