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膵臓がんはCTで見つかる?造影CTの役割と検査の流れ

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膵臓がんをCTで見つけるには?造影ダイナミックCTの役割と検査の流れ

著者:中村 文保

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会 理事長)

日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医

公式サイト:胃と腸のことなら金沢消化器内科・内視鏡クリニック

「膵臓がんは見つかりにくい」──そう耳にして不安を感じていませんか。膵臓は胃の裏側、背骨の前という体の深い位置にある長さ約12〜15 cmの細長い臓器で、周囲を他の臓器に囲まれているため、初期の段階では症状が出にくく「沈黙の臓器」と呼ばれます。実際、膵臓がんは発見時すでに進行しているケースが少なくありません。しかし、造影ダイナミックCTをはじめとする画像検査の進歩により、従来より早い段階での発見が可能になってきています。この記事では、膵臓がんを疑うきっかけとなる症状から、造影CTを中心とした検査の流れ、検査ごとの特徴と限界までを、消化器専門医の立場から解説します。

この記事のポイント

  • 膵臓がんは初期症状が乏しく、画像検査による発見が重要です
  • 造影ダイナミックCTは膵臓がんが疑われる際の中心的な画像診断法であり、感度約91%(95%CI 86–94%)、特異度約85%(95%CI 76–91%)と報告されています(膵癌診療ガイドライン2022)
  • 膵臓がんは造影CTで低吸収域(周囲より染まりにくい領域)として描出されることが多い一方、ごく小さな病変は見逃される可能性もあります
  • 黄疸・持続する背部痛・原因不明の体重減少・50歳以降の新規糖尿病は受診の目安です
  • CT撮影自体は数分で完了し、準備を含めた滞在時間は20〜60分程度です

なぜ膵臓がんは見つかりにくいのか

膵臓は胃の後方、背骨の前面に位置する長さ約12〜15 cmの臓器です。右側を膵頭部、中央を膵体部、左側を膵尾部と呼びます。十二指腸に隣接する膵頭部には胆管や膵管が合流しており、解剖学的に複雑な構造をしています。膵臓は周囲を胃・十二指腸・大腸・脾臓・腎臓などに囲まれているため、腹部超音波検査ではガスや脂肪の影響を受けやすく、体表からの観察だけでは小さな病変を見つけにくいという特徴があります。

膵臓がん(膵管癌)は膵臓の中を走る膵管の上皮細胞から発生することが多く、初期には腫瘍がごく小さいためCTやMRIでも描出されにくいことがあります。国立がん研究センターのデータによると、膵臓がんの5年相対生存率は他の消化器がんと比較して低い水準にとどまっています。こうした背景があるからこそ、わずかな体の変化を手がかりに早期に検査を受けることが重要です。

膵臓がんを疑うきっかけとなる症状

膵臓がんに特有の初期症状はありませんが、以下のような症状やきっかけで受診される方が多く見られます。これらの症状は膵臓がん以外の疾患(胃炎・胆石・慢性膵炎・機能性ディスペプシアなど)でも出現するため、症状だけで判断することはできません。ただし、以下に該当する場合は消化器内科への受診をご検討ください。

黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)

膵頭部に腫瘍ができると、隣接する胆管が圧迫されて胆汁の流れが滞り、黄疸が出ることがあります。尿の色が濃くなる(紅茶のような色)、便が白っぽくなるといった変化を伴うことがあり、黄疸が見られる場合はできるだけ早い受診が勧められます。黄疸や閉塞性の病態が疑われる場合は、初期段階から造影CTやMRIが優先されることがあります(ACR Appropriateness Criteria)。

背部痛・みぞおちの持続する痛み

胃カメラで異常がないにもかかわらず、みぞおちから背中にかけての鈍い痛みが続く場合、膵臓や胆道系の評価が検討されることがあります。食後に悪化する場合や、体を前かがみにすると楽になる場合は膵臓由来の可能性が考慮されます。

原因不明の体重減少

ダイエットをしていないのに数か月で体重が減り続ける場合は、消化器系を含めた全身の精査が検討されます。膵臓がんでは消化吸収障害や代謝の亢進により体重が減少することがあります。

50歳以降の新規糖尿病・血糖コントロールの急激な悪化

膵臓はインスリンを分泌する臓器です。肥満や強い家族歴がないにもかかわらず50歳以降に糖尿病を新たに発症した場合、あるいはこれまで安定していた血糖値が急に悪化した場合は、膵臓の評価が考慮されることがあります。近年、新規発症糖尿病と膵臓がんの関連が注目されています。

健診での膵嚢胞・膵管拡張の指摘

人間ドックや腹部超音波検査で膵嚢胞(液体が溜まった袋状のもの)や膵管の拡張を指摘されることがあります。膵嚢胞の多くは良性ですが、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)の一部にはがん化のリスクがあるため、嚢胞の大きさや形態に応じた定期的な画像検査が推奨されます。

膵臓がんが疑われるときの検査の流れ

膵臓の精査は通常、段階的に進められます。ただし、黄疸がある場合や膵臓がんの疑いが強い場合は、初期段階から造影CTやMRIが行われることもあります。

Step 1:問診・診察

症状の詳細(いつから・どこが・どのように痛むか)、体重変化、既往歴(糖尿病・慢性膵炎・胆石など)、家族歴(膵臓がん・他のがん)、喫煙・飲酒歴などを確認します。これらの情報がその後の検査計画の土台になります。

Step 2:血液検査

腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)、肝機能・胆道系酵素(AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン)、膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)、血糖値・HbA1cなどを測定します。CA19-9は膵臓がんで上昇することがありますが、胆管炎・膵炎・胆石などの良性疾患でも上昇するため、CA19-9単独での診断はできません。また、Lewis式血液型陰性の方(日本人の約5〜10%)ではCA19-9が産生されず、膵臓がんがあっても値が上昇しないことがあります。あくまで参考値として画像検査と組み合わせて評価します。

Step 3:腹部超音波検査

体への負担がなく、外来で手軽に行える検査です。膵臓の腫大・腫瘤、膵管や胆管の拡張、胆嚢結石の有無などを評価します。ただし、腸管ガスや体型の影響で膵臓が十分に観察できないことがあり、感度は約76%(95%CI 69–82%)と報告されています(膵癌診療ガイドライン2022)。

Step 4:造影ダイナミックCT

膵臓がんが疑われる際の中心的な画像診断法です。造影剤を静脈から注入しながら、動脈相・膵実質相・門脈相など複数のタイミングで撮影することで、膵臓の血流動態を詳細に評価します。膵臓がん(膵管癌)は周囲の正常膵組織に比べて造影効果が乏しいため、「低吸収域」として描出されます。CT撮影自体は数分で完了し、受付から会計までの滞在時間は施設や混雑状況によりますが、20〜60分程度が目安です。造影CTの感度は約91%(95%CI 86–94%)、特異度は約85%(95%CI 76–91%)と報告されており(膵癌診療ガイドライン2022)、周囲血管への浸潤や肝転移、リンパ節転移の評価、手術適応の判断にも用いられます。

Step 5:MRI/MRCP・EUS(必要に応じて)

CTで異常が疑われた場合や、CTだけでは評価が難しい場合に追加されます。MRI/MRCPは放射線を使わず、造影剤なしで膵管・胆管を描出できる検査です。EUS(超音波内視鏡)は胃や十二指腸から膵臓に超音波を当てるため、体表からの超音波検査よりも高い分解能が得られ、小さな病変の検出や組織採取(EUS-FNA/FNB)にも用いられます。EUSは主に専門医療機関で実施されます。

造影ダイナミックCTの特徴と限界

造影CTの強み

造影ダイナミックCTは、膵臓がんが疑われる場合の中心的な画像診断法として、膵癌診療ガイドライン2022においても強く推奨されています。膵臓全体を客観的に描出でき、腸管ガスや体型の影響を受けにくい点が大きな利点です。複数のタイミングで撮影することにより、腫瘍と正常膵組織のコントラストを最大化し、腫瘍の局在・大きさ・周囲血管との関係・遠隔転移の有無を一度の検査で評価できます。Treadwell JRらによるメタアナリシスでは、CTとMRIは膵臓がんの診断および血管浸潤評価において同等の感度・特異度を持つことが示されています(Pancreas 2016; 45(6):789-795)。

造影CTの限界

一方、造影CTにも限界があります。径1 cm未満のごく小さな腫瘍や、正常膵組織との濃度差が小さい「等吸収域」の腫瘍は検出が難しいことがあります。また、造影剤にはアレルギー反応のリスクがあり(重篤な副作用は数万人に1人程度)、腎機能が低下している方(eGFRの値で判断)では造影剤の使用に注意が必要です。放射線被ばくを伴う検査でもあるため、検査の必要性と利益を考慮して実施されます。

費用の目安

造影CT検査は保険適用で行われるのが一般的です。3割負担の場合、造影CT単体で約8,000〜17,000円程度が目安です(初診料・血液検査・他の画像検査を含む場合は別途加算されます)。

膵臓の画像検査比較

検査 利点 限界
腹部超音波 被ばくなし、繰り返し可能、コストが低い、外来で手軽に実施可能 腸管ガス・体型の影響で膵臓が見えにくいことがある、検査者の技量に左右される面がある(感度約76%)
造影ダイナミックCT 膵臓全体を客観的に描出、周囲血管との関係を評価可能、短時間で広範囲を撮影(感度約91%、特異度約85%) 放射線被ばくあり、造影剤のアレルギー・腎機能への配慮が必要、非常に小さな病変は検出困難な場合がある
MRI/MRCP 放射線を使わない、造影剤なしで膵管・胆管を描出可能、膵嚢胞の評価に有用(感度約84%) 撮影に時間がかかる(20〜40分程度)、閉所恐怖症の方には負担が大きい場合がある、体内金属がある場合は制限あり
EUS(超音波内視鏡) 高い分解能で小さな病変の検出が可能、組織採取(EUS-FNA/FNB)が可能 侵襲的な検査(内視鏡を挿入する)、専門施設での実施が必要、麻酔が必要な場合がある

専門医療機関への紹介が必要なケース

CTなどの初期検査で明らかな異常が認められた場合、腫瘍マーカーが持続的に高値を示す場合、EUSやERCPによる精査が必要と判断された場合、あるいは病理診断(組織検査)が必要な場合は、大学病院やがんセンターなどの専門医療機関へ紹介状を作成いたします。膵臓がんの治療は消化器内科・外科・放射線科・腫瘍内科・病理診断科など複数の専門家が連携するチーム医療(多職種連携:MDT)で行われるのが一般的です。当院では初期精査を行い、必要に応じて速やかに適切な医療機関をご紹介いたします。

よくあるご質問(FAQ)

CT検査にかかる時間はどれくらいですか?

CT撮影自体は数分で完了します。受付・問診・着替え・造影剤の準備・撮影後の安静を含めた滞在時間は、施設や混雑状況にもよりますが20〜60分程度が目安です。

造影CTで膵臓がんはどのくらいの精度で見つかりますか?

膵癌診療ガイドライン2022によると、造影ダイナミックCTの膵臓がんに対する感度は約91%(95%CI 86–94%)、特異度は約85%(95%CI 76–91%)と報告されています。高い検出能を持つ検査ですが、径1 cm未満のごく小さな病変や等吸収域の腫瘍は見逃される可能性があるため、疑いが残る場合にはMRIやEUSで補完します。

造影剤を使わないCTでは見つかりませんか?

単純CT(造影剤なし)でも大きな腫瘤は確認できることがありますが、正常膵組織と腫瘍のコントラストが得られないため、小さな病変や血管浸潤の評価は困難です。膵臓がんの精査には造影ダイナミックCTが標準とされています。

CA19-9が高いと膵臓がんですか?

CA19-9は膵臓がんで上昇することがある腫瘍マーカーですが、胆管炎・膵炎・胆石・卵巣嚢腫などの良性疾患でも上昇することがあります。また、Lewis式血液型陰性の方ではCA19-9が産生されず、膵臓がんがあっても値が上昇しません。CA19-9単独での診断はできず、画像検査と組み合わせて総合的に評価します。

造影剤のアレルギーが心配です。

造影剤の重篤な副作用(アナフィラキシーなど)の発生率は数万人に1人程度とされています。過去に造影剤でアレルギー反応があった方、喘息の既往がある方、腎機能が低下している方(eGFRの値で判断)は事前にお知らせください。代替検査としてMRIの使用を検討する場合があります。

膵嚢胞があると言われました。がんになりますか?

膵嚢胞の多くは良性ですが、一部(特にIPMN:膵管内乳頭粘液性腫瘍)にはがん化のリスクがあります。嚢胞の種類・サイズ・壁在結節の有無などによって対応が異なるため、専門医の指示に従い、適切な間隔での画像検査をお受けください。

膵臓がんが心配なとき、何科を受診すればよいですか?

消化器内科の受診が一般的です。症状や検査結果に応じて、より専門的な検査・治療が必要な場合は大学病院やがんセンターなどへご紹介いたします。まずはお近くの消化器内科でご相談ください。

まとめ:不安なときは早めにご相談ください

膵臓がんは「沈黙の臓器」と呼ばれる膵臓に発生するため、早期発見が難しいがんの一つとされています。しかし、造影ダイナミックCTは感度約91%の検出能を持ち、膵臓がんが疑われる際の中心的な画像診断法として位置づけられています。「気になる症状があるけれど、どこに相談したらよいか分からない」という方は、まず消化器内科を受診してみてください。黄疸・持続する背部痛・原因不明の体重減少・50歳以降の新規糖尿病などがある場合は、早めの受診が勧められます。異常がなければ安心できますし、万が一何か見つかった場合でも、早い段階であるほど治療の選択肢が広がります。

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参考文献

1. 日本膵臓学会.膵癌診療ガイドライン2022年版.https://www.suizou.org/pdf/pancreatic_cancer_cpg-2022.pdf

2. Treadwell JR, et al. Imaging Tests for the Diagnosis and Staging of Pancreatic Adenocarcinoma: A Meta-Analysis. Pancreas. 2016;45(6):789-795. doi:10.1097/MPA.0000000000000524. PubMed

3. 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん(膵がん)」 https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/index.html

4. 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 検査」 https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/diagnosis.html

5. ACR Appropriateness Criteria(米国放射線医学会 適切性基準)

6. RadiologyInfo.org – MRI of the Body

7. NCI PDQ – Pancreatic Cancer Treatment(米国国立がん研究所)

8. 金沢消化器内科・内視鏡クリニック「膵がんの初期症状とは?受診目安・CT検査の流れを解説」 https://naishikyo.or.jp/ct/pancreatic-cancer-when-to-check/

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