MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)とは?NAFLDとの違いと最新の診断基準
健診で「脂肪肝の可能性があります」「ALTが高めです」と言われ、結果票を見ながら不安そうに来院される方は少なくありません。ご家族から受診を勧められたものの、最近はNAFLDではなくMASLDという言葉を目にして、「別の病気になったのですか」と戸惑う場面もあると思います。この記事では、脂肪肝の新しい呼び方、NAFLDとの違い、今の診断の考え方、受診の目安を初めての方にも分かりやすく整理します。
この記事で分かること
この記事のポイント
- MASLDがどのような病気で、なぜNAFLDから呼び方が変わったのか
- NAFLDとMASLDの違いを、診断の考え方から整理できること
- 最新の診断基準で確認する5つの心代謝リスク因子
- 腹部エコー、採血、FIB-4、フィブロスキャンの役割の違い
- 健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘されたときの受診の目安
MASLDという名前に変わった理由
NAFLDからMASLDへ変わった背景
従来よく使われていたNAFLDは、「アルコールが主な原因ではない脂肪肝」を意味する言葉でした。これに対してMASLDは、肝臓に脂肪がたまっていることに加えて、肥満、血糖異常、高血圧、脂質異常などの代謝の問題に着目して整理する考え方です。つまり、名前が変わっただけではなく、「なぜ脂肪肝が起きているのか」を前向きに説明しやすくなった、という変化があります。
呼び方が変わっても、慌てる必要はありません
以前NAFLDと言われた方の多くは、現在の分類でもMASLDに当てはまります。結果票や紹介状の用語が新旧で混在していても、それだけで病状が急に悪くなったわけではありません。大切なのは、今の肝機能の値、腹部エコーで脂肪沈着があるか、線維化が進んでいないかを順番に確かめることです。
MASHやMetALDも合わせて知っておきたい用語
脂肪肝の中でも炎症や線維化が進みやすい状態はMASHと呼ばれます。また、代謝の問題がありつつ飲酒量も一定以上ある場合はMetALDという別の分類になります。言葉が増えて難しく見えますが、受診時には「脂肪の蓄積があるか」「代謝の背景があるか」「飲酒量はどの程度か」を確認していく、と考えると整理しやすくなります。
NAFLDとMASLDはどこが違うのか
NAFLDは除外診断、MASLDは代謝リスクを足して考える
NAFLDでは「アルコールが主因ではない」「他の肝疾患では説明しにくい」といった除外の視点が中心でした。MASLDでは、それに加えて代謝異常という背景を積極的に拾い上げます。健診で脂肪肝を指摘された方にとっては、体重、腹囲、血圧、血糖、脂質の情報まで合わせて見ることが、以前より重要になったと言えます。
同じ脂肪肝でも受診後の説明が具体的になりやすい
例えば「お酒は多くないのに脂肪肝と言われた」という方でも、内臓脂肪の増加、境界型の血糖異常、軽い高血圧が背景にあることは珍しくありません。MASLDという言葉を使うと、肝臓だけではなく生活習慣病全体とのつながりを説明しやすくなります。ご家族と一緒に食事や運動を見直すきっかけにもなります。
結果票にNAFLDと書かれていても見直すべき点は同じです
紹介状や過去の健診結果にNAFLDと記載されていても、その情報が無効になるわけではありません。現在の診療では、その記録を踏まえながらMASLDの基準で整理し直し、必要に応じて追加検査を組み立てます。「名称が変わったから最初から全部やり直し」というより、「新しい分類で今の状態をより正確に確認する」というイメージが近いです。
健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘されたまま、結果票をしまったままになっている方は少なくありません。症状がなくても、今の段階を確認しておくと今後の見通しが立てやすくなります。
最新の診断基準では何を確認するのか
まずは脂肪肝があるかを画像や経過で確認します
診断の入口になるのは、肝臓に脂肪がたまっているかどうかです。実際の外来では、腹部エコーが最初の検査として使われることが多く、血液検査の異常と合わせて判断します。脂肪沈着の程度、胆のうや膵臓にほかの異常がないかも同時に確認できるため、健診後の精査として受けやすい検査です。
5つの心代謝リスク因子を確認します
MASLDでは、脂肪肝に加えて心代謝リスク因子を1つ以上満たすかを確認します。具体的には、肥満または腹囲の増加、血糖異常、血圧高値、中性脂肪高値、HDLコレステロール低値の5項目です。すでに糖尿病や高血圧、脂質異常症の治療を受けている場合も、この評価に含まれます。
| 比較項目 | NAFLD | MASLD |
|---|---|---|
| 基本の考え方 | アルコールなどを除外して考える | 脂肪肝+代謝異常を前向きに評価する |
| 診断で重視する点 | 非アルコール性かどうか | 5つの心代謝リスク因子の有無 |
| 外来での説明 | 原因の除外が中心 | 生活習慣病との関連まで整理しやすい |
| 飲酒量との関係 | 非アルコール性が前提 | 飲酒量が多い場合はMetALDなども検討 |
線維化の確認はFIB-4やフィブロスキャンで補います
脂肪肝の診療で見逃したくないのは、単に脂肪があるかどうかだけではなく、肝臓が硬くなり始めていないかという点です。採血結果から計算するFIB-4は、その入口になる指標です。中間〜高リスクが疑われる場合には、フィブロスキャンなどで肝臓の硬さや脂肪量をさらに詳しく調べます。野々市中央院では、腹部エコーとあわせてこうした評価につなげやすい体制を整えています。
健診で指摘されたら、どのタイミングで相談するべきか
症状がなくても受診したいケース
脂肪肝は自覚症状が乏しいため、「痛くないし、もう少し様子を見よう」と後回しになりがちです。ただ、ALTやγ-GTPの異常が続く、健診のエコーで脂肪肝を指摘された、糖尿病や脂質異常症を合併している、体重増加が続いているといった場合は、一度評価しておくと安心です。軽いうちに現状を把握できれば、生活習慣の立て直しで進行を抑えやすくなります。
早めの受診が望ましいサイン
強いだるさ、黄疸、むくみ、右上腹部痛、黒い便、食欲低下などがある場合は、脂肪肝以外の肝胆膵疾患が隠れている可能性もあります。こうした症状があるときは自己判断で様子を見ず、早めに消化器内科をご相談ください。健診結果票があれば、持参していただくと診察がスムーズです。
家族で続けやすい生活習慣の見直し方
急に完璧を目指さず、食事と体重の変化を見ます
MASLDの背景には、食べ過ぎ、甘い飲み物、夜遅い食事、運動不足、睡眠不足など、日常の積み重ねが隠れていることが多くあります。いきなり厳しい制限を始めるより、体重の推移を見ながら、ご飯や麺の量を少し整える、夕食後の間食を減らす、歩く時間を10分増やす、といった続けやすい調整のほうが長続きします。
家族の声かけが受診継続の助けになります
脂肪肝は、数値が少し改善すると通院をやめたくなる病気でもあります。けれども、生活が元に戻ると再び数値が悪化することも珍しくありません。ご家族が結果票を一緒に確認したり、定期検査の時期を覚えておいたりするだけでも、受診継続の支えになります。本人が「まだ症状がないから大丈夫」と思っている段階ほど、周囲の声かけが役立つことがあります。
よくある質問
- Q. お酒をあまり飲まないのに脂肪肝になることはありますか?
- A. あります。肥満、血糖異常、脂質異常症、高血圧、運動不足などが背景にあると、お酒が多くなくても脂肪肝を起こすことがあります。
- Q. 以前NAFLDと言われた人は、今は全員MASLDになるのですか?
- A. 多くの方はMASLDに含まれますが、飲酒量や代謝リスクの有無によっては別の分類になることがあります。過去の結果票を持って受診いただければ、現在の考え方で整理できます。
- Q. MASLDの診断に肝生検は必須ですか?
- A. 必須ではありません。多くの場合、採血、腹部エコー、FIB-4、必要に応じたフィブロスキャンなどの非侵襲的な検査から評価を進めます。
- Q. 症状がなくても受診した方がよいですか?
- A. 健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘された場合は、一度相談しておくことをおすすめします。症状がない段階のほうが、生活習慣の見直しで調整しやすいことが多いためです。
- Q. 体重が標準でもMASLDになることはありますか?
- A. あります。見た目が細くても、内臓脂肪の増加や血糖・脂質の異常が背景にある場合はMASLDに当てはまることがあります。
- Q. 家族も同じような生活習慣なら気をつけた方がよいですか?
- A. はい。食事内容や運動量が似ていると、同じように体重増加や生活習慣病のリスクを抱えていることがあります。健診の結果を一緒に確認することが早期発見につながります。
まとめ
MASLDは、これまでNAFLDと呼ばれてきた脂肪肝を、代謝異常との結びつきまで含めて整理し直した新しい考え方です。呼び名が変わったことで難しく感じるかもしれませんが、実際に確認する内容は、脂肪肝があるか、血糖や血圧、脂質、体重にどんな背景があるか、そして線維化が進んでいないか、という順番です。
健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘された段階なら、生活習慣の調整で進行を抑えられることも少なくありません。結果票を見て迷っている方、ご家族に受診を勧められている方は、気になる症状がなくても早めに消化器内科へご相談ください。
参考文献
※本記事テーマに関連する主な参考資料
- Rinella ME, et al. A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. Hepatology. 2023. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37363821/
- EASL–EASD–EASO Clinical Practice Guidelines on the management of metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease (MASLD). Journal of Hepatology. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38851997/
- 日本消化器病学会. 脂肪性肝疾患の診断基準に関して. 2026. https://www.jsge.or.jp/news/20260202/
- 日本肝臓学会. 奈良宣言特設サイト-医療関係者向け. https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/iryou.html
当院で相談する目安
健診の結果票で脂肪肝、ALT高値、γ-GTP高値、要精査と書かれていた方は、症状がなくてもご相談ください。野々市中央院では、診察、採血、腹部エコー、必要に応じたフィブロスキャンなどを組み合わせ、脂肪肝の程度と線維化リスクを整理していきます。野々市市、白山市、能美市など近隣にお住まいで、初めて脂肪肝の精査を受ける方にも受診しやすい体制を整えています。
健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘された方へ
「まだ症状がないから様子を見ようかな」と迷う段階でも、今の状態を確認しておくことは今後の安心につながります。脂肪肝の精査が必要かどうかも含めて、まずは外来でご相談ください。
健診結果票をお持ちの方は受診時にご持参ください
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。







