健康診断でアミラーゼが高いと言われたら?原因と膵臓の精密検査
「健康診断の結果でアミラーゼが高いと書かれていたけど、膵臓の病気なのだろうか」——野々市市や白山市のご家族から、こうしたご相談をいただくことがあります。とくに初めてこの項目を指摘された方は、聞き慣れない検査名に戸惑うかもしれません。この記事では、アミラーゼが高い原因や考えられる病気、精密検査の進め方を分かりやすく整理しました。
この記事で分かること
この記事のポイント
- アミラーゼとは何か、基準値はどの程度か
- アミラーゼが高い原因は膵臓だけではない(P型・S型の違い)
- 症状がなくてもアミラーゼが高くなるケース
- 精密検査で行われる採血・エコー・CTの流れ
- 受診のタイミングと当院でできる検査
アミラーゼとはどんな酵素か?基準値と検査の位置づけ
アミラーゼの役割
アミラーゼは、でんぷんなどの糖質を分解する消化酵素です。膵臓と唾液腺の2か所から分泌されており、血液中にも一定量が存在しています。健康診断の採血では、血清アミラーゼとして測定されるのが一般的です。
一般的な基準値の目安
血清アミラーゼの基準値は検査機関や測定法によって異なり、たとえば44〜132 IU/Lとする施設もあれば、37〜125 IU/Lや60〜190 IU/Lとする施設もあります。健診結果に記載された基準範囲を確認し、それを超えている場合に「高値」と判断してください。基準値をわずかに超えた程度であれば、体調の影響で一時的に変動していることもあります。
ちなみに、アミラーゼには膵臓由来の「P型(膵型)」と唾液腺由来の「S型(唾液腺型)」があり、血清アミラーゼ全体の約40〜45%がP型、残りの55〜60%がS型とされています。どちらが高いかによって、原因の推定が変わってきます。
なぜアミラーゼが高くなるのか?膵臓以外の原因も
膵臓が原因のケース(P型アミラーゼ上昇)
膵臓に炎症や損傷が起こると、膵臓内のアミラーゼが血液中に漏れ出て数値が上がります。代表的な疾患は急性膵炎と慢性膵炎です。急性膵炎では基準値の3倍以上に急上昇することがあり、激しい腹痛を伴うのが特徴です。慢性膵炎の場合は軽度〜中等度の上昇にとどまることが多く、進行すると膵臓の機能低下により逆に数値が下がることもあります。
膵がんでもアミラーゼが上昇する場合がありますが、膵がんでは必ずしも数値が上がるとは限りません。膵がんの精査には腫瘍マーカーや画像検査を組み合わせた評価が必要です。
唾液腺が原因のケース(S型アミラーゼ上昇)
耳下腺炎(おたふくかぜ)や唾石症など、唾液腺に炎症や閉塞があるとS型アミラーゼが上昇します。お子さんの場合はおたふくかぜが代表的ですが、成人ではストレスが唾液腺型アミラーゼの分泌を一時的に増加させることも報告されています(唾液中のアミラーゼがストレスマーカーとして研究されています)。ただし、血清アミラーゼ高値をストレスだけで説明できるケースは限定的であり、他の原因を除外したうえでの判断が必要です。
無症状で高値が続く場合——マクロアミラーゼ血症
アミラーゼが高いのに腹痛もなく、膵臓や唾液腺にも異常がない場合、「マクロアミラーゼ血症」の可能性があります。これはアミラーゼが免疫グロブリンなどのタンパク質と結合して大きな分子になり、腎臓から排泄されにくくなった状態です。病気ではなく体質的なもので、基本的に治療は不要です。血中アミラーゼは高いが尿中アミラーゼは低い、という検査パターンが手がかりになります。
アミラーゼが高いときに行われる精密検査の流れ
まずはアミラーゼ分画とリパーゼを確認
精密検査の最初のステップは、アミラーゼの「分画」を調べることです。P型とS型のどちらが高いかを確認し、膵臓由来か唾液腺由来かを区別します。あわせてリパーゼ(アミラーゼよりも膵臓に対する特異性が高い消化酵素)を測定することで、膵臓に炎症があるかどうかの推定精度が上がります。
腹部超音波検査(エコー)で膵臓を観察
腹部エコーは体への負担がほとんどなく、外来で10〜15分程度で終わる検査です。膵臓の腫れ、膵管の拡張、膵石や嚢胞の有無を確認します。ただし膵臓は胃の裏側にあり、腸のガスや体型によっては十分に見えないことがあります。「膵臓がよく見えなかった」という場合は、次のステップとしてCT検査を行います。
CT検査で膵臓全体を評価
CT検査は膵臓全体を断層画像で確認でき、エコーでは見えにくい部位も評価が可能です。造影剤を用いる造影CTでは膵臓の血流や腫瘤の有無をより詳しく調べられます。当院(野々市中央院)では院内にCT装置を備えており、採血とあわせて同日に検査を受けていただけます。
検査で「異常なし」と言われた場合の考え方
一時的な上昇で再検査では正常化するパターン
健診で高値を指摘されても、再検査では正常範囲に戻っていることは珍しくありません。飲酒やストレス、唾液腺への一時的な刺激などが原因で一過性にアミラーゼが変動することがあるためです。再検査で正常化し、腹痛などの症状もなければ、多くの場合は経過観察で問題ないとされています。
数値だけでは判断できないケース
アミラーゼが正常範囲でも膵臓の病気が否定されるわけではありません。慢性膵炎の進行期ではむしろアミラーゼが低下し、膵がんでも上昇しないケースがあります。腹痛や体重減少など気になる症状がある場合は、数値に関わらず画像検査を受けておくと安心です。
アミラーゼとリパーゼの違い——合わせて確認する理由
リパーゼが膵臓の評価に有用な理由
リパーゼは脂肪を分解する消化酵素で、アミラーゼと比べて膵臓への特異性が高い点が特徴です。リパーゼは膵臓以外の組織にも存在しますが、臨床検査で測定される膵リパーゼは膵臓由来の変動を主に反映します。膵炎の発症後、アミラーゼは比較的早く(数日で)正常化しますが、リパーゼは8〜14日程度上昇が持続するため、受診が遅れた場合でも膵炎を検出しやすいという利点があります。近年のガイドラインではリパーゼの測定が推奨される傾向にあります。
2つの酵素を組み合わせた判断
アミラーゼが高くリパーゼは正常であれば、膵臓以外の原因(唾液腺由来やマクロアミラーゼ血症)を検討します。両方とも高ければ膵臓の炎症が疑われ、画像検査へ進みます。片方だけの結果で判断せず、2つの酵素と画像検査を組み合わせて総合的に評価するのが基本です。
よくある質問
- Q. 健康診断でアミラーゼが高いと言われましたが、症状がありません。受診は必要ですか?
- A. 無症状でもP型アミラーゼの上昇が確認された場合は、膵臓の病気が隠れている可能性があります。まずはアミラーゼ分画とリパーゼの追加検査を受けていただくことをお勧めします。
- Q. アミラーゼのP型とS型はどうやって調べるのですか?
- A. 追加の採血検査(アミラーゼアイソザイム分析)で測定します。通常の健診では測定されないことが多いため、精密検査の際に医療機関で依頼してください。
- Q. アミラーゼが基準値をわずかに超えている程度でも心配ですか?
- A. 基準値を少し超えた程度であれば、一時的な変動のこともあります。再検査で正常化すれば経過観察で問題ないことが多いですが、飲酒習慣がある方は念のため画像検査を受けておくと安心です。
- Q. マクロアミラーゼ血症は治療が必要ですか?
- A. マクロアミラーゼ血症は体質的なもので、病気ではありません。特別な治療は不要ですが、膵臓の病気を否定した上での診断となるため、一度は精密検査を受けて確認してください。
- Q. アミラーゼが高いと膵臓がんの可能性はありますか?
- A. 膵臓がんでアミラーゼが上昇する場合もありますが、上昇しないことも多くあります。アミラーゼだけで膵臓がんを判断はできず、腫瘍マーカーや画像検査(造影CTなど)と合わせた評価が必要です。
- Q. リパーゼとアミラーゼはどちらが膵臓の評価に向いていますか?
- A. リパーゼは膵臓への特異性がアミラーゼより高く、上昇の持続期間も長いため、膵炎の検出に優れています。アミラーゼは膵臓以外の原因でも上昇するため、両方を測定して総合的に判断するのが理想的です。
まとめ
アミラーゼが高いと指摘されると「膵臓の重い病気では」と不安になりがちですが、実際にはS型(唾液腺由来)の上昇やマクロアミラーゼ血症など、膵臓に問題がないケースも少なくありません。大切なのは、P型かS型かを採血で確認し、必要に応じてエコーやCTで膵臓の状態を評価するという段階的な精密検査を受けることです。
一方で、アミラーゼが正常であっても膵臓の病気が隠れている場合があるため、腹痛や体重減少などの症状がある方は数値にかかわらず受診してください。健診の結果を「異常なし」と自己判断するのではなく、一度専門医に相談することが安心への近道です。気になる結果がある方は、早めに消化器内科へご相談ください。
当院で相談する目安
健康診断でアミラーゼ高値を指摘された方、膵臓の数値が気になる方は、当院(金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院)にご相談ください。院内で採血検査(アミラーゼ分画・リパーゼを含む)、腹部超音波検査、CT検査まで一貫して対応しています。女性医師による診察や土曜日の検査にも対応しておりますので、野々市市・白山市・能美市にお住まいの方はお気軽にお問い合わせください。
健診で膵臓の数値が気になったら、まず専門医に相談を
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。
参考文献
※本記事テーマに関連する主な参考資料
- 日本消化器病学会 編. 慢性膵炎診療ガイドライン2021(改訂第3版). 南江堂, 2021.
- Takada T, et al. JPN clinical practice guidelines 2021 with easy-to-understand explanations for the management of acute pancreatitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2022;29(10):1057-1083. https://doi.org/10.1002/jhbp.1146
- 一般社団法人 日本臨床検査専門医会(JACLaP). アミラーゼ[ラボ NO.545(2024.6.発行)より]. https://jaclap.org/guests/guests-2563/
- 背中まで響くみぞおちの痛み|膵炎の検査と受診目安. 金沢消化器内科・内視鏡クリニック. https://naishikyo.or.jp/ct/epigastric-back-pain-ct/






