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夜中のトイレが止まらない|泌尿器で治らない夜間頻尿とSAS

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夜中のトイレが多いのは無呼吸のせい?|SASと夜間頻尿の意外な関係

「最近、夜中に2回も3回もトイレに起きる」——ご家族からそう相談されたことはありませんか。当院でも、いびきの相談で来院された方のご家族が「実は父もトイレが近くて…」と話してくださることがあります。夜間のトイレは「歳をとったから仕方がない」と片付けられがちですが、原因が加齢以外にあるケースは想像以上に多いです。この記事では、夜間頻尿と睡眠時無呼吸症候群(SAS)の関係を中心に、泌尿器の問題との見分け方や検査の受け方を整理しました。

この記事のポイント

  • 夜間頻尿には泌尿器が原因のタイプと尿量そのものが増えるタイプがあること
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が心臓を介して尿量を増やすしくみ
  • 「年齢のせい」と決めつける前に確認しておきたいチェックポイント
  • 検査の流れと、泌尿器科・内科どちらを受診すべきかの目安
  • ご家族ができるサポートと日常生活の工夫

夜中のトイレが増えたら考えたい3つの原因

膀胱の問題——「ためる力」の低下

ひとつ目は、膀胱側に原因があるケースです。前立腺肥大症(男性)や過活動膀胱では、膀胱に尿をためておく力が落ちるため、少量でも尿意を感じて目が覚めます。排尿後の残尿感や、急に我慢できなくなる切迫感がある場合は、このタイプが疑われます。こうした泌尿器科的な要因は、特に50代以降の男性で増えてきます。

「作られる尿の量」が夜間に増えている

ふたつ目は、夜間に腎臓が作る尿の量そのもの(夜間多尿)が増えているパターンです。人の体は本来、睡眠中にはバソプレシンというホルモンが尿の産生を抑えるよう調整しています。ところが心臓への負担やホルモンバランスの乱れがあると、この調整がうまく働かず、寝ている間に大量の尿が作られます。むくみや塩分の摂りすぎ、水分の取り方も関わります。

見落とされやすいもうひとつの原因——SAS

三つ目が、睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。SASでは、睡眠中に気道がふさがり呼吸が止まるたびに胸の中の圧力が大きく変動します。その結果、心臓に血液が一気に戻り、心臓は「体内の水分が多すぎる」と判断して尿を増やすホルモンを出します。泌尿器科で「前立腺は問題ない」と言われたのに夜のトイレが減らない方は、SASが隠れている可能性があります。ちなみに、いびきを指摘される方だけでなく、一見細身の方でも顎が小さい場合にSASが起こることがあります。

無呼吸が尿量を増やすしくみ——ANPとは

胸腔内圧の変動と心臓の反応

SASでは、呼吸が止まっている間に胸の中の圧力(胸腔内圧)が急激に低下します。すると、普段なら緩やかに流れている血液が一度に心臓へ引き寄せられ、心臓の壁が引き伸ばされます。心臓はこれを「血液量が過剰だ」と読み取り、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)というホルモンを血中に放出します。ANPは腎臓に「ナトリウムと水分を排出しなさい」と命じるため、本来なら休んでいるはずの夜間に腎臓がフル稼働し、大量の尿が作られるわけです。

「トイレに行きたくて起きる」とは限らない

もうひとつ見落とされやすい点があります。SASによる無呼吸エピソードが起こると、脳が一瞬覚醒して呼吸を再開します。この覚醒のタイミングで膀胱に尿がたまっていると、「トイレで目が覚めた」と認識されることがあります。実際には呼吸の問題で目が覚めているのに、トイレが原因だと思い込んでしまう可能性が指摘されています。尿意で起きたのか、無呼吸で起きたのかを自分で区別するのは難しいため、客観的な検査で原因を特定することが大切です。

「年のせい」と決めつける前にチェックしたいポイント

家族の観察が手がかりになる

SASが原因の夜間頻尿には、いくつかの手がかりがあります。夜間に2回以上トイレに起きること、いびきが大きい(または一瞬止まる)と家族に指摘されること、朝起きたときに頭が重い、日中に強い眠気がある——これらが重なるときは、SASの可能性を考えてください。ご本人は自覚がなくても、ご家族が夜中のいびきの様子を10秒ほど観察するだけで「息が止まっている」と気づくことがあります。

泌尿器科を受診済みで改善しない場合

前立腺肥大症の治療や過活動膀胱の薬を続けても夜のトイレが減らないという方は、泌尿器以外の原因が重なっている可能性があります。特にいびきやむくみを伴う方は、SASや心臓への負担が関与しているかもしれません。泌尿器科の主治医に「いびきも指摘される」と伝えたうえで、呼吸器内科や内科への紹介を相談するのがスムーズです。

検査の流れと受診先の選び方

SASの簡易検査は自宅で受けられる

SASが疑われる場合、まず行うのが自宅での簡易検査(HSAT)です。クリニックで小型の機器を受け取り、就寝時に鼻と指先にセンサーをつけて眠るだけで、睡眠中の無呼吸の回数(AHI)と血中酸素濃度を測定できます。入院は不要で、費用も保険3割負担で3,000円前後です。検査の手順についてはSAS簡易検査の自宅でのやり方で詳しく解説しています。

結果に応じた治療と受診先の目安

AHIが40以上の場合は簡易検査のみでCPAP(持続陽圧呼吸療法)の保険適用が認められます。CPAP治療で気道の閉塞を防ぐと、心臓への負担が減り、ANPの分泌が落ち着くため、結果として夜間のトイレ回数が減少したという報告があります(Wang T et al., Int Neurourol J, 2015)。受診先に迷ったときは、排尿の勢いが弱い・残尿感がある場合は泌尿器科、いびきや日中の眠気がある場合は内科や呼吸器内科が適しています。当院でもSASの簡易検査からCPAP管理まで対応しています。

家族にできるサポートと生活の工夫

塩分と水分の管理

夜間多尿を減らすには、まず塩分を控えることが基本です。塩分を摂りすぎると体が水分をため込みやすくなり、夜間の尿量が増えます。高血圧の方は1日6g未満が目安とされていますが、そうでない方も意識して減らすことが望ましいです。食卓の調味料を減塩タイプに替えたり、汁物を1日1杯に絞ったりするところから始めてみてください。夕食以降の水分は、のどを潤す程度にとどめるのが望ましいとされています。日中にこまめに水分を摂るようにすれば、夜間の喉の渇きも抑えやすくなります。

夕方の足上げと弾性ストッキング

日中、ふくらはぎにたまった水分は、横になると心臓に戻り、そこから腎臓で尿に変えられます。これが夜間の尿量増加の一因です。夕方に15〜20分ほど足を心臓より高い位置に上げておくと、就寝前までに余分な水分が排出され、夜間の尿量が減ることが期待できます。立ち仕事の多い方は、日中に弾性ストッキングを着用することで、ふくらはぎへの水分の溜まりを防ぐ方法もあります。

睡眠環境の見直し

就寝前3時間は食事を終え、アルコールは控えてください。アルコールは舌の筋肉をゆるめて気道を狭くし、無呼吸を悪化させます。横向き寝は仰向けに比べて気道が確保されやすいため、SASの症状が軽い段階では試す価値があります。抱き枕やテニスボールをパジャマの背中に入れて仰向けを防ぐ工夫も、ご家族が手伝いやすい方法です。

よくある質問

Q. 夜間に何回トイレに起きたら「夜間頻尿」ですか?
A. 国際禁制学会(ICS)の定義では、夜間に排尿のために1回以上起きることを夜間頻尿としています。2回以上で日常生活に支障が出ている場合は、原因を調べるために受診をご検討ください。
Q. 泌尿器科で問題ないと言われましたが、まだ夜中のトイレが続きます。
A. 膀胱や前立腺に問題がなくても、SASや心臓への負担が夜間多尿を起こしていることがあります。いびきや日中の眠気、むくみなどの症状がある方は、内科でSASの簡易検査を受けてみてください。
Q. SASの検査に入院は必要ですか?
A. まず行う簡易検査は自宅で実施できます。クリニックで小型の検査機器を受け取り、就寝時にセンサーをつけて眠るだけです。結果によっては精密検査(PSG)を提携病院で受けていただく場合があります。
Q. CPAP治療を始めれば夜のトイレは減りますか?
A. SASが夜間多尿の原因になっている方の場合、CPAP治療でANPの分泌が落ち着き、夜間のトイレ回数が減少したとするメタ解析があります(Wang T et al., 2015)。ただし夜間頻尿には複数の原因が絡むことがあるため、改善の程度には個人差があります。
Q. 痩せている人でもSASで夜間頻尿になりますか?
A. はい。顎が小さい方や扁桃が大きい方は、体型に関係なく気道が狭くなりSASを発症することがあります。体重が標準でも、いびきや夜間頻尿が気になる場合は検査をお勧めします。
Q. 弾性ストッキングは市販のもので効果がありますか?
A. 市販の着圧ソックスでも、ふくらはぎの水分貯留をある程度防ぐ効果が期待できます。ただし圧の強さが合わないと逆効果になることがあるため、持病がある方は購入前に医師に相談してください。

まとめ

夜間頻尿の原因は、前立腺肥大症や過活動膀胱のような泌尿器疾患だけではありません。睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって心臓に負担がかかり、ANPというホルモンが夜間の尿量を増やしているケースは、見過ごされやすい反面、CPAP治療で改善が見込めるという希望があります。ご家族がいびきの停止に気づいたり、ご本人が朝の頭痛や日中の眠気を感じたりしている場合は、SASの可能性を考えてみてください。

泌尿器科で原因がはっきりしなかった方、薬を飲んでも夜のトイレが減らない方は、一度SASの検査を受けてみることをお勧めします。当院では自宅でできる簡易検査からCPAP治療まで一貫して対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

参考文献

※本記事テーマに関連する主な参考資料

  • 日本呼吸器学会(監修). 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂, 2020. ISBN 978-4-524-24533-8.
  • Hou XY, Zhang L, Zhang ZJ, et al. Nocturia: An overview of current evaluation and treatment strategies. World J Methodol. 2025;15(4):104696. doi:10.5662/wjm.v15.i4.104696.
  • Wang T, Huang W, Zong H, Zhang Y. The Efficacy of Continuous Positive Airway Pressure Therapy on Nocturia in Patients With Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int Neurourol J. 2015;19(3):178-184. doi:10.5213/inj.2015.19.3.178. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4582090/
  • Tomitani N, Hoshide S, Kario K. Effect of Nocturia and Sleep Quality on Sleep Blood Pressure: The HI-JAMP Study. Hypertension. 2025;82:2150-2161. doi:10.1161/HYPERTENSIONAHA.125.25497. https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/HYPERTENSIONAHA.125.25497

当院で相談する目安

夜間に2回以上トイレに起きる方、いびきや無呼吸をご家族に指摘されている方、泌尿器科の治療を受けても夜のトイレが減らない方は、一度SASの検査をご検討ください。当院(野々市中央院)は野々市市・白山市・能美市など近隣の方に通いやすい立地で、SASの簡易検査からCPAP治療まで対応しています。土曜も診療しておりますので、平日お忙しい方もご相談いただけます。

夜のトイレが気になる方へ——まずは自宅でできるSAS簡易検査から始めてみませんか

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。

文責

中村 文保

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会 理事長)

日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医

公式サイト:胃と腸のことなら金沢消化器内科・内視鏡クリニック

当法人は金沢駅前に分院を開設いたしました。野々市院の予約が埋まっている場合は金沢院の予約もご確認してください。
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