CTとEUS(超音波内視鏡)はどう違う?膵臓検査の特徴と選び方
健診で「膵臓に嚢胞がある」と言われた方、ご家族が膵臓の病気にかかった経験がある方から「CTと超音波内視鏡(EUS)のどちらを受ければいいですか」と聞かれることが増えています。結論から言うと、この2つは「どちらが上」ではなく役割が違う検査です。この記事では、それぞれの強みと弱みを比較しながら、どんな場面でどちらを選ぶのかを整理します。
この記事のポイント
- CTは膵臓と周囲の臓器・血管を短時間でまとめて評価できる検査、EUSは膵臓を至近距離から高精細に観察する検査です
- 2005年のメタ解析では、造影CTの膵臓がん検出感度は91%、腹部超音波は76%と報告されています(Bipat S, et al. J Comput Assist Tomogr 2005)
- EUSは小さな病変の検出に優れ、組織採取(EUS-FNA)も同時に行えます
- 当院ではCT検査を院内で実施しています。EUSが必要な場合は専門施設へご紹介します
膵臓の検査でCTとEUSが使い分けられる背景
なぜ腹部エコーだけでは足りないことがあるのか
膵臓は胃の後ろ側、背骨の前面に位置する長さ約12〜15 cmの細長い臓器です。周囲を胃や十二指腸、大腸に囲まれているため、一般的な腹部超音波検査(腹部エコー)では腸管ガスや体格の影響で膵臓全体を見渡せないことがあります。2005年に発表されたメタ解析(Bipat S, et al.)では、腹部超音波の膵臓がんに対する感度は76%、特異度は75%でした。この数字は「およそ4人に1人が見逃される可能性がある」ことを意味します。
そこで、膵臓を詳しく調べる必要があるときに登場するのがCT検査とEUS検査です。
CTとEUS、それぞれの仕組み
CT(コンピュータ断層撮影)はX線を使って体の断面画像を作成します。膵臓の精査では、造影剤を静脈に注入しながら複数のタイミングで撮影する「造影ダイナミックCT」(多相撮影)が標準です。膵臓だけでなく肝臓、周囲の血管、リンパ節まで一度に写し出せるのが大きな特徴です。
EUS(Endoscopic Ultrasonography:超音波内視鏡)は、先端に小さな超音波装置を搭載した内視鏡です。口から挿入して胃や十二指腸の内壁越しに膵臓へ超音波を当てるため、体表からのエコーでは拾えない細かい構造まで描出できます。
CTが得意なこと・EUSが得意なこと
造影CTの強み
造影ダイナミックCTは膵癌診療ガイドライン2022でも膵臓がんが疑われる際の中心的な画像検査として位置づけられています。その根拠となるBipat S(2005年)のメタ解析では、ヘリカルCTの膵臓がん検出感度は91%、特異度は85%でした。このメタ解析には2005年以前の機器で撮影された研究も含まれている点には留意が必要ですが、現行のマルチスライスCTではさらに精度が上がっているという見方が一般的です。
CTの利点は「広さ」です。膵臓全体を均一に描出でき、腫瘍の位置や大きさだけでなく、門脈・上腸間膜動脈といった主要血管との関係、肝臓への転移の有無、リンパ節腫大までまとめて評価できます。手術で切除できるかどうかの判断にも直結する情報です。撮影自体は数分で終了し、準備を含めた院内滞在時間はおおむね30〜60分です(施設の混雑状況で前後します)。
造影CTの弱み
1 cm未満の膵臓がんや、正常な膵組織と造影効果の差が乏しい「等吸収域」の腫瘍はCTで見つけにくいことがあります。こうした等吸収域の腫瘍は膵臓がん全体の約5〜10%に及ぶという報告もあり(Korean J Radiol 2020)、CTだけですべてを拾いきるのは難しい場面がある、というのが率直なところです。また、造影剤のアレルギー歴がある方や腎機能が低下している方は造影CTを受けられない場合があります。放射線被ばくを伴う点も考慮が必要です。
EUSの強み
EUSの最大の持ち味は「近さ」と「分解能」です。胃や十二指腸の壁越しに膵臓へ超音波を当てるので、腸管ガスの干渉をほとんど受けません。CTで拾えなかった数ミリの病変がEUSで見つかるケースは臨床でしばしば経験されます。
2012年にCantoらが報告した高リスク者の監視研究(Gastroenterology 2012;142:796-804)では、無症状の高リスク者225人に対してCT・MRI・EUSを同時に実施したところ、何らかの膵病変が検出された割合はCTが11%、MRIが33.3%、EUSが42.6%でした。この結果はEUSが小さな病変を拾い上げる力に優れることを裏付けています。
もう一つ、CTにはない大きな強みがあります。EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引術)といって、EUSで膵臓を観察しながら直接針を刺し、組織を採取できます。この手技の統合感度は89〜92%、統合特異度は96〜96.5%と報告されており(日本消化器内視鏡学会 EUS-FNAガイドライン, 消化器内視鏡 2024;66:1739-1806)、膵臓がんの確定診断において中心的な役割を担っています。
EUSの弱みと注意点
EUSは内視鏡を口から挿入する検査です。通常の胃カメラよりスコープの外径がやや太い機種が多く、鎮静剤を使うのが一般的です。検査後1〜2時間は院内で安静にしていただき、当日は車の運転ができません。施設によりますが、来院から帰宅まで含めると半日程度を見込む必要があります。また、EUSの観察範囲は膵臓とその近傍に限られるため、肝転移や遠方のリンパ節転移を調べるにはCTやMRIが欠かせません。実施できる施設も限られます。
CT検査とEUS検査の比較一覧
| 項目 | 造影CT | EUS(超音波内視鏡) |
|---|---|---|
| 原理 | X線による断層撮影 | 内視鏡先端の超音波で至近距離から観察 |
| 膵臓がん検出感度 | 91%(Bipat 2005 メタ解析) | 小病変の拾い上げに優位(高リスク者で検出率42.6%:Canto 2012) |
| 観察範囲 | 膵臓全体+肝臓・血管・リンパ節・遠隔転移 | 膵臓を中心とした近接領域 |
| 組織の採取 | 不可 | 可能(EUS-FNA/FNB) |
| 検査時間の目安 | 撮影数分(院内滞在30〜60分程度) | 10〜60分(鎮静後の安静時間は別途) |
| 身体への負担 | 造影剤の静脈注射 | 内視鏡挿入+鎮静剤 |
| 被ばく | あり | なし |
| 費用目安(3割負担) | 約8,000〜10,000円程度 ※部位・加算により変動 | 約5,000〜7,000円程度 ※組織採取は別途加算 |
| 実施できる施設 | 多くの医療機関 | 専門施設に限られる |
※費用は保険適用・3割負担の場合の概算です。初診料・血液検査・他の画像検査費用は含みません。施設や検査内容で前後します。
「CTだけで大丈夫?」──追加検査が検討される場面
CTに異常がなくても精査が続くケース
CTの感度は高い水準にありますが、先に触れたとおり、1 cm未満の腫瘍や等吸収域の病変は見逃される場合があります。腫瘍マーカー(CA19-9など)が持続的に高値を示している、膵管拡張が続いている、膵嚢胞のなかに壁在結節が疑われる──こうした場合には、CTで明確な腫瘤が見えていなくてもEUSで詳しく調べることが検討されます。
反対に、EUSだけで膵臓の検査がすべて完結するわけでもありません。EUSは観察範囲が限られるため、転移の評価や手術適応の判断にはCTが必要です。「広く見てから深く掘る」──この組み合わせが膵臓検査の基本的な考え方です。
ご家族に膵臓がんの方がいる場合
膵臓がんのリスク因子の一つに家族歴があります。複数の近親者に膵臓がんの方がいる場合、定期的な画像検査が勧められることがあります。野々市市や白山市、能美市周辺にお住まいで「健診の腹部エコーだけでいいのか気になる」という方は、一度消化器内科でご相談ください。リスクの程度に応じて検査の種類や間隔をご提案します。
検査の組み合わせ方と当院の対応
一般的な膵臓精査の流れ
膵臓の精査は段階的に進みます。まず問診と血液検査、腹部エコーで初期評価を行い、異常が疑われれば造影CTへ進むのが標準的な順序です。黄疸がある場合や膵臓がんの疑いが強い場合は、最初から造影CTが選択されることもあります(ACR Appropriateness Criteria: Staging of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma)。CTで異常が見つかった場合、あるいはCTだけでは判断がつかない場合に、EUSが追加されます。
当院では腹部超音波検査とCT検査を院内で実施しています。造影CTの前には数時間の絶食(施設により4〜6時間が目安)をお願いしていますので、予約時にご案内します。EUSやEUS-FNAが必要と判断された場合には、大学病院やがんセンターなどEUSの体制が整った専門施設へ紹介状を作成します。
造影剤を使えない方の選択肢
造影剤アレルギーの既往がある方や、腎機能の値(eGFR)によって造影CTが難しい方には、MRI(MRCP)で膵管・胆管を評価し、必要に応じてEUSを組み合わせる方法があります。MRIは放射線被ばくがなく、造影剤なしでも膵管・胆管を描出できる利点があります。
参考文献
※本記事の主な参考資料
- Bipat S, et al. Ultrasonography, computed tomography and magnetic resonance imaging for diagnosis and determining resectability of pancreatic adenocarcinoma: a meta-analysis. J Comput Assist Tomogr. 2005;29(4):438-445.
- Canto MI, et al. Frequent detection of pancreatic lesions in asymptomatic high-risk individuals. Gastroenterology. 2012;142(4):796-804.
- Treadwell JR, et al. Imaging tests for the diagnosis and staging of pancreatic adenocarcinoma: a meta-analysis. Pancreas. 2016;45(6):789-795.
- 日本膵臓学会 編「膵癌診療ガイドライン 2022年版」金原出版
- 日本消化器内視鏡学会. EUS-FNA/FNBガイドライン. 消化器内視鏡. 2024;66(9):1739-1806.
よくある質問
- Q. CTとEUSは同じ日に受けられますか?
- A. CTは当院で実施できますが、EUSは専門施設で行う検査のため、通常は同日に両方を受けることはありません。CTの結果を踏まえてEUSが必要かどうかを判断し、必要な場合に専門施設を紹介します。
- Q. 膵嚢胞を指摘されました。CTとEUS、先にどちらを受けるべきですか?
- A. 一般的には、まずCTまたはMRI(MRCP)で嚢胞の大きさや形態を確認します。壁在結節が疑われる場合や性状の判断が難しい場合に、EUSで精密に評価するという流れが多いです。
- Q. EUSは痛い検査ですか?
- A. 鎮静剤を使うのが一般的で、検査中に強い痛みを感じる方は少数です。ただし、通常の胃カメラよりスコープがやや太い機種が多いため、鎮静から覚めたあとにのどの違和感が残ることがあります。施設によって鎮静の方針が異なりますので、事前に確認してください。
- Q. CTで異常なしなら膵臓がんの心配はないですか?
- A. 造影CTの膵臓がん検出感度は91%(Bipat 2005)と高い水準ですが、1 cm未満の病変や等吸収域の腫瘍は見つけにくいことがあります。腫瘍マーカー高値が続く場合や膵嚢胞の変化が疑われる場合には、EUSやMRIで補完することがあります。
- Q. 検査の費用はどれくらいですか?
- A. 保険適用・3割負担の場合、造影CT検査は約8,000〜10,000円程度(部位や加算内容で変動)、EUS検査は約5,000〜7,000円程度が目安です。EUS-FNA(組織採取)を行う場合はさらに加算されます。初診料や血液検査費用は別です。
- Q. 家族に膵臓がんの人がいます。定期的にEUSを受けた方がよいですか?
- A. 複数の近親者に膵臓がんの方がいる場合、EUSを含む定期的な画像検査が検討されることがあります。リスクの程度で推奨される検査や頻度は異なりますので、まず消化器内科でご相談ください。
- Q. 野々市中央院でEUSは受けられますか?
- A. 当院ではCT検査と腹部超音波検査を院内で行っています。EUS検査は専門施設への紹介が必要です。紹介状の作成から予約の調整までサポートしますので、まずはお気軽にご相談ください。
膵臓が気になったら、まずはCT検査からご相談ください
まずはお気軽にご相談ください






