ブログ

花粉症で腹痛や下痢?お腹の不調と花粉の意外な関係

local_offerブログ
local_offer内科

花粉症の時期にお腹が不調になるのはなぜ?腹痛・下痢と花粉の関係を専門医が解説

「毎年、スギ花粉が飛び始めるとくしゃみだけじゃなくお腹まで調子が悪い」。健診後に当院を受診されたご家族から、こうした声をいただくことがあります。花粉症は鼻や目の病気という印象が強いかもしれませんが、腸の粘膜にまで影響が及ぶことが近年の研究で少しずつわかってきました。この記事では、花粉シーズンのお腹の不調の背景と、消化器内科を受診するかどうかの判断材料をまとめています。

【動画】下痢・腹痛の原因を内視鏡医が解説

この記事のポイント

  • 花粉症は鼻や目だけでなく、腸の粘膜にもアレルギー性の炎症を引き起こす可能性がある
  • 果物を食べたあとに口がかゆくなる場合、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)が疑われる
  • 花粉シーズンに下痢・腹痛が悪化する方は、過敏性腸症候群(IBS)との重なりがあるかもしれない
  • 血便や体重減少、発熱がある場合は早めの受診を
  • 当院では鎮静剤を使った苦痛の少ない内視鏡検査で、お腹の不調の原因を調べられる

花粉症と消化器症状の関係——なぜ腸にまで影響するのか

花粉が腸の粘膜にアレルギー性炎症を起こす

花粉症は、花粉に対するIgE抗体が引き金となるアレルギー疾患です。2019年に行われた全国疫学調査(耳鼻咽喉科医とその家族が対象)では、スギ花粉症の有病率は38.8%と報告されました(松原篤ほか, 日耳鼻 2020)。鼻や目の粘膜にアレルギー反応が起きるのは広く知られていますが、腸の粘膜にも同じような免疫反応が生じるケースがあります。

シラカンバ花粉アレルギーの患者さん32人と健常者16人を比較した研究(Rentzos 2014)では、花粉が飛んでいる時期に十二指腸の粘膜を生検したところ、好酸球やIgE陽性の肥満細胞など炎症にかかわる細胞が増えていました。注目すべきは、こうした粘膜の変化が「お腹が痛い」「下痢をしている」といった自覚症状とは必ずしも連動していなかった点です。症状がなくても、腸の中では炎症が静かに進んでいる——そんな状態がありうるわけです。

花粉症とIBS(過敏性腸症候群)の重なり

アレルギー性鼻炎とIBSの関連を調べたメタ解析(Huang 2025、9研究を統合)では、アレルギー性鼻炎がある方のIBS合併リスクはオッズ比2.88、逆にIBSがある方のアレルギー性鼻炎合併リスクはオッズ比2.15と報告されています。因果関係の方向はまだはっきりしていませんが、双方向に関連している可能性を示す結果です。

草花粉に感作された下痢型IBSの患者さんを飛散期と非飛散期で比較した研究(Rossi 2025)でも、飛散期に腹痛や膨満感のスコアが悪化していました。「毎年春だけお腹がゆるくなる」と感じている方は、花粉とIBSの両方が絡んでいる可能性を頭に置いてもよいかもしれません。

果物を食べると口やのどがかゆい——PFAS(花粉-食物アレルギー症候群)のこと

花粉と果物のタンパク質が似ているために起こる反応

花粉に含まれるタンパク質(PR-10やプロフィリンなど)と、一部の果物・野菜のタンパク質は構造が似ています。花粉にIgE抗体をつくっている方が、これらの食物を生で食べると、体が「花粉と同じ敵だ」と誤認して症状を起こす——これがPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)です。口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれます。

シラカンバ花粉の飛散がほとんどない地域(福井県)の外来受診者を対象にした調査(Osawa 2020)では、OASの有病率は全体で10.8%、花粉症患者に限ると16.8%に認められました。原因となった食物としてはメロン、パイナップル、キウイ、モモ、リンゴが多かったと報告されています。また、東京の17歳を対象にした調査(Kiguchi 2025)では、花粉アレルギーを持つ方のうち約20.6%にPFASが確認されています。

口だけでなくお腹の症状が出ることもある

PFASの症状は口やのどのかゆみ・腫れが中心ですが、悪心や腹痛、下痢を伴うこともあります(頻度は高くないものの、臨床上は見落とせません)。PR-10やプロフィリンといった原因タンパク質は熱に弱いため、加熱した食品であれば症状が出にくいケースが多いです。「生のリンゴを食べると口がイガイガする」という方が、焼きリンゴやジャムなら平気——そうした違いはこの性質で説明できます。

「ただの腹痛」で片づけないために——受診を考える目安

こんな症状がある場合は消化器内科へ

花粉シーズンのお腹の不調が、すべて花粉のせいとは限りません。以下の症状がある場合は、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)や好酸球性消化管疾患といった別の病気が隠れている可能性を考えて、受診をおすすめします。

注意したい症状 疑われる背景
血便が出た 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)など
半年以内に体重が減っている 好酸球性消化管疾患、悪性腫瘍などの可能性
発熱をともなう腹痛を繰り返す 感染性腸炎、炎症性腸疾患など
食べ物がつかえる感じがある 好酸球性食道炎(EoE)の可能性
腹痛・下痢が3か月以上続く IBS、好酸球性消化管疾患など、精査が望ましい

一方、呼吸困難や意識障害をともなう場合はアナフィラキシーの恐れがあります。ためらわず救急対応を受けてください。

内視鏡検査で「見えない炎症」を確かめる

好酸球性食道炎(EoE)は内視鏡の見た目だけでは判断しにくく、生検で食道粘膜に好酸球が15個/HPF以上集まっていることを確認して診断します(国際合意基準)。好酸球性胃腸炎(EGE)も同様に、生検が鍵になります。お腹の不調が長く続くとき、「カメラで一度調べてもらう」という判断は、こうした見えにくい病気を拾い上げるうえで意味があります。

当院では鎮静剤を使い、ウトウトした状態で胃カメラ・大腸カメラを受けていただけます。「内視鏡は痛そう」と心配な方も、ご家族と一緒に相談に来ていただければ検査の流れを丁寧にご説明します。

花粉シーズンに家族で気をつけたいお腹のケア

花粉症の薬と便通の変化に気づいたら

花粉症で使われる第1世代の抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンなど古いタイプ)は、抗コリン作用によって便秘を引き起こしやすい性質があります。「花粉症の薬を飲み始めてからお通じが変わった」と感じたら、主治医に伝えてください。第2世代の抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイドに切り替えることで、消化器への影響が軽くなる場合があります。

食事と生活習慣で腸への負担を減らす

花粉シーズンは腸の粘膜も刺激を受けやすい時期です。香辛料やアルコールを控えめにし、食物繊維や発酵食品を意識して摂ることで、腸への負担を和らげられます。PFASが疑われる方は、原因と思われる果物・野菜を「生のまま食べない」のが基本対策です。加熱調理や加工品(缶詰、ジャムなど)なら問題なく食べられることが多いので、栄養を極端に制限する必要はありません。

なお、日本消化器病学会のIBS診療ガイドライン(2020)では、肥満細胞安定薬やエバスチンなど一部の抗アレルギー薬がIBS症状の緩和に有用である可能性に触れています。ただし、日本国内でIBSに対する保険適用がある抗アレルギー薬はなく、適応外使用にあたるため、処方にあたっては医師との相談が欠かせません。

参考文献

※本記事テーマに関連する主な参考資料

  • 松原篤ほか. 鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年, 2008年との比較): 速報. 日耳鼻 2020; 123(6): 485-490.(J-STAGE
  • Rentzos G, et al. Intestinal allergic inflammation in birch pollen allergic patients in relation to pollen season, IgE sensitivity profile, and gastrointestinal symptoms. Clin Transl Allergy. 2014; 4: 19.(PMC
  • Huang Y, et al. Is there a bidirectional relationship between allergic rhinitis and irritable bowel syndrome? A systematic review and meta-analysis. 2025.(PMC
  • 日本消化器病学会. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020 — 過敏性腸症候群(IBS).(PDF
  • 食物アレルギーの診療の手引き2023.(PDF

よくある質問

Q. 花粉が飛ぶ時期に下痢が増えるのは偶然ですか?
A. 偶然とは断定できません。花粉に感作された方の腸粘膜で、飛散期にアレルギー性の炎症が増悪するという研究報告があります(Rentzos 2014)。また、下痢型IBSを持つ花粉症の方で、飛散期に症状スコアが悪化したデータもあります(Rossi 2025)。続くようであれば消化器内科への相談をおすすめします。
Q. リンゴやモモで口がかゆくなりますが、お腹にも症状は出ますか?
A. PFAS(花粉-食物アレルギー症候群)の可能性があります。口腔・咽頭の症状が主体ですが、腹痛や下痢を伴うこともあります。原因のタンパク質は熱に弱いものが多く、加熱調理で症状が出にくくなるケースがほとんどです。
Q. 花粉症の薬を飲み始めたら便秘気味になりました。関連はありますか?
A. 第1世代の抗ヒスタミン薬は抗コリン作用があり、便秘を起こしやすいことが知られています。第2世代の薬への切り替えで改善する場合がありますので、主治医にご相談ください。
Q. 花粉症があっても胃カメラや大腸カメラは問題なく受けられますか?
A. 受けられます。鼻づまりがひどい時期は経鼻内視鏡(鼻から入れるタイプ)が難しい場合がありますが、経口内視鏡に切り替えて対応します。当院では鎮静剤を使用するため、楽な状態で検査を受けていただけます。
Q. 好酸球性消化管疾患(EGIDs)と花粉症はつながりがありますか?
A. EGIDsはアレルギー体質との関連が指摘されており、花粉症や喘息を併存する方が多い傾向があります。食べ物がつかえる、体重が減っているなどの症状がある場合、内視鏡と生検による診断が必要です。
Q. 子どもでも花粉症によるお腹の症状は起こりますか?
A. PFASは10代でも報告されています。東京の17歳集団の調査(Kiguchi 2025)では、花粉アレルギーを持つ方の約20.6%にPFASが確認されました。お子さんが果物を食べた後にお腹の不調を訴える場合は、医療機関にご相談ください。
Q. 野々市中央院では花粉シーズンのお腹の不調で受診できますか?
A. はい。当院は消化器内科専門のクリニックで、腹痛・下痢・便秘などに幅広く対応しています。土曜日も内視鏡検査を行っていますので、ご家族の都合に合わせて受診いただけます。
 

この記事の監修医

中村文保

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会理事長)

日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医

最終更新日:[2026年2月20日]

胃と腸のことなら金沢消化器内科・内視鏡クリニック

花粉シーズンのお腹の不調、おひとりで抱え込まないでください

まずはお気軽にご相談ください

当法人は金沢駅前に分院を開設いたしました。野々市院の予約が埋まっている場合は金沢院の予約もご確認してください。
TOPへ