CT検査の被ばく量は本当に大丈夫?放射線の不安を正しく理解するために
「CT検査を受けてください」と言われたあと、帰り道にスマートフォンで「CT 被ばく」と検索した——当院にもそうした経験をお持ちの方がよくいらっしゃいます。放射線と聞くだけで漠然とした怖さを感じるのは、ごく自然なことです。この記事では、CT検査の被ばく量が実際どれくらいなのか、健康への影響をどう考えればよいのかを整理し、ご家族と一緒に安心して検査に臨めるようサポートします。
この記事で分かること
- CT検査1回あたりの被ばく量と、日常の放射線との比較
- 被ばくが健康に与える影響について、現在の医学的な考え方
- 当院で導入している低線量CTの特徴
- 検査を受けるか迷ったときに家族と確認したいポイント
CT検査とはどんな検査か——まず仕組みを知る
体の断面を画像化する仕組み
CT(Computed Tomography)は、体のまわりからX線を照射し、コンピュータで断面画像を作成する検査です。輪切りのように体の内部を映し出すため、レントゲン1枚では重なって見えにくい臓器の形や大きさ、血管の走行まで確認できます。撮影自体はおよそ10秒前後で終わり、検査中に痛みはありません。
レントゲンとの違い
胸部レントゲンは1方向からの投影で、被ばく量は約0.06〜0.1mSv程度とされています(環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」)。一方、CT検査では複数方向からX線を照射するため、得られる情報量が格段に多い代わりに被ばく量も増えます。ただし「被ばく量が多い=危険」と直結するわけではなく、検査で得られる診断のメリットとのバランスで医師が必要性を判断しています。
CT検査の被ばく量はどれくらい?——数値で見る目安
部位ごとの被ばく量の目安
CT検査1回あたりの被ばく量は、撮影する部位や装置の設定、体格によって幅があります。一般的な目安として、胸部CTで約5〜7mSv程度、腹部CTで約10mSv前後(数mSv〜十数mSv)と報告されています。日本では、医療被ばくの最適化を目的として「診断参考レベル(DRL)」が設定されており、各医療機関はこの数値を参考に撮影条件を管理しています(J-RIME, Japan DRLs 2025)。
身近な放射線と比べてみると
私たちは普段の生活でも放射線を浴びています。宇宙線や大地、食物に含まれる放射性物質などによる自然放射線の量は、世界平均で年間約2.4mSvです。日本では年間約2.1mSvとされています(環境省資料・UNSCEAR)。東京〜ニューヨーク間を飛行機で往復すると約0.1〜0.2mSvの宇宙線を受けるとされています。
つまり、腹部CT1回の被ばく量は自然放射線のおよそ4〜5年分にあたる計算です。「数年分」という表現から受ける印象ほど特別な量ではない、というのが放射線防護の専門家の考え方です。
被ばくによる健康への影響——「がんになるの?」という不安に向き合う
低線量の被ばくとがんリスクについて
広島・長崎の原爆被爆者に関する大規模調査から、100mSvを超える被ばくではがんのリスクが上昇することが確認されています。一方、CT検査で受けるような数mSv〜数十mSvの線量域では、がんリスクとの関係について科学的な不確実性が大きく、研究間でも結論が分かれています。
WHOのファクトシートでは、100mSv超で有意ながんリスク増加が認められるとしたうえで、小児CTなど50〜100mSvの領域でもリスク増加を示唆する疫学研究があると言及しています(WHO, Ionizing radiation and health effects)。国際放射線防護委員会(ICRP)は、安全側に立った防護基準として「どんなに少ない線量でもリスクはゼロではない」と仮定する直線しきい値なし(LNT)モデルを採用しています(ICRP Publication 103)。これはあくまで防護の考え方であり、「少しでも被ばくすればがんになる」という意味ではありません。
リスクの大きさを考える
2025年に発表された研究(Smith-Bindman R, et al. JAMA Internal Medicine, 2025)では、現在のCT利用状況から将来のがんリスクを推計しています。その結果、CT検査による追加のリスクは、個人レベルでは小さいと見積もられました。検査によって病気を早期に発見できるメリットと被ばくのリスクを比較し、メリットが上回ると医師が判断した場合にCTが実施されます。
当院の低線量CT——被ばくを抑える工夫
野々市中央院のCT機器
当院(野々市中央院)では、Canon Aquilion Lightning / Helios i Edition(80列)を導入しています。AI技術を搭載した画像再構成により、少ないX線量でも診断に必要な画質を確保できる設計です。撮影時間も短く、息止めの負担が軽い点も特徴です。
検査後の結果説明
撮影が終わったら、当日中に医師から簡易的な結果説明を行います。後日、放射線科専門医による読影結果を改めてお伝えしますので、「検査を受けたのに結果がわからないまま不安が続く」という状況を防ぐよう配慮しています。
家族と一緒に確認したい——検査前のチェックポイント
妊娠の可能性がある場合
妊娠中または妊娠の可能性がある方は、検査前に必ず医師へお伝えください。通常の腹部CTで胎児が受ける線量は数mGy程度と報告されており、100mGyを超えることは極めてまれです(ICRP・ACOG)。ただし、妊娠中は不必要な被ばくを避けることが原則のため、超音波検査やMRIで代用できないかを先に検討します。
繰り返しCTを受ける方へ
経過観察で短期間にCTを複数回受ける場合は、累積被ばく量が気になるかもしれません。こうしたケースでは、MRIへの切り替えやCT撮影条件の最適化など、医師と相談しながら被ばくを最小限に抑える方法を検討します。「何回までなら安全」という一律の基準はありませんが、検査が必要な理由とリスクのバランスを個別に判断しています。
「被ばくが怖いから検査を受けたくない」と思ったら
その気持ちは率直に医師へ伝えてください。エコーやMRIで代用できる場合もあれば、CTでなければ見つけにくい病態もあります。検査を受けないことで病気の発見が遅れるリスクと、被ばくのリスクを天秤にかけ、一緒に最善の選択肢を考えます。
参考文献
※本記事テーマに関連する主な参考資料
- International Commission on Radiological Protection (ICRP). ICRP Publication 103: The 2007 Recommendations of the International Commission on Radiological Protection. Ann ICRP. 2007;37(2-4). doi: 10.1016/j.icrp.2007.10.003
- 医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME). 日本の診断参考レベル(2025年版). 2025. https://j-rime.qst.go.jp/report/JapanDRLs2025_ja.pdf
- Smith-Bindman R, et al. Projected Lifetime Cancer Risks From Current Computed Tomography Imaging. JAMA Internal Medicine. Published Online Apr 14, 2025. doi: 10.1001/jamainternmed.2025.0505
- 環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」(自然・人工放射線からの被ばく線量) https://www.env.go.jp/chemi/rhm/current/02-05-03.html
- World Health Organization (WHO). Ionizing radiation and health effects. Fact sheet. 2023. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/ionizing-radiation-and-health-effects
よくある質問
- Q. CT検査1回で受ける被ばく量は、どのくらいの期間の自然放射線に相当しますか?
- A. 撮影部位や装置により異なりますが、腹部CTの場合、自然放射線(日本平均 年間約2.1mSv)のおよそ4〜5年分程度に相当するとされています。この量で健康被害が生じる可能性は極めて低いと考えられています。
- Q. 子どもにCT検査を受けさせるのが心配です。配慮はありますか?
- A. 小児は放射線への感受性が成人より高いとされるため、検査の必要性をより慎重に判断します。撮影条件の最適化や、エコー・MRIで代用できないかの検討も行いますので、不安があれば遠慮なくご相談ください。
- Q. CT検査のあと、家族と接触しても問題ありませんか?
- A. CT検査で使うのはX線であり、検査後に体から放射線が出ることはありません。検査直後からご家族との接触に制限は一切ありません。
- Q. 半年前にもCTを受けました。続けて受けて大丈夫ですか?
- A. 医学的に必要と判断された検査であれば、短期間に複数回受けても通常問題にはなりません。ただし不必要な検査を避けることは大切ですので、撮影の必要性は医師が都度判断します。
- Q. 野々市中央院のCTは被ばく量が少ないのですか?
- A. 当院ではCanon Aquilion Lightning / Helios i Edition(80列)を導入しており、AI技術による画像再構成で低線量でも診断に必要な画質を確保しています。ただし、被ばく量は撮影条件や体格によって変動するため、「何mSv」と一律にお伝えすることは難しい点をご了承ください。
- Q. 被ばくが心配なのでMRIに変えてもらえますか?
- A. 症状や疑われる疾患によっては、MRIやエコーで代用できる場合もあります。一方、CTでなければ正確に診断できない病態もあるため、ご希望は遠慮なくお伝えいただいたうえで、医師と一緒に最適な検査を選びましょう。
まとめ
CT検査の被ばく量は部位や条件によって異なりますが、一般的には数mSv〜十数mSv程度であり、通常の検査で健康被害が生じる可能性は極めて低いと考えられています。国際的な放射線防護の基準でも、CT検査レベルの被ばくで確定的な障害(脱毛・皮膚障害など)が起こる水準にはまったく及びません。低線量域のがんリスクについては科学的な不確実性が残りますが、検査で得られる早期診断のメリットのほうが大きいと判断されるケースがほとんどです。
不安を抱えたまま検査を先延ばしにすると、病気の発見が遅れるリスクのほうが大きくなることもあります。ご家族と一緒に「なぜこの検査が必要なのか」を医師に確認し、納得したうえで受けることが大切です。気になる症状がある方や、健診で精密検査を勧められた方は、お早めに消化器内科へご相談ください。
当院で相談する目安
健康診断や人間ドックで「要精密検査」「CT検査を受けてください」と指摘された方は、早めの受診をおすすめします。腹痛や背中の痛みが続いている方、便に血が混じる方、原因不明の体重減少がある方も、消化器内科で相談してみてください。野々市中央院ではAI搭載の80列CTを導入しており、土曜の検査にも対応しています。女性医師による診察も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。






