急性虫垂炎はCTでわかる?診断精度と受診の判断基準
「右下腹部がずっと痛い」「盲腸かもしれない」――そんな不安を抱えて検索されている方は少なくありません。急性虫垂炎(いわゆる盲腸)は、早期に診断して適切な治療につなげることが大切な疾患です。この記事では、CTによる急性虫垂炎の診断精度、超音波検査や血液検査との違い、受診すべき症状の目安を、消化器専門医の立場から解説します。
この記事のポイント
- CTの急性虫垂炎に対する診断精度は感度90〜100%、特異度91〜99%、正診率94〜98%(複数の前向き研究のレビュー)
- 超音波検査は感度86%前後・特異度86〜95%で、体型や腸管ガスの影響を受けやすい
- 血液検査では白血球上昇率が80〜85%程度にとどまり、正常値でも虫垂炎は否定できない
- 右下腹部痛が持続する・発熱がある・痛みが移動するなどの症状は当日受診が望ましい
- CTと血液検査の結果は当日中に説明できることが多い
急性虫垂炎(盲腸)とは
虫垂は盲腸の先端から突出する長さ6〜9 cm程度の管状臓器です。虫垂の内腔が糞石やリンパ組織の腫大で閉塞すると、内部で細菌が増殖して炎症が起こります。これが急性虫垂炎です。進行すると虫垂壁が壊死し穿孔(穴が開くこと)を起こすと腹膜炎に至る可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。
発症頻度は生涯で約7〜8%とされ、10〜30代に多いものの、あらゆる年齢で発症します。典型例ではみぞおちの痛みから始まり、数時間かけて右下腹部(マクバーニー点付近)に痛みが移動する経過をたどりますが、非典型例も少なくなく、症状だけでの判断には限界があります。
CTによる急性虫垂炎の診断精度
急性虫垂炎が疑われる場合に最も信頼性の高い画像検査がCTです。ヘリカルCTを用いた複数の前向き研究(1993〜2002年)の報告値をまとめると、CTの診断精度レンジは以下のとおりです。
| 指標 | 報告レンジ | 出典 |
|---|---|---|
| 感度 | 90〜100% | Rao 1997, Lane 1999, Jacobs 2001 ほか複数の前向き研究(AJR 2003; 181: 1355–1359 にレビュー) |
| 特異度 | 91〜99% | 同上 |
| 正診率 | 94〜98% | 同上 |
| 陽性適中率 | 92〜98% | 同上 |
| 陰性適中率 | 95〜100% | 同上 |
ただし、上記は大学病院やCT読影専門医による条件での報告値が中心です。一般市中病院での検証ではこれより低い精度が報告されることもあり(同AJR 2003のDiscussionで正診率78%の報告あり)、施設の読影体制によって差が出る点には留意が必要です。
造影CTと非造影CTの精度差については、Shaish et al.(JAMA Surgery 2023)が救急外来の急性腹痛全般を対象とした研究で、非造影CTの診断精度が造影CTに比べ約30%低いと報告しています。なお、この研究は虫垂炎に限定した検討ではなく急性腹痛全般が対象です。臨床では患者の腎機能やアレルギー歴を踏まえて造影の要否を判断します。
CTで確認する虫垂炎の所見
| CT所見 | 意味 |
|---|---|
| 虫垂径 > 6 mm | 虫垂の腫大(正常は6 mm以下が目安だが、正常でも超える場合がある) |
| 壁肥厚・造影増強 | 炎症による虫垂壁の変化 |
| 周囲脂肪織混濁 | 炎症が虫垂周囲の脂肪に波及 |
| 虫垂糞石 | 虫垂内の石灰化した便の塊(閉塞の原因となりうるが、偶発的に存在することもある) |
| 虫垂周囲液体貯留 | 炎症に伴う浸出液 |
| 壁内ガス・造影欠損 | 壊疽性虫垂炎(穿孔リスクが高い) |
これらの所見を組み合わせることで、虫垂炎の有無だけでなく、重症度(単純性か複雑性か)の評価も可能です。穿孔を伴う場合は膿瘍形成や遊離ガスが認められることがあります。なお、虫垂径6 mm超や糞石の存在だけでは虫垂炎とは断定できず、複数の所見を総合して判断します。
超音波検査の位置づけ
超音波検査は被ばくがなく、繰り返し実施できる検査です。虫垂が描出できれば、腫大(径7 mm以上)や壁の層構造の変化をリアルタイムで確認できます。しかし、感度は86%前後、特異度は86〜95%とCTに比べてやや低く、体型・腸管ガス・検査者の技量による影響を受けやすいという特徴があります。
小児や妊婦など放射線被ばくを避けたいケースでは第一選択となります。成人でも、まず超音波で虫垂の描出を試み、描出困難や診断確定に至らない場合にCTを追加するという段階的なアプローチが取られることがあります。
血液検査の役割と限界
急性虫垂炎を疑う場合、白血球数(WBC)とCRP(C反応性タンパク)が基本的な検査項目です。白血球数は虫垂炎患者の80〜85%で上昇しますが、裏を返せば15〜20%は正常値を示します。特に発症早期はCRPがまだ上昇していないこともあるため、血液検査が正常でも虫垂炎は否定できません。
血液検査はあくまで炎症の有無や全身状態の把握を目的とした補助的な位置づけであり、確定診断にはCTなどの画像検査が必要です。
検査方法の比較
| 検査 | 感度 | 特異度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 腹部CT | 90〜100% | 91〜99% | 最も信頼性が高い。重症度評価・他疾患の除外にも有用。施設の読影体制で精度に差が出る |
| 超音波検査 | 86%前後 | 86〜95% | 被ばくなし。小児・妊婦で第一選択。体型・ガス・検査者の技量で変動しやすい |
| 血液検査(白血球・CRP) | WBC上昇率80〜85% | - | 補助的。正常値でも虫垂炎は否定できない |
こんな症状があれば受診を
当日受診を検討すべき症状
右下腹部の痛みが数時間以上続く、37.5℃以上の発熱を伴う腹痛がある、みぞおちから始まった痛みが右下腹部に移動した、吐き気・嘔吐がある、食欲がなく歩くと響くような腹痛がある──このような症状がある場合は、当日中に消化器内科を受診してください。
救急受診が必要な症状
腹部全体に広がる激しい痛み(腹膜炎の可能性)、お腹が板のように硬くなっている(筋性防御)、高熱(38.5℃以上)で全身状態が悪い、冷や汗・顔面蒼白・意識がぼんやりする──これらの症状は緊急性が高く、救急要請(119番)を検討してください。
受診から結果説明までの流れ
| ステップ | 内容 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 問診・診察 | 症状の経過、痛みの部位・性質、発熱・嘔吐の有無を確認。触診で圧痛点・筋性防御を評価 | 10〜15分 |
| 2. 血液検査 | 白血球数・CRP・肝胆道系酵素など。院内であれば30〜60分程度で結果判明 | 採血自体は数分 |
| 3. CT検査 | 虫垂の腫大・周囲脂肪織混濁・糞石・穿孔所見の有無を評価 | 撮影自体は数分 |
| 4. 結果説明 | CT画像と血液検査の結果をもとに診断・治療方針を説明 | 10〜15分 |
CT画像は撮影直後に確認でき、血液検査も院内であれば当日中に結果説明できることが多いです。ただし、施設の混雑状況や造影剤使用の有無によって所要時間は変動します。虫垂炎と診断された場合は、重症度に応じて抗菌薬治療または外科的治療(手術)の方針を検討し、必要に応じて手術対応可能な医療機関へ紹介いたします。
参考文献
※本記事テーマに関連する主な参考資料
- Defined B, et al. Comparison of CT and Sonography in the Diagnosis of Acute Appendicitis: A Blinded Prospective Study. AJR Am J Roentgenol. 2003;181(5):1355-1359.(AJR)──本記事のCT診断精度レンジ(感度90–100%、特異度91–99%、正診率94–98%)の出典
- 急性腹症診療ガイドライン2025 第2版.急性腹症診療ガイドライン2025改訂出版委員会(編).医学書院,2025.DOI: 10.11477/9784260657730
- Mindsガイドラインライブラリ「急性腹症診療ガイドライン2015」(Minds)
- Shaish H, et al. Contrast-enhanced vs Unenhanced CT for Initial Evaluation of Patients Presenting to the Emergency Department With Acute Abdominal Pain. JAMA Surgery. 2023. DOI: 10.1001/jamasurg.2023.1112──急性腹痛全般が対象(虫垂炎限定ではない)
- Lau HT, et al. Early routine (erCT) versus selective CT (sCT) for acute abdominal pain. International Journal of Surgery. 2022. DOI: 10.1016/j.ijsu.2022.106622
- Kambadakone AR, et al. ACR Appropriateness Criteria® Right Lower Quadrant Pain──2022 Update. Journal of the American College of Radiology. 2022.(Full text)
- Di Saverio S, et al. Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines. World J Emerg Surg. 2020;15:27.(PubMed)
- D'Souza N, et al. Systematic review of the diagnostic accuracy of imaging and biomarkers for acute appendicitis. Annals of Surgery. 2021.
- Kim DW, et al. A meta-analysis of the diagnostic performance of CT for acute appendicitis. Korean Journal of Radiology. 2021.
よくある質問
- Q. 急性虫垂炎のCT診断精度はどのくらいですか?
- A. 複数の前向き研究のレビューでは、感度90〜100%、特異度91〜99%、正診率94〜98%と報告されています。ただし、読影体制によって精度に差が出ることがあり、虫垂の腫大・壁肥厚・周囲脂肪織混濁などの所見を総合的に評価します。
- Q. 超音波検査だけでは不十分ですか?
- A. 超音波検査は感度86%前後・特異度86〜95%とされますが、体型や腸管ガスの影響で虫垂が描出できないこともあり、施設間・検査者間の差が生じやすい検査です。描出困難な場合にはCTで補完するのが一般的です。
- Q. どのような症状があれば受診すべきですか?
- A. 右下腹部痛が数時間以上持続する、37.5℃以上の発熱を伴う、痛みが移動する(みぞおち→右下腹部)、吐き気・嘔吐がある場合は、当日中の受診を検討してください。
- Q. 血液検査だけで急性虫垂炎と診断できますか?
- A. 白血球数やCRPの上昇は虫垂炎の補助所見になりますが、白血球が上昇する割合は80〜85%程度であり、正常値でも虫垂炎を否定できません。診断にはCTなどの画像検査が必要です。
- Q. 検査結果はいつわかりますか?
- A. CT画像は撮影直後に確認でき、血液検査も院内であれば当日中に結果説明できることが多いです。ただし、混雑状況や造影剤使用の有無によって所要時間は変動します。
- Q. CTの放射線被ばくは心配ないですか?
- A. 腹部CTの被ばく量は、検査で得られる診断上のメリットと比較して十分に許容される範囲とされています。妊娠中の方や被ばくへの配慮が必要な場合は、超音波検査を先行させるなど個別に対応します。
- Q. 虫垂炎と診断されたら必ず手術になりますか?
- A. 軽症(単純性虫垂炎)であれば抗菌薬のみで治療するケースもあります。ただし、穿孔や膿瘍形成を伴う複雑性虫垂炎では手術が必要です。治療方針は重症度をもとに医師が判断します。
右下腹部の痛み・発熱が気になったら、まずは専門医にご相談ください
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