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逆流性食道炎の薬一覧|商品名・漢方・副作用まで消化器専門医が解説

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逆流性食道炎の薬を商品名で整理|PPI・P-CAB・漢方薬の使い分けを解説

「処方された薬の名前をインターネットで調べてみたけれど、一般名と商品名が入り混じっていてよく分からない」——診察室でもこうした声を耳にします。逆流性食道炎の治療には複数のカテゴリーの薬が使われるため、ご自身が飲んでいる薬がどの分類に当たるのか把握しておくと、治療への理解が深まります。この記事では、処方薬の一般名と商品名の対応を表で整理し、漢方薬の位置づけや副作用の注意点までまとめました。

この記事で分かること

  • PPI・P-CAB・H2ブロッカーなど胃酸分泌抑制薬の一般名と商品名の対応
  • 粘膜保護薬・消化管運動改善薬・制酸薬の役割と代表的な薬剤
  • 六君子湯・半夏瀉心湯など漢方薬がGERD治療で担う役割
  • 長期服用時に気をつけたい副作用と医師への相談ポイント
  • 市販のH2ブロッカーやPPI(要指導医薬品)と処方薬の違い

 

胃酸を抑える薬の種類と商品名

PPI(プロトンポンプ阻害薬)——治療の基本となる薬

PPIは胃壁細胞にあるプロトンポンプを阻害し、胃酸の分泌を強力に抑えます。GERD診療ガイドライン2021でも第一選択薬として位置づけられています。日本で逆流性食道炎に使用できるPPIは以下の4成分です。

一般名主な商品名特徴
オメプラゾールオメプラールPPI第一世代。長年の使用実績がある
ランソプラゾールタケプロンOD錠(口腔内崩壊錠)があり、水なしでも服用しやすい
ラベプラゾールパリエットCYP2C19の遺伝子多型の影響を比較的受けにくいとされる
エソメプラゾールネキシウムオメプラゾールのS体。安定した血中濃度が得られやすい

PPIは腸溶製剤のため、噛み砕かずに服用してください。効果が安定するまで数日かかる場合があります。

P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)——より速効性の高い新しい薬

P-CABは胃酸による活性化を必要とせず、初回から強い酸分泌抑制効果を発揮します。食事の影響も受けにくいのが利点です。

一般名主な商品名特徴
ボノプラザンタケキャブPPIで効果不十分な症例にも有効性が報告されている。逆流性食道炎では通常1回20mgを1日1回、4〜8週間服用

P-CABの登場で治療の選択肢が広がりましたが、すべての患者さんにP-CABが最適とは限りません。症状の程度や再発リスク、費用面などを考慮して医師が使い分けています。

H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)

ヒスタミンH2受容体を遮断して胃酸分泌を抑えます。PPIほど強力ではありませんが、効果の発現が比較的速い特徴があります。

一般名主な商品名備考
ファモチジンガスター市販薬(ガスター10)にも同成分あり
ニザチジンアシノン消化管運動促進作用も報告されている
ラフチジンプロテカジンカプサイシン感受性神経を介した粘膜保護作用がある

軽症の逆流性食道炎や、PPI・P-CABを使うほどではない症状に対して処方されるケースがあります。

 

胃や食道の粘膜を守る薬と消化管の動きを助ける薬

粘膜保護薬——傷ついた粘膜の修復をサポート

一般名主な商品名特徴
アルギン酸ナトリウムアルロイドG海藻由来の成分で食道粘膜を物理的に保護する。逆流性食道炎に保険適用あり
スクラルファートアルサルミン潰瘍面に付着して保護膜を形成する
レバミピドムコスタ粘膜の血流を増やし、粘液分泌を促進する

粘膜保護薬は胃酸分泌抑制薬と組み合わせて使われることが多く、単独で逆流性食道炎の炎症を十分に抑える力はありません。「主役」ではなく「サポート役」と考えてください。

消化管運動機能改善薬——胃の動きを整えて逆流を減らす

一般名主な商品名特徴
モサプリドガスモチンセロトニン5-HT4受容体を刺激し、胃・食道の蠕動運動を促進する。GERD診療ガイドライン2021ではPPI抵抗性GERDへの追加投与が言及されている
アコチアミドアコファイドアセチルコリンエステラーゼを阻害し、胃の運動機能を改善する。適応は機能性ディスペプシアだが、GERDに胃もたれなどが併存する場合に併用されることがある

胃の中の食べ物が早く先へ送られれば、逆流が起こりにくくなります。胃もたれや膨満感が強い方には消化管運動機能改善薬が有効な場合があります。

制酸薬——即効性のある一時的な症状緩和

水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム配合剤(マーロックスなど)や炭酸水素ナトリウムなどが該当します。胃酸を直接中和するため効果はすぐ現れますが、持続時間は短めです。急に胸焼けが起きたときの頓用として処方されることがあります。

プロスタグランジン製剤

ミソプロストール(商品名:サイトテック)は胃粘膜を保護しつつ胃酸分泌も抑える薬です。主にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)による胃粘膜障害の予防に使われます。逆流性食道炎に対して単独で処方されることはまれですが、NSAIDsを長期内服している方で逆流症状がある場合に選択肢となることがあります。妊娠中または妊娠の可能性がある方には使用できない点に注意が必要です。

 

漢方薬という選択肢|PPI・P-CABとの併用で期待される効果

GERD診療ガイドライン2021での漢方薬の位置づけ

GERD診療ガイドライン2021(日本消化器病学会)では、常用量のPPIで効果が不十分な場合に六君子湯の追加投与を「行うことを提案する」(弱い推奨・エビデンスC)としています。P-CAB抵抗性GERDに対しても、六君子湯の追加が選択肢として言及されています。

漢方薬は胃酸を抑える薬とは異なるメカニズムで消化管の機能を整えるため、胃酸分泌抑制薬だけでは取りきれない症状に対して上乗せ効果が期待されます。

逆流性食道炎で使われる代表的な漢方薬

漢方薬名商品名の例主な適応症状
六君子湯(りっくんしとう)ツムラ六君子湯エキス顆粒(ツムラ43番)胃もたれ、食欲不振、みぞおちのつかえ。グレリン(食欲ホルモン)の分泌を促す作用が報告されている。サブ解析では女性、低BMI(やせ型)、高齢者で症状やQOLの改善が示唆されている
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)ツムラ半夏瀉心湯エキス顆粒(ツムラ14番)げっぷ、胸焼け、みぞおちのつかえ。PPI抵抗性GERDへの併用でPPI倍量と同等の症状改善が認められたとする報告がある
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒(ツムラ16番)のどの異物感(咽喉頭異常感)、咳、しわがれ声。ストレスや不安が強い方に使われることが多い
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)ツムラ茯苓飲合半夏厚朴湯エキス顆粒(ツムラ116番)胃の内容物が停滞しやすくげっぷ・膨満感・のどのつかえ感がある方。胃排出促進作用と抗不安作用を併せ持つ

漢方薬は体質(漢方でいう「証」)によって効果の出方が異なります。同じ逆流性食道炎でも、体格や冷え・ストレスの程度で処方が変わるため、自己判断で市販の漢方薬を選ぶよりも医師に相談したほうが効率的です。

なお、当院では西洋薬と漢方薬の併用についても対応しています。「PPI(またはP-CAB)を飲んでいるが症状が残る」という方は、遠慮なくお伝えください。

 

薬の副作用と長期服用で注意したいこと

PPI・P-CABの長期服用に関する報告

PPI・P-CABは安全性の高い薬ですが、長期間にわたって服用する場合にはいくつかの点が指摘されています。腸管でのカルシウムやマグネシウムの吸収が低下する可能性、腸内細菌叢への影響などが海外の大規模観察研究で報告されています。ただし、これらは「リスクが統計的にわずかに高まる」という報告であり、薬を中止すべきかどうかは個々の患者さんの症状やリスクとの兼ね合いで判断します。

「副作用が心配だから」と自己判断で薬をやめると、炎症が再燃して結果的に治療期間が長引くこともあります。不安があれば、まず担当医に相談してください。

H2ブロッカーや漢方薬で気をつけたいこと

H2ブロッカーは比較的副作用が少ない薬ですが、高齢の方ではまれにせん妄(一時的な意識の混乱)が報告されています。腎機能が低下している方は用量の調整が必要です。

漢方薬は「自然由来だから安全」というイメージを持たれがちですが、甘草を含む処方(半夏瀉心湯・六君子湯など)では偽アルドステロン症(低カリウム血症、むくみ、血圧上昇)に注意が必要です。ほかの薬や別の漢方薬と甘草が重複していないか、医師や薬剤師がチェックしています。

 

市販薬でどこまで対処できるか

ドラッグストアで購入できる薬と処方薬の違い

市販のH2ブロッカー(ガスター10など)は胸焼けの応急処置に役立ちますが、処方薬と比較すると用量が低めに設定されており、中等度以上の逆流性食道炎には力不足なことがあります。

2025年8月以降は、PPI成分を含む市販薬(オメプラールS、タケプロンsなど)も要指導医薬品として薬局で購入できるようになりました。ただし、購入時に薬剤師の対面説明が必要であること、処方薬に比べて用量や適応の範囲が限られることから、「市販薬=処方薬の代わり」ではない点を押さえておいてください。P-CAB(ボノプラザン)に相当する成分の市販薬は現時点で販売されていません。

「市販薬で1〜2週間様子を見ても改善しない」「いったん治まってもすぐにぶり返す」という場合は、食道の炎症が思った以上に進んでいる可能性があります。胃カメラ検査で食道の状態を確認したうえで、適切な処方薬に切り替えることをお勧めします。

当院の既存の解説ページでは、各薬剤分類の作用機序についてさらに詳しく紹介しています。薬の働きをもう少し深く知りたい方は、以下のページもあわせてご覧ください。

 

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よくある質問

Q. タケキャブとネキシウムはどちらが効きますか?
A. タケキャブ(P-CAB)は初回から速やかに効果が出やすく、ネキシウム(PPI)は長年の使用実績があります。炎症の程度や再発リスク、費用などを総合的に考慮して医師が判断しますので、気になる方は診察時にお尋ねください。
Q. 漢方薬だけで逆流性食道炎を治せますか?
A. 食道にびらんがある場合は、まず胃酸分泌抑制薬(PPIまたはP-CAB)で炎症を抑えることが基本です。漢方薬は胃酸分泌抑制薬と併用して症状の上乗せ効果を期待する位置づけであり、単独での治療は一般的ではありません。
Q. PPIを長期間飲み続けても大丈夫ですか?
A. 再発を繰り返す場合は維持療法として長期服用が必要になることがあります。カルシウムやマグネシウムの吸収低下などのリスクが指摘されていますが、治療のメリットとのバランスで判断します。自己判断で中断せず、定期的に医師と相談してください。
Q. 市販のガスター10やオメプラールSで症状が治まりました。受診は不要ですか?
A. 症状が一時的に治まっても、食道の炎症が残っている場合があります。胸焼けが繰り返し起きる方は一度胃カメラ検査で食道の状態を確認することをお勧めします。
Q. 六君子湯はどのくらい飲めば効果が出ますか?
A. 一般的に2〜4週間ほど服用を続けて効果を判定します。漢方薬は体質に合わないと効きにくいこともあるため、数週間で改善が感じられない場合は処方の見直しを医師と相談してください。
Q. 複数の薬が処方されましたが、飲む順番に決まりはありますか?
A. 薬によって食前・食後・食間の指示が異なります。処方箋の指示が最優先ですので、不明点があれば薬局でご確認ください。漢方薬は一般的に食前または食間に服用します。
Q. 薬を飲んでいる間は食事制限もしたほうがいいですか?
A. 薬だけに頼るよりも、脂肪分の多い食事や就寝前の食事を控えるなどの生活習慣の見直しを並行したほうが再発率は下がります。当院では検査後に生活習慣の改善についてもご案内しています。

まとめ

逆流性食道炎の治療薬は、胃酸分泌を抑えるPPI・P-CAB・H2ブロッカーを中心に、粘膜保護薬、消化管運動改善薬、制酸薬、漢方薬と多くの選択肢があります。処方された薬の商品名と一般名の対応を知っておくと、ご自身の治療内容を理解しやすくなり、医師や薬剤師とのコミュニケーションもスムーズになります。

PPIやP-CABで症状が十分に改善しない場合には六君子湯や半夏瀉心湯などの漢方薬の併用も検討できます。市販薬もH2ブロッカーやPPI(要指導医薬品)が利用可能ですが、炎症の程度によっては処方薬での治療が必要です。胸焼けやげっぷが2週間以上続く方は、早めに消化器内科でご相談ください。

 

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参考文献

  1. 日本消化器病学会 編.「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版)」南江堂, 2021.
  2. Tominaga K, Iwakiri R, Fujimoto K, et al. "Rikkunshito improves symptoms in PPI-refractory GERD patients: a prospective, randomized, multicenter trial in Japan." J Gastroenterol, 2012;47(3):284-292. DOI: 10.1007/s00535-011-0488-5
  3. Takeuchi T, Hongo H, Kimura T, et al. "Efficacy and safety of hangeshashinto for treatment of GERD refractory to proton pump inhibitors." J Gastroenterol, 2019;54(11):972-983. DOI: 10.1007/s00535-019-01588-4
  4. Zhou X, Duan H, Li Q, Wang Q, Sun X. "Efficacy and safety of potassium-competitive acid inhibitors in the treatment of gastroesophageal reflux: a systematic review and meta-analysis." Scand J Gastroenterol, 2024;59(7):788-797. DOI: 10.1080/00365521.2024.2349638
  5. 日本東洋医学会 EBM委員会「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021 漢方製剤の記載抽出」http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/cpg/pdf/Issue/TypeA/20210430_2.pdf

当院で相談する目安

「市販薬を飲んでも胸焼けが治まらない」「薬をやめるとすぐに症状が再発する」「処方された薬の副作用が気になる」——こうしたお悩みがある方は、消化器内科の専門医に一度ご相談ください。当院(野々市中央院)は土曜の内視鏡検査にも対応しており、女性医師による検査も承っています。野々市市・白山市・能美市など近隣にお住まいの方はもちろん、ご家族で「健診で引っかかった」という方もお気軽にご来院ください。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。

文責

中村文保

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会理事長)

日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医

公式サイト:胃と腸のことなら金沢消化器内科・内視鏡クリニック

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