マンジャロやGLP-1受容体作動薬で吐き気がつらい方へ──消化器専門医が教える副作用の乗り越え方
オゼンピックなどのGLP-1受容体作動薬や、マンジャロ(チルゼパチド)のようなGIP/GLP-1受容体作動薬を使い始めてから、吐き気や胃もたれ、便秘、下痢といった胃腸の不調に悩んでいませんか。これらは薬の作用機序に直結した副作用で、投与を受けた方の一定数が経験します。ただし、正しい対処をすれば多くの場合コントロール可能です。この記事では、消化器専門医の立場から、副作用が起こる仕組みと症状別の具体的な対処法を整理します。
この記事のポイント
- GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬の消化器副作用は胃排出遅延が主な原因で、多くは投与開始後や増量期に出現し、時間とともに軽くなる
- 症状別に「食事の工夫」「投与量の調整」「胃腸薬の活用」の3本柱で対処できる
- 副作用がつらくて中断した方も、消化器内科で再調整すれば継続できる場合がある
- 当院では消化器専門医が副作用管理と必要に応じた内視鏡検査をあわせて対応

GLP-1系薬剤でなぜ胃腸の不調が起こるのか
胃排出遅延と食欲中枢への作用
オゼンピック(セマグルチド)に代表されるGLP-1受容体作動薬、そしてマンジャロ(チルゼパチド)のようなGIP/GLP-1受容体作動薬には、共通して3つの作用があります。インスリン分泌の促進、脳の食欲中枢への働きかけ、そして胃の排出を緩やかにする作用です。このうち3番目の「胃排出遅延」が、消化器系の副作用と最も深く関わっています。
胃の内容物がゆっくり小腸へ送られるため、食後の満腹感が長く続きます。これが食事量の自然な減少につながる反面、胃に食べ物がとどまる時間が長くなることで吐き気や胃もたれが起こりやすくなります。腸管の動きにも影響するため、便秘や下痢が生じることもあります。
副作用が出やすい時期と経過
消化器副作用は投与開始後や増量のタイミングで出やすく、維持用量に達すると軽くなることが多いとされています。PMDAが公開しているマンジャロのリスク管理計画書(RMP)によると、国内第III相試験(GPGO試験)ではチルゼパチド投与群の15.5〜30.9%が悪心・嘔吐・下痢・便秘のいずれかを経験しましたが、大部分(98.7〜100%)は軽度または中等度でした。副作用の発現割合は用量漸増期間の初期に最も高く、各投与群の維持用量に達した後は低下したと報告されています。
症状別の具体的な対処法
吐き気・胃もたれが続くとき
まず見直したいのは食事の量とスピードです。GLP-1系薬剤を使い始めると、以前と同じ量を同じペースで食べること自体が吐き気の原因になります。1回の食事量を普段の6〜7割程度に減らし、その分、1日4〜5回に分けて摂るようにしてみてください。脂っこいものや香辛料の強い食事は胃に負担がかかりやすいため、治療の初期は避けるのが無難です。
食事の工夫だけでは改善しない場合は、制吐薬(吐き気止め)の処方が有効です。消化器内科であれば、症状の程度に応じた適切な薬剤を選べます。投与量の一段階引き下げや、増量のタイミングを延期するといった調整も並行して検討します。
便秘がつらいとき
GLP-1系薬剤による便秘は、胃腸全体の運動が穏やかになることで起こります。まずは水分摂取量を意識的に増やしてください。1日1.5〜2リットルが目安です。食物繊維を含む食品を積極的に摂ることも効果的ですが、急に大量の食物繊維を摂ると逆にお腹が張ることがあるため、少しずつ増やすのがコツです。
それでも改善しない場合は、酸化マグネシウムやルビプロストンなどの緩下剤を併用します。消化器内科ではもともと便秘の治療を多く扱うため、薬の選択と用量調整に慣れています。なお、電子添文ではイレウス(腸閉塞を含む)が重大な副作用として記載されています。強い腹痛や嘔吐をともなう便秘は早めに受診してください。
下痢が続くとき
下痢は投与初期に出やすく、多くの方は時間の経過とともに落ち着きます。脱水を防ぐため、経口補水液などでこまめに水分を補給してください。脂質の多い食事やカフェイン、アルコールは下痢を悪化させやすいため控えめにします。整腸剤の内服も有効です。下痢が長引く場合や、血便をともなう場合は、GLP-1系薬剤以外の原因(感染性腸炎、炎症性腸疾患など)を除外する必要があるため、消化器内科で診察を受けることをおすすめします。

消化器内科に相談するメリット
副作用と他の病気の見分けがつく
GLP-1系薬剤の副作用だと思っていた症状が、実は別の消化器疾患だったというケースがあります。たとえば胃もたれや吐き気の背景に逆流性食道炎やピロリ菌感染が隠れていたり、便秘の原因が大腸ポリープだったりすることは珍しくありません。消化器内科では、必要に応じて胃カメラや大腸カメラ、腹部エコー、血液検査を組み合わせて原因を切り分けます。
投与量の調整と胃腸薬の処方を一か所で完結できる
オンラインクリニックでGLP-1系薬剤を処方されている方が副作用に困った場合、別の医療機関で胃腸薬をもらう必要が出ることがあります。消化器内科であれば、薬剤の投与量調整と胃腸薬の処方を同時に行えるため、通院の手間が減り、副作用コントロールの精度も上がります。
当院(野々市中央院)はマンジャロを用いた肥満外来を行っている消化器内科です。吐き気止めの処方、便秘・下痢への対処、内視鏡検査がすべて院内で完結します。以前オンラインなどで処方を受けて副作用がつらかった方も、対面で状態を確認しながら投与量を再調整することで治療を継続できる場合があります。
GLP-1系薬剤の副作用にお困りの方は、診察で症状を確認しながら対応策を一緒に検討できます。
副作用を減らすための日常の工夫
食事のタイミングと内容
注射の直後は胃の動きがとくに穏やかになる時間帯です。注射日の食事はいつもより軽めにし、消化のよいものを選んでください。白米やうどん、豆腐、白身魚、蒸した野菜などが胃に負担をかけにくい食品です。食べるスピードもゆっくりを心がけると、胃の過度な膨満を避けられます。
水分補給と運動
便秘や下痢のどちらにも共通して重要なのが十分な水分摂取です。とくに便秘傾向の方は、朝起きたときにコップ1杯の水を飲む習慣から始めてみてください。適度な運動(1日20〜30分のウォーキング程度)は腸の蠕動運動を促し、便秘の予防に役立ちます。
増量のペースを守る
マンジャロは2.5mgから開始し、4週間ごとに段階的に増量するのが基本です。体重減少を急ぎたい気持ちから増量を早めると、消化器副作用が強く出やすくなります。電子添文でも、増量は忍容性を確認してから行うよう定められています。副作用が落ち着かないうちは、同じ用量をもう4週間続けるという選択も有効です。RMPでも、緩やかな用量漸増により胃腸関連有害事象に対する忍容性が改善されたことが報告されています。

GLP-1系薬剤と内視鏡検査の関係
胃カメラを受ける前に伝えてほしいこと
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬には胃排出を遅らせる作用があるため、内視鏡や鎮静処置の予約時に使用中であることを必ず申告してください。現在の多学会ガイダンス(AGA 2023 Clinical Practice Updateなど)では、標準的な絶食を行い、吐き気・嘔吐・腹部膨満感などの症状がない患者では、GLP-1系薬剤を継続したまま内視鏡検査を行えるとされています。一方、増量期にある方や消化器症状が強い方では、前日の液体食への切り替えや、場合によっては処置の延期を個別に検討します。当院で内視鏡検査を受ける場合も、使用中の薬剤を事前にお伝えいただければ、絶食時間や準備を個別にご案内します。
消化器症状が長引くときは内視鏡検査を検討
GLP-1系薬剤の副作用は多くの方で投与開始後や増量期をすぎると軽快しますが、維持用量に移行しても症状が続く場合は、胃潰瘍や逆流性食道炎、大腸の炎症など別の原因が重なっている可能性があります。とくに上腹部の持続する痛み、血便、急な体重減少といった症状があるときは、内視鏡検査で直接粘膜を確認することが診断の近道です。当院では鎮静下での胃カメラ・大腸カメラに対応しています。
よくある質問
- Q. マンジャロの吐き気はいつ頃落ち着きますか?
- A. 投与開始後や増量のタイミングで出やすく、維持用量に達すると軽くなる方が多いです。落ち着くまでの期間には個人差がありますが、症状が長引く場合は投与量の調整や制吐薬の処方で対処できます。
- Q. 市販の胃薬を飲んでもよいですか?
- A. 軽い胃もたれ程度であれば市販の制酸薬で対処できることもあります。ただし、GLP-1系薬剤との飲み合わせや症状の程度によっては適さない薬もあるため、自己判断で長期間続けるよりも処方薬で対処するほうが確実です。
- Q. 副作用で中断した後、再開できますか?
- A. 再開は可能です。中断期間や前回の副作用の強さに応じて、低用量からの再導入を検討します。再開方法は自己判断せず、主治医と相談してください。
- Q. 便秘と下痢が交互に出ることがあります。薬のせいですか?
- A. GLP-1系薬剤が腸管の運動バランスを変化させることで、便秘と下痢が交互に出ることはあります。ただし、過敏性腸症候群(IBS)や他の腸疾患が背景にある可能性もあるため、症状が続く場合は診察で確認するのが安心です。
- Q. 他院で処方されていますが、副作用の相談だけでも受診できますか?
- A. 受診可能です。消化器症状への対処(吐き気止めの処方、便秘薬の調整、必要に応じた内視鏡検査など)は当院の専門領域です。処方元の医療機関と連携しながら対応します。
まとめ
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬の消化器の副作用は「薬が効いている証拠」ともいえる反応ですが、副作用が強ければ減量効果が高いわけでもないので、我慢し続ける必要はありません。食事量の調整、適切な胃腸薬の併用、投与量の見直し——この3つを組み合わせることで、多くの方は副作用を許容範囲に抑えながら治療を続けられます。
副作用がつらくて治療を中断してしまった方、オンラインで処方されたものの相談先がない方は、消化器内科で一度状態を確認してみてください。野々市中央院では副作用の管理から内視鏡検査まで院内で対応できます。
参考文献
- PMDA. マンジャロ皮下注アテオス 電子添文. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530471_2499422G1024_1_09
- PMDA. マンジャロ皮下注アテオス・ゼップバウンド皮下注アテオスに係る医薬品リスク管理計画書(RMP). https://www.pmda.go.jp/RMP/www/530471/9b8cca9b-af98-4302-9097-70ce053e547a/530471_24994A8G1028_010RMP.pdf
- Jastreboff AM, Aronne LJ, Ahmad NN, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022; 387: 205-216. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2206038
- Jalleh RJ, Camilleri M, Engström Ruud L, Horowitz M. Gastrointestinal effects of GLP-1 receptor agonists: mechanisms, management, and future directions. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024; 9(10): 957-964. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39096914/
- Al Hashash JG, Thompson CC, Wang AY. AGA Clinical Practice Update on the Management of Patients Taking GLP-1 Receptor Agonists Prior to Endoscopy. Clin Gastroenterol Hepatol. 2024; 22(2): 216-221. https://gastro.org/clinical-guidance/management-of-glp-1-prior-to-endoscopy/
当院で相談する目安
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ・オゼンピック・リベルサスなど)を使用中に吐き気や便秘、下痢が長引いている方、副作用がつらくて治療を中断してしまった方、他院で処方を受けているが胃腸の相談先がない方は、当院の受診をご検討ください。野々市中央院では消化器専門医が副作用の管理、胃腸薬の処方、必要に応じた胃カメラ・大腸カメラ検査まで一か所で対応しています。野々市市・白山市・能美市周辺にお住まいの方はもちろん、金沢市内からもお越しいただけます。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。







