肝機能の数値が高いと言われたら|AST・ALT・γ-GTPが示す意味と原因
健診結果の封筒を開けて、「肝機能:要精密検査」の文字に目がとまった——。ご家族から「お父さん、これ大丈夫なの?」と聞かれて、うまく答えられなかった方もいるかもしれません。AST、ALT、γ-GTPという略語が並んでいても、それぞれが何を表しているのかまではなかなか分かりにくいものです。この記事では、肝機能検査の代表的な3項目の「読み方」と、数値が高くなる原因、そして受診の目安を肝臓専門医の立場からお伝えします。
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この記事で分かること
- AST・ALT・γ-GTPそれぞれが映し出す肝臓の状態
- 数値の組み合わせパターンから疑われる病気の方向性
- 日本肝臓学会「奈良宣言」で示されたALT 30超の受診基準
- 数値が高い状態を放置した場合に起こりうる変化
- 野々市中央院で受けられる血液検査・エコー・フィブロスキャンの流れ
AST・ALT・γ-GTPはそれぞれ何を映しているか
AST(GOT)——肝臓だけでなく心臓や筋肉にも存在する酵素
ASTは肝細胞のほか、心筋や骨格筋にも含まれる酵素です。肝臓の細胞が壊れると血液中に漏れ出して数値が上がりますが、激しい運動のあとや心筋梗塞でも上昇します。つまり、ASTだけが高い場合は「肝臓以外の原因」も視野に入れる必要があります。
ALT(GPT)——肝臓への特異性が高い指標
ALTはほぼ肝臓にしか存在しません。そのため、ALTが基準値を超えている場合は「肝臓に何らかの負担がかかっている」と考えてよいでしょう。日本肝臓学会が2023年に発表した「奈良宣言」では、ALTが30 U/Lを超えたらかかりつけ医への相談を推奨しています。健診の基準値よりも低い数値で受診を勧めている点がポイントです。
γ-GTP——お酒・胆道系のトラブルに反応しやすい
γ-GTPは、肝臓のなかでも胆管の細胞に多く含まれます。飲酒量が多い方で高値になりやすく、「お酒の飲みすぎ指標」として知られていますが、胆石や膵頭部の腫瘍で胆汁の流れがせき止められたときにも跳ね上がります。γ-GTPだけが突出して高い場合は、胆道系の病気を調べる検査が追加されることがあります。
数値の組み合わせから原因を推測する
AST>ALTのパターン
ASTがALTを上回っている場合、アルコール性肝障害や肝硬変が背景にある可能性があります。長年の飲酒習慣がある方でこのパターンが出たら、肝臓の線維化が進んでいないかを調べておくと安心です。
ALT>ASTのパターン
ALTの方が高い場合は、脂肪肝(MASLD)や慢性肝炎の初期〜中期に多くみられます。お酒をほとんど飲まない方でも肥満や糖尿病をきっかけに脂肪肝になるケースは珍しくなく、野々市市や白山市から当院に来られる方のなかにもこのパターンの方が増えています。
γ-GTPだけが高いパターン
AST・ALTが基準内でγ-GTPだけが高い場合、飲酒の影響が最も多い原因です。ただし、薬の副作用や胆道系の疾患が隠れていることもあるため、「お酒のせいだろう」と自己判断で片づけないでください。
| パターン | 疑われやすい原因 | 追加で調べたい検査 |
|---|---|---|
| AST>ALT | アルコール性肝障害、肝硬変 | 腹部エコー、フィブロスキャン |
| ALT>AST | 脂肪肝(MASLD)、慢性肝炎 | 肝炎ウイルス検査、腹部エコー |
| γ-GTPのみ高値 | 飲酒、薬剤性、胆道系疾患 | 腹部エコー、ALP・ビリルビン追加 |
| 3項目とも高値 | 急性肝炎、重度の脂肪肝炎(MASH) | 肝炎ウイルス検査、CT、フィブロスキャン |
「奈良宣言」で変わった受診の目安——ALT 30超が新基準
従来の基準値と何が違うのか
多くの健診機関ではALTの基準上限を40〜45 U/L前後に設定しています。一方、日本肝臓学会が2023年に出した「奈良宣言」は、ALTが30 U/Lを超えた時点でかかりつけ医の受診を推奨するものです。基準値の範囲内でも、ALTが31以上であれば慢性肝臓病(CLD)が隠れている可能性があるとされています。
「基準値内だから大丈夫」は通用しなくなった
健診結果に「異常なし」と書かれていても、ALTが30を超えていれば一度は消化器内科や肝臓内科で相談してみてください。特に肥満や糖尿病、脂質異常症を抱えている方は、脂肪肝が進行しやすい背景があるため、早めの確認が大切です。当院の精密検査の流れについては、健診で肝機能異常を指摘されたら?精密検査を専門医が解説の記事で詳しくまとめています。
数値が高いまま放置した場合のリスクと回復の見込み
肝臓はどのように硬くなっていくか
肝臓の炎症が長引くと、壊れた細胞の跡に線維(コラーゲン)がたまっていきます。この「線維化」が進むと肝臓は徐々に硬くなり、最終的には肝硬変へと移行します。肝硬変からは肝がんが発生するリスクも高まるため、国立がん研究センターでも定期的な検査を呼びかけています。
軽い段階なら生活習慣の見直しで回復が見込める
脂肪肝や軽度の肝炎であれば、食事・運動・体重管理の改善で数値が正常化する方は少なくありません。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では、体重を7〜10%減らすことで肝臓の脂肪や炎症の改善が期待できると示されています。「数値がちょっと高いだけ」と後回しにせず、原因をはっきりさせることが回復への近道です。
家族の健診結果が気になったときの対応
結果票のどこを見ればよいか
健診結果票の「肝機能」欄にあるAST・ALT・γ-GTPの値と、判定区分(A〜Eなど)をまず確認してください。C判定以上やALTが30超であれば、早めに受診を検討する段階です。結果票をそのまま持って受診していただければ、医師が必要な追加検査を判断します。
当院での検査体制
野々市中央院では、血液検査・腹部エコーに加えて、フィブロスキャンを導入しています。石川県内でもこの機器を備えるクリニックは限られており、大きな病院を受診しなくても外来で肝臓の硬さと脂肪量を調べられます。フィブロスキャンは超音波と振動波で肝臓の状態を数値化する検査で、痛みがなく5〜10分ほどで終わります。女性医師による診察も可能ですので、予約時にお申し付けください。詳しくはフィブロスキャン検査のページをご覧ください。
よくある質問
- Q. AST・ALTが少しだけ高い程度でも受診した方がよいですか?
- A. はい。日本肝臓学会の奈良宣言ではALTが30 U/Lを超えた段階で受診を推奨しています。軽度の上昇でも脂肪肝やウイルス性肝炎が隠れているケースがあるため、原因を一度調べておくと安心です。
- Q. γ-GTPだけ高くてAST・ALTは正常です。肝臓は問題ないのでしょうか?
- A. γ-GTP単独の上昇では飲酒の影響が最も多い原因ですが、胆道系の疾患や薬剤の影響が隠れている場合もあります。数値が持続して高い場合は腹部エコーなどで確認しておくことをお勧めします。
- Q. 健診のたびに数値が上下します。どの時点の値を重視すればよいですか?
- A. 一時的な変動は風邪薬やサプリメント、飲酒量で起こりえます。複数回の健診で繰り返し基準値を超えている場合は、肝臓の慢性的な負担を示唆するため、精密検査をご検討ください。
- Q. フィブロスキャンは痛みがありますか?費用はどのくらいですか?
- A. 痛みはありません。体の表面にプローブを当てるだけの検査で、所要時間は5〜10分です。保険適用で受けられますが、検査単体の費用に診察料や血液検査などの費用が加わるため、詳しい金額は診察時にご確認ください。
- Q. 女性医師の診察を希望できますか?
- A. 当院には女性医師が在籍しています。WEB予約時に指定していただくか、お電話でご希望をお伝えください。
- Q. 肝機能の数値は生活習慣の改善だけで下がりますか?
- A. 脂肪肝が原因の場合、食事・運動・体重管理の見直しで数値が正常化する方は多くいらっしゃいます。ただし、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎など原因によっては薬物治療が必要です。まず原因を特定することが改善の出発点になります。
まとめ
AST・ALT・γ-GTPはそれぞれ肝臓の異なる側面を映しており、数値の高さだけでなく「どの項目がどの程度上がっているか」の組み合わせが原因を絞り込む手がかりになります。2023年の奈良宣言以降、ALTが30を超えた時点で受診を検討する流れが広まりつつあり、従来の基準値内であっても油断はできません。
脂肪肝や軽度の肝炎の段階であれば、生活習慣の立て直しで数値が改善する方も少なくありません。健診結果を引き出しにしまったままにせず、気になる数値がある方は早めに消化器内科・肝臓内科へご相談ください。
当院で相談する目安
ALTが30 U/Lを超えている方、複数回の健診で肝機能の異常を指摘されている方、脂肪肝と言われたまま精密検査を受けていない方は、一度肝臓専門医の診察をお勧めします。野々市中央院ではフィブロスキャン・腹部エコー・血液検査・院内CTに対応しており、女性医師による診察も可能です。野々市市・金沢市・白山市をはじめ、能美市・小松市からもお気軽にお越しください。
肝機能の数値、気になったまま放置していませんか?
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。
参考文献
※本記事テーマに関連する主な参考資料
- 一般社団法人 日本肝臓学会:奈良宣言2023 特設サイト(一般の方向け).(参照 2026-03-01)https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/ippan.html
- 国立がん研究センター がん情報サービス:肝臓がん(肝細胞がん).(更新・確認日 2025-05-30/参照 2026-03-01)https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/index.html
- 厚生労働省:肝炎総合対策の推進.(参照 2026-03-01)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/index.html
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会(編):NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版). 南江堂, 2020-11-15.(Minds掲載ページ)






