肥満と高脂血症(脂質異常症)の深い関係──脂肪肝リスクから受診の目安まで
健診でコレステロールや中性脂肪の値を指摘されたとき、「体重も少し増えている」と心当たりがある方は多いのではないでしょうか。肥満と高脂血症(脂質異常症)は密接につながっており、両方を放置すると脂肪肝や動脈硬化といった深刻な病気につながることがあります。
この記事では、肥満がどのように脂質の異常を引き起こすのか、消化器・肝臓への影響、そして「まず何をすればよいか」までを整理しました。
この記事のポイント
- 肥満は高脂血症(脂質異常症)を引き起こす主要な原因の一つ
- 内臓脂肪の蓄積が脂肪肝・動脈硬化のリスクを高める
- 脂質異常症の診断基準と、健診で注目すべき数値がわかる
- 食事・運動による改善の具体的な考え方と、医療機関で受けられる検査・治療を確認できる
肥満が高脂血症を招くしくみ
内臓脂肪が脂質代謝を乱す
体重が増えると体内の脂肪組織が膨らみますが、とくに問題になるのが内臓脂肪です。内臓脂肪は皮下脂肪に比べて代謝が活発で、血中に遊離脂肪酸を大量に放出します。この遊離脂肪酸が肝臓に流れ込むと、肝臓での中性脂肪(トリグリセリド)の合成が増え、血中の中性脂肪値が上昇します。
中性脂肪が増えると、HDLコレステロール(善玉)は減少しやすくなり、LDLコレステロール(悪玉)は小型で密度の高い「スモールデンス LDL」に変わりやすくなります。スモールデンス LDL は血管壁に入り込みやすく、動脈硬化を進めるリスクが高いとされています。
インスリン抵抗性がさらに悪循環を生む
肥満の方は「インスリン抵抗性」が生じやすい状態です。インスリンの効きが悪くなると、血糖を下げるためにインスリンが過剰に分泌されます。過剰なインスリンは肝臓での脂質合成を促進し、中性脂肪をさらに増やします。こうして肥満→インスリン抵抗性→脂質異常→さらなる内臓脂肪の蓄積という悪循環が成立します。
脂質異常症の診断基準──健診結果の見方
数値で見る脂質異常症
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、空腹時の血液検査で以下の値を脂質異常症の診断基準としています。
| 項目 | 基準値 | 分類 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140 mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| LDLコレステロール | 120〜139 mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール | 40 mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪(空腹時) | 150 mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
| 中性脂肪(随時) | 175 mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
| Non-HDLコレステロール | 170 mg/dL以上 | 高Non-HDLコレステロール血症 |
2022年版のガイドラインでは、食後(随時)の中性脂肪値 175 mg/dL 以上も高トリグリセライド血症と診断されるようになりました。健診を空腹で受けられなかった方でも、この基準で評価できます。
健診結果の「要再検査」「要精密検査」を見逃さない
脂質異常症は自覚症状がほとんどありません。そのため、健診の結果表に書かれた「要再検査」や「要精密検査」を放置せず、早めに受診することが大切です。とくに肥満傾向がある方は脂肪肝を合併していることが多く、脂質の値だけでなく肝機能(AST・ALT・γ-GTP)も一緒に確認する必要があります。
肥満+高脂血症が肝臓に及ぼす影響──脂肪肝との関連
脂肪肝は「肝臓の肥満」
肥満の方は肝臓にも中性脂肪がたまりやすく、脂肪肝を発症するリスクが高まります。脂肪肝はかつて「軽い異常」と考えられていましたが、現在ではMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)として、肝炎(MASH)→肝硬変→肝がんに進行しうる病態であることがわかっています。なお、従来のNAFLD/NASHという呼称は、2024年に日本消化器病学会・日本肝臓学会がMASLD/MASHへの変更に賛同しています。
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(日本消化器病学会・日本肝臓学会)では、脂肪肝治療の原則として肥満・脂質異常症・糖尿病・高血圧などの背景因子を改善することが推奨されています。つまり肥満と高脂血症への対応は、肝臓を守ることにも直結します。
ALT 30超ならまず内科で精査を
2023年に日本肝臓学会が発表した「奈良宣言」では、ALT(GPT)が30 U/Lを超える場合、まず内科(かかりつけ医)で原因精査を受け、必要に応じて肝臓専門医へ紹介してもらうことが推奨されています。肥満や脂質異常症を背景に持つ方の脂肪肝は、血液検査だけでは進行度が見えにくいため、腹部エコーや必要に応じたフィブロスキャンなどの画像検査で肝臓の状態を評価することが重要です。
当院(野々市中央院)では、血液検査・腹部エコー・CT検査に加え、石川県内でも導入施設の限られるフィブロスキャン検査で肝臓の脂肪量と線維化度を数値化できます。健診結果をお持ちいただければ、脂質異常の程度と肝臓の状態をまとめて評価できます。
健診で脂質異常や肝機能の異常を指摘された方は、まず診察で現在の状態を確認できます。
肥満と高脂血症を改善するための基本
食事の見直し──制限より「置き換え」の発想で
脂質異常症の改善で最初に取り組むべきは食事です。飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、洋菓子など)の摂取を減らし、魚に含まれるオメガ3脂肪酸や、野菜・海藻に含まれる食物繊維を増やすことが基本です。極端な制限よりも、普段の食事の一部を置き換えるほうが続けやすく、効果も出やすいとされています。
当院には管理栄養士が在籍しており、医師が必要と判断した方には個別の栄養指導を行っています。ご自身の食事内容に合わせたアドバイスが受けられるため、「何をどう変えればよいかわからない」という方にも活用しやすい体制です。
運動の基本──有酸素運動を無理なく続ける
有酸素運動は中性脂肪を下げ、HDLコレステロールを増やす効果があります。ウォーキングなら1日30分程度、週に3〜5回を目安に続けることが推奨されています。ジョギングのような強度の高い運動でなくても、継続できる範囲で取り組むことが大切です。
生活習慣の改善で不十分な場合の薬物療法
生活習慣の改善を基本としつつ、LDL値や中性脂肪値、既往歴、動脈硬化の全身リスクを踏まえて薬物療法を検討します。高リスクの方には生活習慣改善と同時に早期の薬物療法が必要になる場合もあります。LDLコレステロールが高い場合はスタチン系薬剤、中性脂肪が高い場合はフィブラート系薬剤やEPA製剤などが使われます。薬の種類や開始時期は自己判断ではなく、医師との相談が必要です。
肥満が背景にある脂質異常症では、まず現体重の3%以上の減量でも脂質の数値や肝機能が改善するケースがあります。脂肪肝の改善を見込む場合は、5〜10%程度の減量が目安になることがあります。食事・運動だけでは体重減少が難しい方には、医学的な肥満治療も選択肢に入ります。当院では脂肪肝を合併する肥満の方に対して、フィブロスキャンで肝臓を見ながら進めるマンジャロ治療も行っています。
消化器内科で肥満・高脂血症を相談する意義
肝臓への影響を同時に評価できる
肥満と高脂血症を抱えている方の多くは、脂肪肝を合併しています。一般的な内科での脂質異常症の治療は血液検査と投薬が中心ですが、消化器内科・肝臓内科では腹部エコーやフィブロスキャンによる肝臓の画像評価を組み合わせることで、「脂質の値だけでなく、肝臓がどこまで影響を受けているか」を総合的に確認できます。
消化器症状のフォローもできる
肥満は逆流性食道炎と関連し、下痢や便秘などの便通症状がみられることもあります。肥満治療薬の副作用でも消化器症状が出ることがあり、消化器内科であればこうした症状への対応もスムーズです。必要に応じて胃カメラや大腸カメラによる精密検査にも移行できます。
よくある質問
- Q. 肥満と高脂血症(脂質異常症)は別の病気ですか?
- A. 別の病態ですが、密接に関連しています。日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」では、脂質異常症は肥満に関連する健康障害の一つとして挙げられています。BMI 25以上で脂質異常症を合併している場合は「肥満症」として治療の対象になります。
- Q. 高脂血症は何科で相談すればよいですか?
- A. 一般内科、循環器内科、消化器内科などで対応できます。肥満や脂肪肝を背景に持つ方は、肝臓の状態も合わせて評価できる消化器内科・肝臓内科での相談が適しています。
- Q. 健診で中性脂肪だけ高いと言われましたが、治療は必要ですか?
- A. 中性脂肪のみの上昇でも、食生活や体重の見直しは推奨されます。空腹時150 mg/dL以上、随時175 mg/dL以上は高トリグリセライド血症と診断されます。値が大幅に高い場合や他のリスク因子がある場合は薬物療法が検討されることもあります。
- Q. 痩せれば脂質の値は正常に戻りますか?
- A. 肥満が主な原因の場合、現体重の3%以上の減量でも脂質の数値が改善し始めることがあります。脂肪肝の改善には5〜10%程度の減量が目安です。ただし、遺伝的要因(家族性高コレステロール血症など)が関わっている場合は、体重を減らしても十分に改善しないことがあり、薬物療法が必要になることがあります。
- Q. 管理栄養士の栄養指導は受けられますか?
- A. 当院には管理栄養士が在籍しています。医師が必要と判断した場合、個別の栄養指導を受けていただけます。食事内容に合わせた具体的なアドバイスが受けられます。
まとめ
肥満と高脂血症(脂質異常症)は互いに影響し合いながら、脂肪肝や動脈硬化を進行させるリスクを持っています。とくに内臓脂肪の蓄積は、中性脂肪の上昇・HDLコレステロールの低下・肝臓への脂肪蓄積を同時に引き起こすため、体重管理と脂質の管理は切り離せません。
健診で脂質異常や肝機能の異常を指摘された方は、まず一度、血液検査と画像検査で現在の状態を正確に把握することから始めてみてください。当院では脂質の評価と肝臓の評価をまとめて行えます。
参考文献
- 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. https://www.j-athero.org/jp/jas_gl2022/
- 日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2022. ライフサイエンス出版, 2022. https://www.jasso.or.jp/contents/magazine/journal.html
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版). https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/nafld.html
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会. 脂肪性肝疾患の日本語病名に関して(2024年). https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/
- 日本肝臓学会. 奈良宣言2023. https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/iryou.html
当院で相談する目安
以下のような方は、野々市中央院で一度ご相談ください。健診結果をお持ちいただくと、初回の判断がスムーズです。
- 健診でコレステロールや中性脂肪の異常を指摘された方
- BMI 25以上で、脂質異常症・脂肪肝・高血圧・糖尿病などを合併している方
- 脂質の値だけでなく、肝臓の状態(脂肪肝の有無や進行度)も確認したい方
- 食事や運動の改善を試みているが、脂質の値や体重が思うように改善しない方
野々市中央院は、血液検査・腹部エコー・CT・フィブロスキャンを備え、脂質異常と肝臓の状態をまとめて評価できる体制です。野々市市・白山市・能美市など近隣にお住まいの方はもちろん、金沢市内からもお越しいただけます。
健診で脂質異常・肝機能の異常を指摘された方へ
健診結果をお持ちいただくと、初回の判断がスムーズです。管理栄養士による栄養指導も行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。







